魚臭い本
さくらももこの「もものかんづめ」を「くだらねぇ」とゲラゲラ笑いながら読んでいた。笑った勢いで文庫本が顔に付くと、ものすごい干物の匂いがするのに気づいた。隣にいた母にも嗅いでもらったが「ヴぅぅ、、」と顔をしかめたので相当臭いのだろう。
原因はなんだろう。数ヶ月前、私は北国の水産加工会社で毎日働いていた。ドラマ「泣くな、はらちゃん」や映画「川の底からこんにちは」などのような愉快な雰囲気の職場でタラ等の加工をしていた。
コールマンのイケてるリュックに魚臭い帽子や手袋を無造作に入れており、そこにこの本も入っていた。タラの干物を触った臭い手で本を読んだりもしていた。離島で拾ったウニの殻もリュックに入れており、入れたことさえ忘れ去り、磯臭い粉々のゴミとして発見されたこともある。それらの磯臭いゴミと共にリュックの中で熟成されていたのかと思うと少々気の毒である。
しかし、それだけで、ここまで干物のような臭いの文庫本が出来上がるだろうか。散々さくらももこをバカにしていたのが申し訳ない。私のだらしなさはさくらももこも苦笑いするようなレベルなのだ。
これがその魚臭い本である。嗅ぎたい方がいらっしゃいましたら、ぜひ。