誰の目線で『怪物』を観るのか
こんばんは。えだまめです。
遅ればせながら、昨日『怪物』を観てきました。
『誰も知らない』、『海街diary』、『万引き家族』。
是枝監督の作品は一般家庭を題材としない作品が多く、私の『健全な家庭コンプレックス』を刺激しないので、好きです。
『ベイビー・ブローカー』、『そして父になる』も観なければ…。
以下ネタバレになります。
先に観た従弟が、
「私は大人の目線で見ちゃった~。」
と言っていたので、多角的にひとつの物語を綴っていく映画なんだろうなと思いながら観ました。
・母親の視点
・先生の視点
・子どもの視点
それぞれの視点で出来事が語られていくについれて、映画の輪郭が見えてくるのが面白かったです。
また、ストーリーの起伏にメリハリがあったというか、エンタメ性があったところが、今まで観た是枝監督の作品と違う印象を受けて新鮮でした(まだ観ていない作品もあるのに、変に語ってすみません…)。
観る人の捉え方で物語の解釈は違うでしょうし、正解を求める映画ではないのですが、私は子ども達の目線でこの映画を観ていました。
「小学校の先生の名前覚えてる?覚えてないでしょ。そんなもんなんだから、もう少し気楽に先生やっても良いんじゃない?」
的なセリフを保利先生の彼女が言う場面があります。確かに大人からすれば小学生の6年間は、これから続く長い人生の僅かな一部分に見えます。実際、社会人で生活に忙殺されていれば、小学生の時に何に熱中し何に悩んでいたかなんて、どうでもいいことのように思えます。
ただ、子どもにとってはそうではないのです。
自分語りになって恐縮なのですが、私は小学生の頃の家庭環境が最悪でした。父がアルコール依存症で、毎日夫婦喧嘩が絶えませんでした。また、友人関係も上手くいかず、学校も楽しくありませんでした。湊と依里が生まれ変わろうとしていたように、私も、
「世界が終わってしまえば良いのに。」
と思いながら毎日を過ごしていました。
そんな私も今年で25歳になります。あの頃の私は、こんなに自分が長生きするなんて思っていなかったでしょう。
他の人にとってしてみれば、小学生時代の記憶なんて他愛ないものかもしれませんが、私にしてみれば『生きるか死ぬか』みたいなことを自問自答する日々でした。きっと湊も依里も、そんな風に思っているのではないかなと思いました。
自分を取り巻く小さな世界が全てのように感じてしまう気持ちは分かります。視野を広げれば、もっと救いのある方法もあったかもしれません。
ただそんなの結果論ですし、当事者にしてみれば今自分がおかれている現状が全てなのです。
色々な境遇の子ども達が、救いの手を求めることができる優しい世界になって欲しいと思いました。
あと、坂本龍一さんの音楽がとても良かったです。