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妄想沖縄旅行(四日目・完結編)

 とうとう旅行最終日の朝が来てしまった。午後の便で羽田に帰るので、沖縄にいられるのはあと半日。いつものことながら私が一番の早起きだった。家でも旅先でもうちの家族は本当によく寝ている。寝ている家族を起こさぬよう、消音でテレビを付け、ポットにお湯を沸かしてティーバッグの緑茶を淹れる。

 今日はどこに行こう。私が行きたいところを3つピックアップして、そのなかから家族に選んでもらおうかな。そうしたら自分たちで決めたという雰囲気が出せていいかもしれない。

 候補は、首里城・沖縄県立博物館・玉泉洞に決定。

 私が断トツに行きたいのは首里城。2019年の夏に見た首里城は本当にきれいだった。歴史そのものより施設の新しさが印象に残ったが、それも年月が経てばなじんでいくだろうと思っていた。だからその2ヶ月後に火災のニュースが飛び込んできたときは本当にショックだった。そこにあった建物がない風景を見たら悲しくなってしまうかもしれないけれど、現状を自分の目で確かめたい。

 6時30分になったので、カーテンを開けてみんなを起こす。今日も朝食はビュッフェ。沖縄旅行最後の朝食はいつもよりフルーツを多めにして南国リゾート気分を盛り上げる。食べながら今日観光したい場所について相談する。「この3候補なら私はどこでもいいのよ」というニュートラルな雰囲気が出せたのかは不明だが、思惑どおり首里城に行くことに決定。もしかしたら家族も首里城のことが気になっていたのかもしれない。

 部屋に帰り、荷物をまとめる。飛行機に乗るのはまだ先だけれど、スーツケースに入れるもの、機内に持ち込むものを考えながら詰め込む。

 ホテルから駅までタクシーに乗り、そこからはゆいレール。タクシーで首里城まで向かってもコスト的にも時間的にも問題ないが、あえてゆいレールに乗る。短い時間ではあるけれど、沖縄に住んでいる人と近くなれる気がするのが好きなのだ。

 タクシー、ゆいレール、徒歩。ようやく首里城に到着。コインロッカーに荷物を預け、身軽になったところで散策開始。所要時間90分の「見せる復興見学コース」を地図を見ながら進む。2019年に訪れたときはスタンプラリーをやって楽しかったなあと思い出す。

 焼失してしまったところもあるけれど、沖縄の空と風と暑さは以前となんら変わりはなかった。復興に向けて歩み始めている首里城。私は通りすがりの観光客だが、首里城の復興をずっと応援しよう、そして沖縄に来たら必ず立ち寄ろう。

 炎天下の散策に疲れたので、帰りは最寄り駅までタクシーに乗る。窓を流れるローカルな景色。ゆいレールに再び乗り、那覇空港へ。最後のお楽しみ、空港でのお買い物が待っている。

 空港に着いたらまず荷物を手放したい。朝きちんと荷造りをしたので、何かを出したりしまったりせず、カウンターに直行しスーツケースを預ける。スマートな旅行者になりたい私のどうでもよい美学。

 さて、那覇空港でのお昼ご飯は恒例の回転寿司。うちの子たちは洋風料理の外食が難しいアレルギー持ちなので、回転寿司が世の中に普及していることが本当にありがたい。といっても下の子は魚があまり好きではないので、エビとイカと納豆巻きばかり食べている。美味しいお寿司におなかが満たされる。これにて沖縄の食事は終了。

 そしてここから出発までが私の勝負時間。「お買い物@那覇空港」である。私はもともとあまり買い物好きではないが、那覇空港の買い物は大好き。沖縄リピーターなのでおおよそ売っているものは分かるし、そんなに新商品も登場しないけれど、フロアを回遊したくてたまらない。

 自宅用の減塩スパムや職場に配るお菓子などはすでに道中で立ち寄ったスーパーで購入済みなので、空港での買い物は本当に欲しいものだけ。いつも必ず買うのは、琉球ガラス製品、4個セットのぜんざい、もずくスープ。

 何年か前に琉球ガラスの一輪挿しの花瓶を買ったのがきっかけで、それ以来沖縄に旅行するたびに琉球ガラス製品を1個買うことにしている。私のプチ贅沢。ワレモノなので、空港で買うに限る。

 4個セットのぜんざいは街のスーパーで見かけたことがないので、いつも空港で購入している。甘い豆の味が本当に好き。沖縄ぜんざいを日本全国に広めたいぐらい。家に帰って冷蔵庫で冷やして食べる。沖縄旅行の余韻を時間差で味わえるのが好きだ。

 もずくスープはJALのお店で冷蔵で売られているもの。それは私が知っているなかで(といっても3つぐらいだけど)一番美味しいと思う。生姜が好きならオススメの品。ネット通販でも買えるようだが、やっぱり那覇空港でお土産として買いたいなあ。

 この3つを購入したらノルマはクリア。あとは気の向くままに動く。夫や子供たちは買い物に興味はほぼないので、お互いのために別行動が基本。那覇空港で上記3つの商品を持ち、ひとり黙々と目を皿のようにして商品を見ている中年女性がいたらそれは100%私だと思う。「妄想沖縄旅行のブログ書いている人ですか?」と声をかけてくださいませ。

 那覇空港の売店をひととおり満喫したら、出発ロビーに入る。もう旅行が終わるのかという寂しい気持ちより、旅行が無事に出来たという喜びが勝るのが沖縄旅行の特徴かもしれない。というのも、夏の沖縄旅行は台風の影響をかなり受けやすいのだ。アクティビティの内容変更や中止もある程度覚悟しているし、実際に台風で飛行機が飛ばずに日程を変更した経験もあるので、予定どおりに旅行出来たらそれだけで大成功。那覇空港で帰りの飛行機を待っているということは、無事に旅行が出来たという何よりもうれしい証。

 帰りの飛行機は行きほどワクワクはしないけれど、貴重な読書タイム。寝ては読み、読んでは寝る。読書をしていないと、いつものクセで「羽田に着いたら・・・」と次の行動を考えてしまうので、考えるスキを与えない読書が最適。現実は現実になってから考えよう。

 羽田空港に着いて荷物を受け取って、空港をスタスタ歩く。「ああ旅行が終わっちゃった」と寂しさが急にこみ上げる。心に留められず、それをふと漏らすと家族の誰かが 「また来年行こう。」と言う。いつもの私なら「ずっと先じゃん!」とツッコミをいれそうだが、「そうだね。」と素直にうなずいた。

 これにて妄想沖縄旅行は終了。沖縄に旅行したくなったら読み返そうと思います。もし沖縄に行きたくなったら、また読みに来てください。

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