#21「 トントン 」(ひーくんとなっちゃんのお話③)
これは、光(ひかる・ひーくん)と成美(なりみ・なっちゃん)のお話です。副題的なとこに凝りもせず③とか書いてしまいましたが、このお話が次に続くかこれでおしまいになるかは神のみぞ知る、です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
なっちゃんは、トントンされるのが好きだ。
背中でも肩でもお尻でもいいけど、
一番落ち着くのは、前頭葉の辺りらしい。
怖い夢で真夜中に目が醒めてしまったとき、
トントン。
バイト先のレジ締めが合わずに叱られて落ち込んでるとき、
トントン。
「今までで、誰のトントンが一番落ち着いた?」って聞いてみた。
なっちゃんは少し・・・いや、たっぷり24秒考えて、
「一 番はお母さんで、二番はお父さん。ひーくんは四番目だね」と言った。
一番と二番は仕方がない。悔しいけどトントン歴が格段に違う。
でも、三番は誰だろう・・・。
元カレ?
そうだったら、この先一生立ち直れない。
「知りたい?」って、なっちゃんが訊くから
「知りたくないけど、気になる」って、ぼくは正直に答えた。
「三番目はね、去年死んじゃったおばあちゃん・・・」
そう言って、寂しそうに笑った。
トントン、ぎゅっ。
ちょっとホッとしたことは黙っておこう。
<了>