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【紹介#8】『喫茶 花』で、波さんの作品を語る

あなたと共に成長したい。

元高校教師(国語)の
たこせん枝瀬です🐙

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
教育は
自分が変わらないと
他人を変えることなんてできない。
       =「主体変容」

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がモットー。

【たこせん枝瀬の発信の足】

タコマンダラ

【今回は主に「note」編です】
共同運営マガジン『みんなのうた』
メンバー募集してます ◟( •◎•๑ )◞

今回は、
マガジンメンバーの個別紹介記事。
(不定期です)

枝瀬目線の
主観フィルターを通してですが、
この機会に素敵なメンバーの記事が
読まれれば嬉しいです。


『喫茶 花』にて

カランコロン♪

「喫茶 花」の
扉を開くなり、
男は席について、

ええと、タコのカルパッチョある?

と聞いてきた。

店員は申し訳なさそうに

すみません、当店のメニューにはございません

と答えると、
男は、なにごともなかったかのように

ああ、そう。
じゃあ、オレンジママレード。
砂糖多めで。

とオーダーを変えた。

注文をすますと、
男はすぐにノートPCを開いた。

そして、
画面とにらめっこしたまま
何度もスクロールを、
いったりきたりしつつ、

ノートに登場人物の相関図を
まとめ、

腕組みして考え込んだり
途中ニヤニヤしたりする。

深く考え込むと
椅子の上でもあぐらをかくのが
この男の悪い癖だ。

オレンジママレードは
放置されたまま、
数時間は経っただろう。

男は
何やらぶつぶつ言いながら、

一気呵成にキーボードを
軽快にたたきはじめた。

『¬PERFECT World』

波さんへ

ずいぶん、待たせてしまいました。
気が付けば1か月ほど経ったのかな?

やることリストがたくさんありすぎて、
一つ一つのタスクをこなすのに精いっぱいで
今まで後回しにしてきてごめんなさい。

ようやく、そのときがきたので、
今から、感想文を書いてみようと思います。

僕の感想文も
「¬PERFECT」だってことは
はじめにお断りしておきますよ。

ではでは。

【あらすじ】

大戦争の末の環境破壊によって、
陸地の大部分を砂漠で覆われた世界。
過酷な環境の中、放棄された科学技術の力で
人間を強化する事に成功した研究者がいた。
その“進化した人類”に付けられた名は
『パーフェクト』

研究所の襲撃から生き延びたルーシアは
世界を転々としていたが、
ある村で出会った少年に、
ふと想い人を重ねる。
少年とその仲間達との交流は心地よく、
ルーシアは次第に少年と心を通わせ、
居心地のいい日々を送っていた。

そんな平和な村に突然、
凄惨な事件が起こる。
居心地の良かった世界は壊れ始め、
ルーシアと少年達、
それぞれの時間が進み始める。

パーフェクトは本当に完全な人類なのか
“進化”をしても人類ヒトは人なのか

あらすじ

全8話の長編小説は、
波さんが高校時代から
構想し書いてきた作品だ。

「爆発はまだ続いている」

第2話

そんな一文が
授業中、波さんの頭に思い浮かんで
そこから授業中も休み時間も
書き続けたという。

緻密に構成を練った上で
書いた小説・・・ではなさそうだ(笑)。

本人自身

登場人物が
「なぜか知らないけどこう動く」って
思いながら書いている。

あとがきより

と綴るように、

そのとき
書きたい

場面や
心情や
セリフを

先行して
勢いに任せて
書いていったんだろう。

そういう書き方でしか
書けない作品て確かにある。

登場人物たち

第1話は

最終話を読み終わったあと、

もう一度読み直す伏線になることは
すぐに伝わってきた。

この小説は
実に多くの登場人物が出てくる。

メインの主人公は
「ルーシア」というパーフェクトの女性だろう。

といっても、
この物語は、
語り手が次々と変わっていくので

読者は、
ヴィリエだったり
ケンだったり
トーマやナユリにも感情移入ができる。
(ちなみに僕はトーマ推し)

多くの登場人物に共通しているのは

過去に、

・人間関係で傷ついている
・(特に家族・恋人など)近しい存在に傷つけられた

のだけど、

自分を傷つけた存在をずっと「想っている」

という点。

「想っている」というと
語弊があるかもしれないが、

それは
憎しみだったり
好意だったり、
後悔だったり、

愛憎半ばの
複雑な感情なんだけど、

ずっとずっと「想っている」。

タイチという
パーフェクトは、
その「想い」が

「憎しみ」という形でしか
表出することができず

村に大きな悲劇をもたらしてしまった。

物語の中では
一応、悪役というべき存在なんだろう。

でも、彼一人を
悪役とするには、
タイチがかわいそう、

そう思うほどに、
みなが一様に
カルマ(業)を背負って生きている。

悪いのは人じゃなくて世界だ

でも、
だからこそ、
「¬PERFECT World」の登場人物たちは
やさしい。

みなが、
それぞれの心の奥に
ひっそり隠している傷を

いたわり、
思いやり、

決して癒えることはないのだけど
支え合おうとしている。

以下は、特に気に入ったフレーズだ。

自分達は紛れもなく元々は普通の人間なので、アンドロイドと呼ばれるのはもちろん好意的に取れない。なので自然と『畏怖派以外はパーフェクトと呼ぶ』事がメジャーになっていった。
 もっとも、ルーシア自身はどちらも呼ばれたくない。だけどそれを主張すると自分の存在が曖昧になってしまう事も分かっている。
矛盾を抱えながらも、便宜上パーフェクトと呼ばれる事を良しとしている。

ルーシアは頷く。けど、まだ言えない。
やっと信じかけた世界が、押しつぶされていきそうで・・・

「俺がどんなに辛い思いをして生きていたか、あんたは考えもしなかったんだ。“息子を売ってしまった”、“けれどもう過去の事だ”、“過去にしなければならない”そう思ったあんた達は、村の人たちに俺たちの事を伝えもしないで“いい村”に仕立て上げた」
ひきつった笑顔。
それは多分、タイチが初めて見せた気弱な表情。

「タイチ。あなた本当はお父さんを殺せなかったんでしょ?お父さんに、自分が辛かった事、分かって欲しかったんでしょ?」

「似てるよ。私とタイチは。愛する者に裏切られた悲しみから、抜け出す事が出来ない。私は裏切られても構わないと決めた。私がヴィリエを好きだという事実は変わらないから。・・・もう、「好きだと言って」ともいえないしね。だけどタイチは、裏切った父親がどうしても許せなかった。謝って欲しかった。可哀そうがって・・・可愛がって欲しかった」

ナユリは、いつからか誰に対しても“フリ”が出来る子だった。
父や兄が血のつながった家族ではないということは見た目にも明らかだったし、自分がこの村にいる以前の記憶がないのも自分の存在の不確かさを煽っているのではないだろうか。

「優しい事言わないで。私の事妹みたいにしか思ってないんでしょう?思わせぶりな事言わないで。私の事解ってるような事言わないでよ。心の中に、入って来ないで。私は一人でも大丈夫だから。お父さんやお兄ちゃんに頼らなくても生きて行けるから。・・・生きて行かなくちゃいけないから」

 私は今まで自分を誤魔化して生きてきたから、なんとなくわかる。人と人とのお付き合いには“嘘やごまかし”も必要なんだ。

「今更そんなの気にして、傷つく事じゃないでしょう?お兄ちゃんは、他人の感情に鈍感なくせして、人の心に土足で上がり込むのが得意じゃない。自分にも他人にも心があるって気づいたからって、今更踏み込むことに躊躇しないでよ。そこまでしなきゃ、他人に素直になれない人だっているんだよ!!」

作家を予祝する物語

第7話、第8(最終)話では、

トーマとナユリ、
ルーシアとケンがそれぞれに結ばれる。

それぞれのシーンは
砂漠を舞台とする物語の中で
とりわけ清々しかった。

ほほえましいほどにピュアだと思った。

ピュアだからこそ
人は傷つくことも多いのだけど、
傷ついてもピュアの方がいい。

そう思わせるような
ステキなシーンだった。

物語のラストは、
第1話の伏線につながる展開で、

自分たちの物語(ハダリー=理想)
はここで終わるけれど、

ルーシエ(北の言葉で『未来』の意味)たちの物語は、
これからも進んでいくってことを
見事に暗示している。

タコ吹き、ふふふん

ここまで感想文を書いて
男は思わずご機嫌に
「ふふふん」とつぶやいてしまった。

作家と作品の関係は
言葉では尽くせないほど
深い意味を持っている。

高校生のときに書き出したこの小説が
このタイミングで完成したことは、

3児の母にして、
文房具とポルノと
常に「推し」を推し続ける
波さんの前途を予祝している。

そんな一人納得したような
「ふふふん」だった。

男は満足気な表情で
「喫茶 花」をあとにした。

目の前に波さんがいたことに
気が付かないのは、

あいかわらずのタコ吹きで
視野が極端に狭いのは彼の悪い癖である。


最後までお読みいただきありがとうございます。
嬉しくてタコ吹いちゃいます‪(˶˙๏˙˶)♡‬

#66日ライラン  
参加55日目(残り67日)。

【追記1】
共同運営マガジンはじめました。
ぜひご参加ください!

【追記2】
ついでにkindle本出版してます!
こちらも是非、お読みいただけたら嬉しいです。


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