#11 「 いつも、どこかで 」
平日の昼間だからか、改札口を通ったのは僕ひとりだけだ。
駅前ロータリーの中央にある噴水は、壊れているのか節約のためか水が止まっていて、干上がったタイルの上で数羽の鳩が気持ち良さそうに日向ぼっこをしている。
彼らを驚かさないようにそうっと噴水の縁に座って、ジーンズの後ろポケットから地図を引っ張り出した。
無造作に折りたたんだ地図には縦横斜めに不規則な皺が寄っている。
不動産屋のホームページで数枚の写真を見ただけで、内見もせずに契約した新居の場所を記した地図だ。
これまでの生活を