では物語ってみよう(3.プロット実践編その1)
さー、いよいよ実践編。プロット作ってみまっしょい!
上の写真は私のプロット作りに欠かせない道具たち。詳細はのちほど。
と、意気込んだところで、まず初めにお知らせしておきたいのですが、当然のことながら、プロットの作り方というのは100人いたら100通りあります。これから私のやり方を説明しますが、この通りにやる必要はありませんし、この通りにやればうまく物語が作れるということでもないです。当たり前だけど。したがって「へー」と斜めに読んで、まったく無視してくださってもオーライです。すでに自分のやり方があって、うまくいってるなら、むしろそれを私に教えて!!(笑)
ですが、どうしたらいいのかまったくわからない方、あるいは今までの自分のやり方ではいまいちうまくいっていない方にとっては、ある程度参考になるかもしれない……ということで楽屋裏を明かします。もしよければ参考にしていただき、自分なりの工夫を付け加えたりもして、オリジナルな形を目指して下さい。そしてすごくうまくいったら私に教え(以下略)。
更にいいますと、私も毎回同じプロットの作り方をしているわけではありません。どういう作品を書くかによって、プロットの作り方・プロットにかかる時間・プロットの分量そのもの……これらは変化します。いただいたご質問の中に「プロットはどこまで詳細に書けばいいのでしょうか」というものがありましたが、「それは作品によります」というのが答えです。ミステリー仕立ての物語であれば、事件の部分の詳細なプロットを立てたほうがいいですし、恋愛をメインとした物語であれば、それほど細かいプロットは必要なく、むしろ心理描写に気を配るべきですし。
また作家本人の性格や、書くスタイルによっても変わってきます。私も他の作家さんのプロットはほとんど見たことがないので(一種の企業秘密みたいなものだろうし、あと、なんか恥ずかしいので、みんなあまり見せない……)自分がどういうタイプなのかカテゴリずするのは難しいのですが……。比較的、きっちりプロットを作る方なんだと思います。15年ほどの間にいろいろな方法を試してきたわけですが、ある程度きっちりプロット作った方が、のちのちラクだなと気がついたわけです。逆にプロットのところできっちり決めてしまうと後で書きにくいという人もいます。本当に人それぞれなのです。
ここでちょっと復習。そもそもプロットとはなんぞや。答え。小説なり漫画なりの創作物の、あらすじ・概要をプロットといいます。こんなキャラクターが出てきて、こんな事件が起こって、こんな結末を迎えます……ということが書いてあるのがプロットです。
プロットを必要としないタイプの描き手さんもいると思います。つまり頭の中にあらすじがちゃんとできているので、わざわざアウトプットする必要はない。あるいは『プロットのできていない状態そのものが好きで、自分でも先がわからないものを書きたい』。そういうタイプも多くはないけれど、いるでしょう。アマチュアで書く場合はそれで構わないと思います。自分がプロットを必要としていないなら、わざわざ作ることはないです。ただし商業作品の場合はそういうわけにはいきません。プロットは編集さんに読んでもらわなければならないからです。小説家にしろ漫画家にしろ、自分の好きなものをそのままかけるわけではなく、出版社に対し、「こんな話を書きたいんですが、よろしいでしょうか」というコンセンサスを取らなければなりません。だって印刷代も紙代も人件費も出版社が出すんですから……。つまりプロットには、
という、ふたつの顔があります。漫画家さんの場合はプロットを飛ばして、ネーム(簡易な絵とセリフでコマ割りしたもの)を編集さんに提出するということもあるようですね。マンガ家さんのプロットとネームについては、いつか別途で伺っていきたいな……。今回は、まず小説の話でいきます。
1)自分の覚え書き・設計図的な側面のほうは、感覚的にわかると思います。設計図のないままに家を建てちゃう天才肌の人は別として、ある程度の長さの作品を書こうと思ったら、やはり設計図はあったほうがいい。小説の分量はこれも様々ですが、文庫本などに多い総ページ数256、いわゆる「にごろ」の本だと、本文は240ページくらいでしょうか。文字数や行数の設定、また挿し絵のあるなしなどで変わってきますが、400字詰の原稿用紙で換算すると大体350枚ぐらいです。この分量の物語を書くための設計図なわけです。私は自分の記憶力をまったくアテにしていないので、割と細かく作るわけです。
自分のためだけの設計図、覚え書きであればとくに制限はありません。好き勝手に書いていいです。ところがこれを人に見せるとなるとそれなりの工夫が必要になってきます。つまり、2)編集さんに提出する企画書的な側面を意識しなければならない。自分の担当編集者が、読んでわかりやすいプロットにしなければなりません。
理想的なのは、担当編集者が企画会議に出た時にプレゼンしやすいもの。「私の担当作家である●●先生の次の新作のプロットはこれです。どうです、すごく面白そうでしょう。ぜひ出版しましょう!」と、編集長や同僚たちにアピールしやすいものだととてもよい。……などと思ってしまうのは、たぶん私が過去に取次会社、出版社での勤務経験があり、本を商品として扱う、ある意味しょっぱい現場をかなり見てきていているせいかもしれないです……。(ちなみに編集者ではなく、営業系の補佐業務でした。POPなんかもたくさん作ってたよ~)
まあ、プレゼン資料として使えるプロットを目指せ、というのは「それは作家の仕事じゃないでしょ……」という気もするわけで、だとしても自分の担当編集者に伝わるプロットだというのは最低条件です。「なんだかわかりにくいプロット作っちゃったけど、あとは電話で口頭説明すればいいや」と思ってしまうかもしれませんが、文章できちんと説明できなかったものが、口頭で説明できるかどうかあやしいものです。電話口で「つまり……だから……なんとなく、そんな感じで書きたいかなって……」みたいな、さっぱり要領を得ない説明をし、あとで自己嫌悪にならないためにも、わかりやすいプロットを目指しましょう。
何だか前置きが長くて自分でもイヤになってきたんですけれども(笑)、こうやってだらだら前置きを書いてしまうほど、プロットというのは私にとって大切なものだということです。
さあ、ほんとに行こう。実践に行こう。レッツゴー。バモス。カジャ!
プロット作ってみよう榎田ユウリの場合編。
私の場合、プロット提出までの流れはこんな感じです。
そうなのです。私はプロットを2種類作ります。
自分のためのプロットと、編集さんに見せるためのプロットです。プロットの下書きと、清書といってもいいかもしれません。 視覚的にまとめたプロットと、文章でまとめたプロットといってもいいのかな……。それこそ文章で説明してもわかりにくいでしょうから、ちょっと下に貼ってみます。文字を読み取る必要はまだないので、パッと見た違いを感じてみてください。
角川文庫『カブキブ!2』の現物プロットです。なんとなく、違いがわかっていただけますでしょうか。
左の自分用は、方眼紙にフセンを使って、手書きで作っています。A3なので結構大きい用紙です。文庫本を置いてみたので、比較してみるとおわかりかと思います。
右の提出用は、パソコンのワープロソフト(ちなみに私は一太郎愛用者)です。右のは2ページ目で、1ページめにはキャラ設定が入っていますが、こちらは後日またお見せします。
フー。
なんだか長くなってきたので、いったん区切らせてください。
続きはこちら、プロット実践編その2です。
次回は自分用プロットについて、もう少し詳しく書きたいと思います。あらかじめご質問があったらコメント欄にお気軽にどうぞ。ご質問じゃなくてもお気軽にどうぞ~。