では物語ってみよう(2.プロットとキャラ設定)
前回プロットに関するご質問を募集しました。ご協力くださった皆様、ありがとうございます。
さて、回答を拝読していて気がついたのですが、みなさん、プロットを作るときにキャラクター設定についても、気にしていらっしゃる場合が多い様子。それもそのはず。物語のあらすじとキャラクター、この二つは切っても切れない関係です。とくにキャラクター小説と呼ばれる分野では、もはや切りようがない。あらすじが先か、キャラが先か。にわとりとたまご的問題です、コケコッコ。
というわけで、ご自分の頭の中を覗いてみてください。あなたの頭の中にボヤーンと浮かんでいるその物語のタマゴは、次のうちどのタイプでしょう。
3からがプロットのテクニカルな問題になってくるわけですが、その前に今日はキャラ設定の話を先にさせてください。そのほうがスムースにいきそうなので。
で、1と2です。
まず1。キャラ先行型のタイプの人は、そのキャラの特徴について、ばんばん書き出してみてください。
内面的な特徴から書いても、外見的な特徴から書いてもいいです。外見的特徴の場合、絵がかける人は絵にするのが一番いいです。小説を書きたいという人の多くは、子供の頃マンガ家なりたかったはず(自分調べ)。誰が見るわけでもないので、勇気を出して描いてみましょう。マンガの方の場合は、もちろん最初から絵で描いてください。このようにして書き出していくと、そのキャラ像がくっきりしてくると思います。ただし、書き方に少しコツがあります。例をあげましょう。
はい、これダメな例~。
クール系の高校生キャラらしいこと以外なにもわかりません。クールなキャラはだいたい無口だし、無口なんだからひとりでいるのが好きだし、ひとりでいるのが好きだから友達は少ないんです。当たり前です。蠍座の AB型にいたっては、もはや占いです。いや、別にあってもいいけど。あとでなにかに使えるかもしれないし。
では、こうしてみたらどうでしょう。
このキャラがいいかどうかは別として、ちょっと具体的になってきましたよね。こんな調子でもっと書き出していって、キャラの肉付けをしていきます。先に書いたキャラ設定より面白くなりそうなものがあったら、どんどん変更していきます。
そのキャラがどんなふうに喋るか、口癖は何なのか、好きな食べものも想像してみましょう。一人称が「僕」なのか「俺」なのか「拙者」なのか、それだけでも全然違ってきます。また人間というのは必ず二面性を持っているものです。クールな人はクールじゃない部分も持っているものです。その二面性(あるいは多面性)を意識しながらキャラ作りをしてみると、人物に奥行きが出てきます。
考えてるうちに当初の方向からずれていっても構いません。「あれ、こういうキャラのつもりじゃなかったのに……」となった時は、キャラが立った瞬間かもしれません。「なんだかこいつは面白そうだ……」という本能の赴くままに書いていきます。
もちろん「こんなキャラが書きたいわけじゃなかった…」というズレ方をした場合は、残念ながら失敗です。お茶を飲んだり、散歩をしたり、猫を撫でたり、猫を撫でたり(二回目)して気分転換をはかり、もう一度挑戦してみましょう。あまりにもキャラに具体性が出ない場合は「本当に私はこういうキャラが描きたいの?」と問いかけてみることも必要です。ぜんぶまっさらにして、やり直したっていいんです。だってまだ書き始めてもいないんだから、どうとでもなります。自由に、のびのびした気持ちでキャラを作ってみてください。♪なーにーもー こわくーなーいー(両腕を広げて空を仰ぎ見る)。
キャラ設定していると、ままあるケースとして、どこかで見たようなキャラが出てきてしまうことがあります。小柄だけど超強くて目つきが悪く、神経質で掃除好き、ティーカップの持ち方が独特で、自分にも周囲にも厳しいけれど、誰かに忠誠を誓うとものすごく尽くす……なんてキャラが出てきてしまったら要注意です。好きなキャラの亜流を書いてはいけない、ということではありません。これは持論だが……人は完全にオリジナルなものなど想像できない、と思う……。というわけで、私たちの頭の中から生まれてくるものは、すべてなにかの影響を受けているのです。ベースはあってもいいのです。ただし「このキャラ、●●に似ちゃってる……」と思ったら、当然ですが必ずどこか変えましょう。そしてその変えた部分を、そのキャラのもっとも大きな特徴(魅力)にしてください。それを意識してそのままキャラ設定をしていると、ちゃんと別人になります。兵長に似てるけど(あっ)決して兵長ではない、独自のキャラクターになります。
キャラクター先行型の場合は、このようにしてある程度キャラクターの肉づけができて、キャラクターが自分の中で生き生き動くようになってから、プロットを考えるのが良いかと思います。そしてそのキャラクターが一番生きる物語設定にしてください。自分のキャラクターは役者さんです。その役者さんにふさわしい脚本をあげてください。
拙著を例にしますと『nez』という作品がキャラ先行型です。『極端に嗅覚にすぐれている男』というキャラが最初にできて、それを生かすために『相性診断会社、バディもの。鼻はいいがだらしない男と、頭はいいが神経質な男の組み合わせ』……というプロットができました。BLなので彼らは恋愛関係になります。色恋においても、嗅覚というのはエロティックな要素として、とてもよい素材です。うふふ。宣伝してもいいですか。
続きまして、2.ストーリー先行型の場合。
こちらは「ストーリーにふさわしいキャラクターを設定する」という作業になります。
ストーリー先行型とはいえ、実のところザクッとしたキャラは頭の中にあるのではないでしょうか。シリアスな話ならシリアスなキャラが、コメディならぱ明るい感じのキャラが……というくらいのイメージはあると思います。ストーリーを押し進めていくのはキャラクターなので、「この次のシーンはどういう展開になるか」は、実はキャラがいないと決めようがないのです。
つまり、このタイプの場合、ストーリーを詳細な決めていきながら、キャラクターも具体的に設定していく……という作業になります。同時進行ですが、難しいことはありません。プロットを詰めていくうちに、自然と必要なキャラクターが出てくるはずです。
ちなみに「ストーリーにふさわしいキャラ」というのは、言い換えると「ストーリーを盛り上げるキャラ」ということです。うっかりやりやすいのは「このストーリーなら、こんなキャラが使いやすそう(便利そう)……」 という勘違い。使いやすくてもいいのですが、それより盛り上がることが大切です。
「このストーリーに、こんなキャラ使ったら、波瀾万丈になって盛り上がるよね!!」
こっちです、こっち。
盛り上げるためにも、キャラには必ず欠点を持たせるとよいと思います。実際、欠点のない人間はいません。これは持論だが(もういいって)……物語はだいたい欠点や欠如から生まれます。その際、欠点は具体的に考えておきましょう。「人見知り」ならばどの程度人見知りなのか。近所の人に挨拶できないのか。宅配便の人でも怖いのか。人見知りすぎて自分が人見知りなのを知られるのが怖くて、思わず社交的に振る舞ってしまったあげく、いつでも飲み会の幹事をまかされ、トイレでゲロってる誰かを介抱しているのか……という具合です。具体性がキャラを厚くしていきます。
ちなみに私の場合、話とキャラクターは同時発生。つまりタイプでいうとになり3ます。さきほど『nez』を紹介しましたが、あれは希有なケースでした。キャラから出てくるって、あんまりないのです。
ということで、次はやっと具体的なプロットの組み立て方法に入りたいと思います。プロット実践編1はこちら!
私以外の作家さん(マンガ家さん含む)の話も聞きたいなあ~。コメントはいつでもお気軽にどうぞ。♪なーにーもー こわくーなーいー(しつこい。笑)