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いつかマスクをしなくていい日がやって来る
今から15年ぐらい前、花粉症の私は外出時にマスクをするのが習慣だった。玄関で当時1歳の次男を抱っこすると、次男はすかさず私のマスクを下げ、鼻と口が見えるようにした。さりげなくマスクを定位置に戻しても、また下げられてしまう。
そうか、鼻と口が隠れた母の顔は見慣れていないから嫌なんだなと、マスクをするのをあきらめた。幼稚園に行く頃になったら、母のマスクは気にならなくなったようで、私の花粉症予防マスクは復活した。
話は変わって10年ぐらい前のこと。うちにはミシシッピアカミミガメがいる。そのカメに出かけるときは「行ってきます。」、帰ったときは「ただいま。」と言っているのだが、ある日うっかりマスクをしたまま「ただいま。」と話しかけてしまった。
岩の上にいたカメは、私のことをちらっと見た瞬間に慌てて水のなかにドボンと入っていった。マスクをした顔をカメに見せたことがなかったから、純粋にびっくりしたのだろう。カメの本当の気持ちは分からないけれど、それ以来ずっとマスクの顔をカメには見せないようにしている。
マスクをするのが日常になって何年経ったのだろう。家の中ではマスクはしないけれど、一歩家の外に出たらマスクはずっとつけっぱなしの生活。マスクを取るのは飲み物を飲むときと食事をするときだけ。口紅やリップグロスはもう何年も使っていない。コロナ前はどんなメイクしていたんだっけ。
それでも私はいい年の大人なので、マスクをしていない暮らしのほうが圧倒的に長いから、「明日からマスクなしでOK」となっても順応できると思う。
心配なのは、「外で会う人はみんなマスクをしている」という世界しか知らない子どもたち。このマスク必須生活は永遠には続かないので、どこかのタイミングでマスクを外す日がやって来る。そのときに今まではマスクで覆われていた口元の表情がバーンと出てきて、戸惑いを見せる子もいるんじゃないかなあ。マスクがないと外出できないという子も出てくるかもしれない。
子供の心は大人よりもはるかに繊細。マスク「あり」から「なし」への切り替えの時期は繊細な子たちの心に寄り添ってほしい。日本という国には、同調圧力とかいう意味不明な押し付けをする「圧力団体」が存在しているため、海外の重鎮に「モウ、ニッポンマスクヤメマショウ。」と言われるとか、マスクが急に国内で不足する状況になるとかで、マスクをしないことが正義という風向きに変わった瞬間に「マスク?そんなの効果ないから明日からなしで。」という空気になりかねない。
こうなった場合、元々マスクなしを望んでいた人は嬉々としてマスクを取るだろう。もちろん子どもたちにもそういう子はいっぱいいると思う。でも、前の日までマスクしないとダメって言われてたのに今日からはマスクをすることがダメと言われる状況に疑問を持つ子もいるだろう。私が子どもだったらきっとそのタイプだと思う。
だから、くれぐれも「明日から全員マスクしないこと!」なんて言わないでね。マスクはしたい人がすればいいし、したくない人はしなくていい。もともとマスクは風邪や花粉症を予防したい人がするたぐいのものだったはず。自分が無症状の感染者で人にうつす可能性があるって言い出したあたりから話がややこしくなっちゃったんだよね。
私が目指すゴールは、マスクはしたい人はする、したくない人はしない、ただそれだけ。特に子どもたちが周囲の大人に影響を受けることなく完全に自分の意志で行動ができますように。もちろん、重症化リスクのある子がマスクしたくない、というのをいいよいいよと聞いてはダメだけれど、そうでない場合は極力子供の意志を尊重するべきだと思う。
そして、子どもたちは自分の考えに責任を持ち、自分の考えと違う他人の考えを尊重することの大切さも学んでいこう。