現役教員が新聞奨学生について教えます! 実態② メリット編
関東は大雪予報がたくさん出で、てんやわんやでしたね。
新聞配達の皆さんは、この寒さに加え、さぞ大変だったでしょう。
毎日、お疲れ様です!!
ところで、新聞奨学生制度ってご存知ですか?
大学や短大、専門学校、予備校に通いながら新聞配達をする、という制度です。
今回は現役小学校教員で、なおかつ新聞奨学生の経験がある私が、大学や短大、専門学校進学を考えている高校生、中学生。行かせてあげたいけどお金が心配な親御さん。
そして、小中高の先生方へ向けて、
『こんな制度があるんだよ!』
というのを体験を踏まえて話していきます。
ということで、第二弾。
新聞奨学生制度についての概要や始めたきっかけ、タイムスケジュールなどは、こちらの第一弾をお読みください。
前回、
『現代の奴隷とまで呼ばれる新聞奨学生をやってよかった!』
なんて書いていますが、理由については言及されていません。
今回は新聞奨学生制度のメリットに注目し、なぜ途中で辞めたのに、今『やってよかった!』と思っているのか、を話していければと思います。
1.新聞奨学生のメリット① 返済不要
基本奨学金というのは、残念ながら日本では返済ありの貸付奨学金であることが多いです。
最近、少しずつ流れが変わってきてはいますが、所得制限や成績制限があり、まだまだ狭き門です。
奨学金についてはこちらの本が参考になります。
また、代表的な奨学金である日本学生支援機構の奨学金も、基本は入学後の支給となります。
入学金と前期の授業料は基本的に入学前の支払いなので、本当に苦しい家計には厳しいです。
しかし、新聞奨学生制度ならば、新聞社によりますが、基本的には全額返済不要ですし、先に支払いができたりもします。
また、お金に苦しい家庭でも、新聞奨学生制度が可能な学部学科であれば、どんな私立大学でもいける額を負担してもらえます。
例えば私が勤めた日経新聞奨学生制度では、以下のような奨学金をいただけます。
基本的に返済不要の450万円あれば、どんな私立大学でも親御さんからの支援なしで進学することができます。多少足りない分は、給料を月1万円でも積立すれば4年間で48万円になりますから、それで賄えます。
月1万円の積立は、贅沢さえしなければ全然可能な給料でした。
なんせ家賃がかからず、光熱費も格安でしたから。
もう少し詳しく知りたい方はこちらへ。
2年コース、1年コースもあります。
『どんなにお金に困っていても、どんな家庭でも、自分の望んだ大学に行くことができる』
これが、新聞奨学生制度の最大の魅力ですよね。
2.新聞奨学生のメリット② ⭐️希少性
実は、これが『現代の奴隷』と呼ばれる新聞奨学生制度をやってみて、『やってよかった!』と思える最大の理由です。
とにかく
世間からの評価が高い!
私は教員採用試験に現役一発合格できましたが、筆記はギリギリでした。ただ、面接官の方と新聞奨学生の話をした際に、
『苦労されたんですねえ。』
と、絶賛してくれたのです。
教員になってからも、年配の先輩や管理職、保護者から、
『苦労されたんですねえ。』
と一目おいていただけるのです。
最大のメリットは、
苦労人、努力家の若者
と周りに思ってもらえることだと思っています。
→まだまだ若者と思っている2022年2月現在29歳の人笑
まず、そもそも人にはない苦労した経験を語れるというのは、それだけで価値があります。
私はたくさんの教員仲間がいますが、新聞奨学生を経験していて、小学校教員をやっている方は知り合いにいません。
→それは教職課程が取れないという事情もある。私は文部科学省の教員資格認定試験で免許取得をしたので…
→むしろいたら教えて欲しいです!語り合いたい…
この人にはない経験、経歴が
自分の希少性
を生むのです。
この希少性というのが、他の人との差異であり、面接や履歴書、エントリーシートでの強みとなるのです。
教員採用試験を突破できたのも、きっとあの面接は大きかったんじゃないかなーと思っています。
もちろん、社会人になってからも自分の希少性を高めることはできます。
仕事の仕方やオフの過ごし方次第で。
むしろ転職時にはこちらの方が大事でしょう。
しかし、学生の時にしか経験できないことはたくさんあります。
新聞奨学生に限らず、海外への留学やボランティア経験、部活、サークル活動…
社会人になってからはなかなか経験できない自分だけのストーリーを語れると、様々なところで有利に働くはずです。
→ただサークルや部活に入ってるだけでは希少性は高まりません。その組織の中で、自分しかしていない経験はなんでしょうか?
そして、人は苦労話が好きです。楽しかった経験よりも、苦しくて苦しくて、でもどうにか乗り越えた。
そんな経験を人聞きたがるし、そういう人を人は可愛がってくれるものです。
→『若い時の苦労は買ってでもせよ』とはまさに、ですね。
けして年配の方が仕事を若い人に押し付けるための言葉ではありません笑
した方が得な苦労なら、した方がいいってことですね。
話すタイミングも大事ですね。いきなり話すと、ただの苦労自慢になりますから笑
僕はある程度知り合ってから時間が経った時の
『朝早いんですね』
みたいなことを聞かれた時に、
『早起きは苦じゃないんですよね。実は学生時代に…』
みたいな感じで話すことが多いです。
今回、転勤先では9月ごろ、朝会で全校児童への自己紹介をする機会があり、そこで簡単にお話をしました。
子どもに対してというより、同僚の先生に知って欲しくて笑
その朝会の後、いろんな先生に
『苦労されたんですね』
と話してもらえたのは言うまでもありません笑
そこから一目置かれてるような扱いを受けている気もします。
→気のせいかも笑
3.新聞奨学生のメリット③ 耐性がついた
これも大事ですね。
デメリットでもあるんですが、新聞奨学生は
とにかくきつい!
です。それも身体的にも精神的にも。
詳しくは次回のデメリット編で書こうと思います。
ですがここで簡単に書いておくと、私の場合、
1.初めての一人暮らし、共同生活、仕事、震災が被ったこと
2.職場の社員さんが怖すぎたこと
→胸ぐらつかまれましたもん。
3.大学の周りの人たちとのギャップ
4.新聞が余った時のクレームの電話
が特にきつかったです。
身体的よりも精神的なものですね。
逆に言えば、こういう経験をしているからこそ、
1.残業代なし
2.時間外労働し放題
3.クレームの嵐
4.全教科担当!
5.休日出勤は当たり前
6.お金の管理、施設の管理もやるよ
7.放課後の問題も担当
8.お掃除も仕事だよ
…
あげていて悲しくなりますが、今やブラックの代表である教員をやっていても、続けていられるのかもしれませんね。
まあ、この上に挙げたことも、工夫次第でだいぶ改善できますけどね!
それはまたの機会に書いていきたいと思います。
4.新聞奨学生のメリット④ 奨学生仲間
実は職場に住み込みということで、入る前は少し楽しみでした。あこがれていた寮生活みたいなイメージで。
しかも女子もいるという笑
『わいわい楽しそうだな!』
などと、呑気に考えていたのが恥ずかしいです。
当時18歳の世間知らず高校生だったので…
実際、入ってからはこの共同生活で悩まされることも多かったのですが、この辺はデメリットで書きたいと思います。
良かったところもあります。
毎日一緒に仕事をして、同じ境遇。朝ごはんも晩御飯もテレビを見ながら一緒に食べることが多い…
→朝と夜のご飯は日、祝日以外は作ってくれる方がいました。めちゃくちゃ不味かったけど笑
月約3万円で朝夕食付きです。
朝は6時ごろ、夜は18時ごろにはご飯ができているので、その後は好きなタイミングで食堂で食べます。なので、一緒に食べる人、食べない人がいます。
外食でご飯を食べない時なんかは、『代わりに食べていいよ』なんて言われることもあります。
こんな生活をしていたら、自然と仲良くなりますよね。
日曜日や祝日は、夕刊がないので、遊びに行ったりもしました。
海に連れて行ってもらったり、カラオケ、外食、買い物など。
北海道の田舎出身の私にとって、横浜でのこの経験はどれも刺激的でした。
今思い返すと、仕事はしんどいことが多かったですが、販売所の生活は楽しいことの方が多かったですね。
先輩、同期、後輩含めて、約10年たった今でも、繋がりがあります。
5.新聞奨学生のメリット⑤ 問題意識
私は大学3年になる時に新聞奨学生を辞め、普通の大学生になりました。
代償は月18万円の借金です。
辞め方やその時のことについては、次回書きたいと思います。
うちの大学では3年生からゼミが始まります。
1年間特定のゼミに所属し、特に興味のある法律について学びます。
このゼミの募集ですが、人気のゼミは選考があります。
私がどんなゼミに申し込んだかというと、『労働法』のゼミです。
そうです。新聞奨学生の労働環境に問題意識を持った私は、法学部の中でおそらく一番の選考倍率であったであろう『労働法ゼミ』にチャレンジしたのです。
ゼミの選考でも、もちろん新聞奨学生の経験、問題意識について語りました。そのおかげかはわかりませんが、無事合格。おそらく倍率は3倍ほどだったように思います。
このゼミでの出会いは本当に大きなものでした。
さすが選考に勝ち抜いてきた人たちです。私もだいぶ個性的な経歴でしたが、ゼミのみんなも負けず劣らずの個性派揃い笑
今でも結婚式の幹事をお願いするくらいには仲良しです。
そんなきっかけをくれたのは、紛れもなく新聞奨学生での経験なのです。
さらに、4年時から卒業論文を書き始めました。
テーマは「教育格差から見た新聞奨学生制度の意義と労働法上の問題」
大学の集大成である卒業論文にも、新聞奨学生での問題意識があるのです。
新聞奨学生の経験と、目指していた教育の世界をつなげた、おそらく私にか書けない卒業論文になったと思っています。
この卒業論文は奨励賞をいただくことができました。
1万円の賞金もいただき、『やってよかったー!』なんて思いました笑
そして、この労働環境への問題意識と法律上の関係については、教員になった今でも、関心のあるホットワードの一つになっています。
そして、きっと、これからも関心を持ち続けるテーマになると思います。
そう考えると、大学に行く意味、学びって大事だなーと思います。
だからこそ、経済的な格差に関係なく、
『誰でも大学を目指せる』環境は大事であると思います。
その意味で、様々な問題はあれど、新聞奨学生制度の意義は、やはりあるのだろうなと思いますね。
6.新聞奨学生のメリット⑥ 最高の理解者
自慢話やノロケ話のつもりはないのです笑
これは、新聞奨学生制度のメリットといえるのか微妙ですが、実際に私の身に起きていることなので紹介します。
今の妻とは大学1年生の頃に出会いました。大学のサークル内で出会いました。
彼女はいわゆるお金持ちの家庭で、幼稚園から大学まで全て私立学校でした。
私とは180度育った家庭環境が違います。
当然、金銭感覚も違うわけです。
そんな彼女ですが、一緒にいると楽しくて落ち着くんですよね。
新聞奨学生時代の悩みもたくさん聞いてもらいました。
お金の悩みも。
私は新聞奨学生を辞める際に日本学生支援機構の奨学金を使いました。
月18万円の借金です。
今でも月2万5千円ほど返済しています。
家計からです。
そんな私と結婚してくれた妻と出会えたことが感謝ですし、新聞奨学生時代の苦労を知ってくれているから、今の生活があるんだろうなーと思っています。
新聞奨学生時代の経験があったからこそ、今の理解ある奥さんとこうして生活できているんだと思っています。
このように、苦労した時に一緒にいてくれた人は、その後の人生の中で最高の理解者になる可能性が高いです。
なぜなら、大変なことがわかってて付き合ってくれるわけですからね。お互い信頼できますよね。
7.最後に
いかがでしたでしょうか?
『現代の奴隷』と呼ばれる新聞奨学生のメリットをここまで話すのも珍しいと思います。
もう一度言いますが、私は『新聞奨学生をやって良かった!』と思っています。
それは、今回の記事で書いたメリットがあるからなんですよね。
やっている時のメリットというより、終わった後の人生においてのメリットが多いかな、と思います。
本当にしんどいことが多いですが、終わった後には必ず得られるものがあります。
とはいいつつ、私も2年で辞めているので、その辺次回はデメリットについてお話できればと思います。
5千字を越えてしまった…
こんな長文をお読みいただき、ありがとうございました!
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