株式投資型クラウドファンディングをVCと併用。プレシリーズAで総額2億円を調達、LIFEHUB 中野代表にインタビュー【起業家のホンネ #04】
「人類の身体的な制約からの解放」というビジョンのもと、「しゃがむ、立ち上がる、エスカレーターに乗る」といった動作を実現する、次世代型車椅子の製造・販売を目指すLIFEHUB株式会社(以下、LIFEHUB)。同社は、2022年9月に株式投資型クラウドファンディング「イークラウド」で資金調達を開始し、約4,600万円の調達に成功しました。
今回はLIFEHUB代表取締役CEOの中野裕士氏に、プレシリーズAのタイミングでの資金調達に株式投資型クラウドファンディング(以下、株式型CF)を選択された理由や実際に利用して感じたことをお伺いしました。
「人類の身体的な制約からの解放」を目指し、様々な資金調達手段を検討・実施
───2022年9月に株式型CFによる資金調達を実行されました。その前後に行った資金調達の方法を教えてください。
2021年1月に会社を設立し、インキュベイトファンド(以下、IF)、エンジェル投資家から最初の調達を行いました。同年12月にIF、サイバーエージェント・キャピタル(以下、CAC)から調達しています。2022年には既存投資家と事業会社、イークラウドでの株式型CFで、合計2億円の調達を実施しました。
───融資や助成金による資金調達は検討されましたか?
日本政策金融公庫からの融資を受けています。また、中小企業庁による、ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)も受けています。その他に、銀行からのデットファイナンスも検討したことはありますが、創業当時は事業のフェーズ的に合わなかったという感じです。
───資金調達手段に対するお考えを教えてください。
私自身、資金調達の手段についてはそこまでこだわりは強くないと思います。
一番最初にIFから出資いただいたときは、ベンチャーキャピタル(以下、VC)にもそれほど詳しくはありませんでした。弊社のエンジェル投資家の方が元々IFから出資を受けていた方だったこともあり、その方から紹介をいただき、IFのジェネラル・パートナーの赤浦さんとお話する機会を設けていただいたことが最初の出会いです。
───2022年のプレシリーズAでの調達で株式型CF以外にどんな調達手段を検討されましたか?
VCからのエクイティファイナンスですね。あとは、銀行からの融資も検討しました。LIFEHUBは国内で製品を製造していますが、銀行ではそういった製造業の方々とのつながりも強いのではないかというのが理由の一つでした。また、ハードウェア系の事業にはデットファイナンスとも相性がいいなと個人的には思っています。今後、製品が流通し始めたらデットも改めて積極的に検討していきたいと思っています。
株主が多くなることへの不安も、ツール導入で払拭
───株式型CFの最初の印象を教えてください。
株主が多くなることによる管理の手間やそもそもの手続きなど、色々と大変そうな印象はありました。あとは当時、VCからの調達ができなかった企業が株式型CFを利用する印象があり、ポジティブな印象が少なかった記憶があります。そのため、株式型CFを利用すること自体が、会社にとって良いイメージにならないのではないかと思うこともありました。
今だから言えることですが、実際にクラウドファンディング実施にあたって審査書類の準備など、手続きには一定の大変さはありました。ただ振り返れば、会社の内部を見直すことができる良い機会になったとも思っています。毎月のIRや、株主総会などもイークラウドが提供するツールを使うためほとんど負担はなく、調達後の手間に対する不安は完全に払拭されています。
株式型CFをマーケティングと捉える。インフルエンサーとしての可能性
───株式型CFの実施の決め手は何でしたか?
LIFEHUBのターゲット層と個人投資家層の親和性です。私たちの製品は、ある程度資金的な余裕を持った層の方をまずはターゲットとしているため、ある程度の資金があり、新しいものに敏感な株式型CFの投資家層とは相性が良さそうだなと思いました。今後、そういったターゲットに対してどのように製品の情報を伝えるか、認知してもらえるかが課題になると考えていたため、マーケティングの手段としても良い機会だと考えたのが1番の理由です。
企業から直接「うちの製品はいいですよ」と伝えるより、知り合いから「これいいよ」と勧められる方が、説得力もありますし、信頼につながりやすいのではないかと考えています。株式型CFで投資をしてくださった個人投資家の方がインフルエンサーとして第三者に紹介してくれるのではないかという点にも期待がありました。
イークラウドへの決め手は業界No.1の調達成功率の信頼感
───株式型CFの中でも、イークラウドを利用してくださった理由はありますか?
調達成功率100%という実績が信頼できたことですね。すごいなと思いましたし、この実績なら安心してお任せできると思いました。
※調達成功率100%:2022年9月当時
実際にクラウドファンディングを実施してから、全く関係ない方からもイークラウドを通して「見ました」と声をかけていただくこともあり、嬉しかったです。また実際に弊社でも、イークラウドを通じて投資してくれた社員が2名ほどいて、メンバーが株主になったというのも面白い経験になりました。
───株式型CFの実施にあたって、印象に残っていることはありますか?
目標額の達成が遠く感じ、焦ったり自分自身も周りに応援を呼びかけるなどはしましたが、本当にイークラウドの皆さんが率先して盛り上げてくださったのが印象的でした。Twitterをちょっとずつ活用するきっかけにもなりました。
最終日に1,000万円くらい集まって、目標額の約4,000万円を超えたときは嬉しかったですね。初めてお会いする方にクラウドファンディングについてお伝えすると、「こんなに(金額が)集まったんですか」と、かなり驚かれます。募集中は気づきませんでしたが、後になってすごいことを達成できたんだなと感じています。
今回調達した資金は、開発費用や新たな人材の採用、2023年にラスベガスで行われる「CES 2023」に参加するための資金として活用させていただきたいと思います。
※CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー):世界最大級のテクノロジーイベントとして毎年1月に米国・ラスベガスで開催。コロナ前に開催されたCES 2020には世界約160ヵ国から約18万人が訪れ、約4,600社の出展企業により20,000以上の新製品・サービスが登場。
書類準備は会社を整える良い機会に。株主を味方につけて事業に巻き込む
───株式型CFを検討されている起業家にアドバイスするとしたら何かありますか?
審査書類などの手続きは多少大変に感じるかもしれないですが、会社を大きくするとなると会計まわりなどもしっかり体制を整える必要が出てくるので、そのための良い機会だと思って活用してほしいですね。
あとは、株式型CFで投資してくれた株主の方々を上手く巻き込めると良いですね。実際に、サービスを使ってもらうなどのリターンをつけることでより関心を持ってもらい、サービスへのフィードバックをもらうこともできるかもしれません。あるいは、株主に協力してもらうことで、販路拡大等につながる案件を得られるかもしれません。
私たちも今後、株主に向けて試作品をお披露目できるような段階で実際に使ってもらい、ご意見をいただく機会を作ろうかなと考えています。
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