五十嵐イオナと大人の祝日
文化の日です。祝日です。小学生のころは日曜じゃないのに学校がお休みだ、ひゃっほう!という感じになっていたのですが、現在は、祝日かぁ、家族との時間は大切にしたいし、でも仕事もやりくりしなくてはなぁという感じで。自由も増えたけど、不自由も同じくらいある、大人であることについて考える時間、それがここ数年の祝日になってます。
Kindleの読み放題サービスに澤井健さんの「イオナ」が来ていたので久しぶりに読みました。小学5年生の遠藤秀のクラスの代任担任としてやってきたのは、超絶美人セクシー教師・五十嵐イオナ。教師らしさゼロのイオナによるセンセーショナルな教育が巻き起こす、刺激的な小学生ライフ!というお話。1990年から3年ほど青年誌で連載されていた作品で、毎回、まるでファッションモデルか海外アーティストのミュージックビデオかというぶっ飛んだ衣装で登場するイオナが目に楽しかったのをおぼえています。青年誌というフィールドで、ちょっと大人の世界を垣間見る子どもたち、という構造は、同時代の玖保キリコさんの「いまどきのこども」にも近いものを感じます。
連載当時は中学1年生になったばかり、いまいちわからないネタも多々あったのですが、イオナと秀が放課後に喫茶店に行く話で「ドーハンキッサ」なる言葉が飛び出したりして、こんなにエロチックな話をやっていたんかい!と、再読してみてびっくりすることばかりでした。ただ、わかっていなかったにしても、どのエピソードも絵やセリフの流れはものすごく鮮明におぼえていて。そうそう、この回は単行本化の際にストッキングや背景にスクリーントーンが追加されたのだった、とか、あぁ運動会の話の前に、練習をする回があったのに何故か単行本には収録されていないんだよな、わりとそういう幻のエピソードがあった気がするなといったことまで、読みながら思い出していました。自分で思っている以上に好きな作品だったみたいです。
それから、松苗あけみさんの「純情クレイジーフルーツ」をきっと作者の澤井健さんはとてもお好きなんだろうな。というのは大人になり、多くの作品にふれるようになってから気づいたところです。初期の絵柄はかなり近いものがあるし、シリーズがだんだんドタバタコメディとなってゆく感じも、ときどきスッと個人的でまじめな話が入ってくる構成も、口に両手を当ててびっくりするポーズも「純情クレイジーフルーツ」っぽい。というか、作品の中心にいるイオナがもう、丸ノ内女学園のいつも華美な衣装でぶっ飛んだ性格の教頭先生そのもの、彼女が若くセクシーに、さらに謎めいた感じになったような存在ですし。
単行本化でスクリーントーンが足されるくらい、連載中は画面が白くなりがちだったのも、もしかしたら絵柄が少女マンガっぽかったゆえ、だったのかもしれないですね。連載時、B5判の雑誌でみるきれいな線にうっとりしていたので、単行本で「クオリティがUPする」のがちょっと残念だったことまで思い出したりもして。第1巻あたりはちょっとセクシーすぎるところもあるけれど、基本的には、子どもにはちょっと大人っぽくて、大人にはとてもかわいらしくてクスリとしちゃう、そして絵が、線がとてもきれいなマンガです。秋の夜長によろしければ是非。