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やさしい世界とやさしくない世界。

東京国際映画祭が始まりましたね。
わたしは今日『グランド・ブダペスト・ホテル』を観に行ってきました。
わたしの3大好きな映画のひとつ。

最高だったなあ。
本当に楽しかったんだよなあ。

ウェスアンダーソン好きだなあ。


朝、区役所に行きました。
既に7.8人のひとたちが待っていました。
ものすごい怒鳴り声が聞こえて顔をあげると
マイナンバーの不備か何かで男性が受付で怒鳴っていて
わたしはそのすぐ隣で書類を書くことになったんだけど
ひさしぶりに日常生活で聞いた人間の怒鳴り声で
自分の住所がどこかにいってしまいましてね
全然思い出せなくて
わたしも怒鳴り声に動揺したりするんだとそれにも驚いて
区役所じゅうが不穏な空気になり
わたしが手続きを終える頃にはあんなに満席だったひとたちが誰もいなくなってて
静まり返った区役所をわたしは後にしました。

怒っていた男性はきっとたぶん悪くなくて、役所のひともたぶん悪くない。 

日常生活で誰かの心からの怒りの声というものをひさしぶりに聞いたのでざわざわが止まらなくなって
とりあえずジャックジョンソン聴きながら散歩していました。

数分後

目の前を杖をついたおじいちゃんとおばあちゃんが歩いてて
そしたら
おじいちゃんが目の前でばちんと倒れたんです。
お年寄りはやっぱり手が出ないんですね。
頭から真っ直ぐ、一本の棒が倒れるようにばちんと。

ひゃあ大丈夫ですかと駆け寄って抱き起こそうとしたら
同時に女性が3人駆け寄って
みんなのテキパキたるや
前からとうしろからと抱き起こすひと、ティッシュと絆創膏だすひと、

みんなティッシュと絆創膏持ってる。(感動)

いつも大荷物のくせに
今日に限ってエコバッグとお財布しか持ってないわたし。

わたしはまわりで
おねえさんのバッグを持って
大変だ血が出てます!血はここから出ているようです!
みたいなこれと言って役には立っていない実況と応援係で

ひとりレベチのおねえさんは
血が付くのも気にせずとても頼りになって

ああいうふうに声がけしてあんなふうに抱き起こせばいいのか、
などと勉強になったのでした。

おじいちゃんとおばあちゃんは病院に行く途中だったそうで
そこで診てもらったらいいですね、という話をして
おじいちゃんは「ありがとうね、いいことあるよ」と笑いながら言っていたけど
ほんとに大事ないと良いな。
まじで無事だと良いな。

ご夫婦を見送りながら
見送る3人の女子がヒーローに見えて
みんなで
みなさんお優しいですね、良かったですね、

と言って解散しました。

優しい世界だった。

たった10分ほどの間に起こったことが盛り沢山すぎて
深呼吸しながら散歩して
いつか今日みたいなことを映画にしてみたいなあなどとぼんやり考えたりして
ただ歩いてるだけで道すがらいろんなことが起きる1日の映画。
そんな映画どこにでもあるか。
映画作るなんてこれまで一度も考えたことないけど。
そんな妄想するぐらい、ざわざわから遠ざかりたかったんだろうなあ。
家に帰ってからコーヒー淹れなおして飲みました。

だから今日のグランドブダペストホテルは本当に本当にいい時間だったのです。
普段家で観ている映画を大きなスクリーンで観る。
DVDで散々観てたのに色んな気づきがたくさんあって、今日のざわざわなんていつの間にか吹っ飛んでいました。

そうそう。理想の過ごし方。
わたしは俳優だから劇場や映画館に足を運んでもらうこともあります。
ただ『この作品で観てる人に夢や勇気や感動を与えたい』なんて言えません。
だけど、その日あった嫌なこと、最近のもやもや、そんなふうな感情が作品を観てるほんの数時間の間だけでも忘れてもらえたら、最高にうれしいです。
次に進むって、『とりあえず置いといて』ってのも手だと思うから。
もちろん毎日楽しい人が、さらにたのしくなってくれるのも本当に最高。

娯楽というものはそんな場所だったらいいなあ。

会場スタッフのお姉さんに写真撮ってもらったんだけど
一枚しか撮ってないのに画角のグリッド全て平行で感動した。

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