江田農園「パクチー物語」その2
みなさん、こんにちは。江田農園の江田直樹です。
前回は、パクチーを作り始めたきっかけのお話をさせていただきましたが、今回はパクチー作りの苦難についてお話したいと思います。
結論から言うと、通年パクチー作りは大変です。特に初年度の夏場は、本当に心が折れるものでした。
炎天下の農作業でクタクタな状態に追い打ちをかけるかのように、「納品されたパクチー不良だったけど、どうなってんの」コールがお客様からひっきりなしにかかってきていました。
畑から出荷した時は良い状態だったのに…お客様からの検品レポートが届くたびにご迷惑をかけてしまったこと、原因不明の不良に心が苦しくなりました。
本章では、容赦なく心身を追い詰める夏場のパクチーについて包み隠さずお伝えしたいと思います。
夏場の不良率95%にもなるパクチー。
前回お話した通り、銚子の風土に合う野菜だと信じて作り始めたパクチー。
夏場はどうしても生産できる野菜が限られるので、貴重な収入源になることを期待して生産にも力が入りました。
生産をスタートし播種したばかりは発芽も順調。
夏は大変だと聞いていたパクチー作りですが、初心者の割には上出来のものができていたと自負していました。
しばらくは出荷も順調でした。お客様から頂いた受注分をしっかり納品でき、安堵していたある日、電話が鳴りました。
「江田さんのところのパクチー、すごくとろけて使い物にならないんだけど。」
電話口でお客様が怒っているのが伝わってきます。でも、畑から出荷した時はすごく状態良かったのに。状況が掴めず、早速写真を送ってもらうとこんな状態でした。
なんじゃこりゃ。これはお客様も怒るのも無理はありません。葉がドロドロに溶けていて、とても食べられるものではない。その後も、色んなトラブルが発生し、何度も何度も何度も...不良報告を受けて心が折れそうになる毎日が続きました。売った分だけマイナスになった伝票が返ってくる。ひどい時は収穫したパクチーの95%がとろけで出荷ができなくなってしまいました。
頑張って汗水垂らして作ったパクチーが赤伝(マイナス伝票)になって返ってくる毎日。メンタルがやられてしまい、朝イチでパクチーの状態をチェックするのが怖くて仕方なくなりました。
更にはトロけに加え、病気などの異常も出るようになり、毎日が冷や汗ものでした。夏場の売上確保どころかこれではマイナスになってしまう。色んなストレスが一気に押し寄せて、心臓がバクバク言いながら畑に向かう毎日でした。
追い打ちをかけるかのようにトラブル頻発。
夏場のトロけによる農家の苦しみは十分伝わったかと思いますが、生育不良はそれだけではありませんでした。ここでは、代表的な不良の原因をいくつか載せていきます。
こちらの写真は葉焼けしているパクチー。原因は猛暑による高温障害。葉がどんどん焼けたように茶色くなっていきます。見た目が良くないので出荷ができません。
次に、トウ立ち。
トウ立ちとは、冬から春にかけて、寒い日が続いた後に急に温暖な気候が続くと、パクチーが「春が来た!」と勘違いして種をつけようとすることを言います。自然な現象なので仕方のないことなのですが、このトウ立ちが起きると本当に厄介。種に全ての栄養が行ってしまうために、パクチーがガチガチに固くなってしまうのです。↓の写真のように茎が太く食べても全く美味しくないので、お客様にお売りすることができません。
そして、アザミウマという害虫被害。
アザミウマは、体長1-2mmの小さな虫で、野菜の汁を吸う害虫です。アザミウマが野菜の葉から汁を吸うと、葉が白くなってしまいこれも見た目が悪く売り物にならなくなってしまいます。
更には、葉が茶色くなってしまう病気まで。こちらは、一気に圃場全体に広がることもあるそうです。
その他、ナメクジの食害に悩まされたり、収穫したパクチーを検品してみると、葉の裏にアブラムシがびっしり付いていたり。
初年度は、とにかくトラブルばかりのパクチー作りでした。結局、始めた当初は逆に赤字になってしまいとても悔しい思いをしました。
次章では、江田農園が必死で試行錯誤を繰り返した末、やっと辿り着いたパクチー作りの極意について具体的な施策を含めてお話をしたいと思います。
ライター:にっぽんやさい 山本桂子