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尖った『才能』に投資する、足りない部分は一緒に埋めにいく。ライフタイムベンチャーズ 木村亮介|投資家の素顔 #02

スタートアップ起業家の誰もが通る、資金調達。

起業家には個性的な方が多いですが、ベンチャーキャピタリストもまた、いろいろな経験を経ており、その知見や個性を生かして起業家を支援している方が多数いらっしゃいます。

この記事では、ベンチャーキャピタリスト個人に着目して素顔を明らかにしていきます。パートナー選びに困っている全ての起業家が、この記事を通して会いたいと感じるキャピタリストを見つける一助になれば幸いです。

第二回は、ライフタイムベンチャーズ木村亮介さんにお話を伺います。木村さんの自身の投資家としての考えや起業家に対する熱い思いを伺うことができました。聞き手はイークラウド代表の波多江です。

◆木村 亮介
プライスウォーターハウスクーパース株式会社(現:PwCアドバイザリー合同会社)及びKPMGヘルスケアジャパン株式会社にて公共インフラ/ヘルスケア領域でのコンサルティング業務に従事。その後インキュベイトファンドへ参画しispace、Gatebox、Misocaなど40社超の投資先支援に従事。2017年1月にライフタイムベンチャーズを設立。経済産業省J-Startup推薦委員、経済産業省ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト(JHeC)2018-2022審査員。一橋大学商学部経営学科卒。

歴史好きの少年時代、道を拓くリーダーと共に戦う”軍師”に憧れた

波多江:
最初のキャリアはコンサル大手のPwCとのことですが、この時から独立されるまでのお話を聞かせてください。

木村:
PwCアドバイザリーで行政機関や公共インフラ領域のコンサルティングを2年半くらいやったのがキャリアのスタートです。その後に、KPMGヘルスケアジャパンで病院や介護を中心としたヘルスケア領域のコンサルを2年半という感じです。合計で約5年間、新卒からコンサルティング業界にいました。

実は小学生くらいから歴史オタクで、家に三国志とか日本の戦国時代とかの本が並んでる環境で育って。その中で、軍師とか参謀と呼ばれる人に憧れたんです。キングダムでいう秦とか将軍とか、王道に憧れるんじゃなくて、道を拓いていくリーダーと一緒になって、その裏で支えたり戦略を考えている人に魅力を感じていたんです。

そんな15歳の僕には、経営コンサルタントって凄い面白い職業なんじゃないかって思えたんです。

リーダーと顔を突き合わせ、意思決定を直接サポートする仕事としてのベンチャーキャピタル

木村:
コンサルティングのキャリアを築いていく中で、組織の一員としてチームで事業に携わるよりも、経営者と1on1で向き合って、より直接的に意思決定をサポートしていきたいという思いが強くなりました。

その中で、大企業との比較ではないけど、組織的なレガシーがなく最初から自分達の裁量で事業や企業文化を作っていける、スタートアップの世界に強く憧れました。

僕の中で、そこでの軍師的な存在がVC、特にシードVCだと思ったことがVCへ興味を持ったきっかけです。

当時、ベンチャーキャピタル募集はほとんど公開されてなくて。唯一募集していたVCに応募したんですけど、残念ながらご縁がなくて。

そこで、じゃあ起業しようってなって。(笑)

この時、生まれて初めて行ったハッカソンのイベントで出会った方がきっかけで、インキュベイトファンドの赤浦さんに会って、うちで一緒にやらないかと言っていただいて。

うちに来たら沢山起業出来る様なものだから。ただ、あくまで主役はリスクを取って人生を懸けている起業家。我々はそれを支える黒子ではあるけど、一緒に事業を立ち上げてく感じだよ。木村さん、そういうの好きなんじゃないの?って。

その場で、入らせてくださいって事を言ったのが始まりです。2014年の秋くらいです。

多くを学んだインキュベイトファンドGP赤浦さん、ヘルスケア領域について熱く語り合ったVC仲間の存在

波多江:
多くの方と関わってきたと思うんですけど、影響受けたキャピタリストの方や経営者の方は?

木村:
圧倒的に時間を過ごしてきたのは赤浦さんです。それもあって、とにかく色んな局面を一緒に乗り越えさせてもらったり、学ばせてもらいました。僕のキャピタリストとしての経験や学びの大部分が、赤浦さんからの影響を受けていると思いますね。

インキュベイトファンド赤浦さんと

あとは、僕が数年来関わらせてもらっているヘルスケア領域でお互いに議論し合った、比較的年齢の近い先輩方にも沢山刺激をいただきました。キャピタルメディカベンチャーズの青木さん、アーキタイプベンチャーズの福井さん、グロービス・キャピタル・パートナーズの福島さん、D3の永田さんを始めとするヘルスケアVCの皆さんですね。

当時は、ヘルスケア領域への投資に対する関心をみんな持ってはいたものの、VC投資として上手くいくかどうかが、それぞれのファンド内で色んな意見があったんじゃないかなと。

それでもやりたいって人達がVCを横断して仲良くなっていきました。投資テーマとして自分が関心があって、強みにしていきたい領域を一緒にディスカッション出来る仲間が周りにいたのは、有り難かったです。

全員野心的な所があって、日本のヘルスケア投資の規模の小ささに課題感を持っている、熱量が高いコミュニティでした。

皆私の結婚式にも忙しいなか来てくださって、公私ともに親しくさせていただいている方々です。

インキュベイト時代の仲間・先輩方と

投資先の3分の2が初めて会ったその場で投資決定。一緒に動いてみないと分からない。

波多江:
投資する上で、起業家の方との投資の前後での関わり方の変化や意識していることを教えてください。

木村:
師匠のインキュベイトファンドの赤浦さんが言ってた事をそのまま踏襲してるんですけど、「ご一緒してみないと分かんないよ」ということでしょうか。

結局投資のタイミングでは、向こうは起業家でこっちは投資する立場。本気で資金調達をしに来てるし、こっちも本気。立場が真逆だからこそ、最終的にはご一緒してみないと分からない。

ただその中でも、自分なりの基準は持っておく。

その考えは、今でも変わってないんですけど、良さそうだなって思ったら、割とその場で決めてます。現状、24社ある投資先のうち初めて会ったその場で投資しますからって言った会社が3分の2くらい。

残りの3分の1は面白そうだなと思いつつ、業界が専門的で自分にとって顧客ニーズが分かりづらかったのでプリセールスでニーズ検証をお願いしたり、創業者が現職の医師だったのでフルタイムの経営者をお願いしたりして、それをやりきってくださった方に投資してきました。

投資の決め手は、尖った専門性。ビジネススキルは後から一緒に埋めていく

波多江:
その場で投資決定することが多い中で、逆に難しさを感じてしまう事業だったり人柄みたいなものはありますか?

木村:
基本的には、前向きに考える気持ちでお時間をいただいてます。ただ、よく言う、ベンチャーキャピタルはチーム・プロダクト・マーケットに投資するみたいな話あるじゃないですか。僕はどれでもないと考えていて、

創業者が”専門性があって人間的にいい人か”

というところだけで根本的には投資判断をしてます。

ヘルスケアだから投資するんですよね?みたいな事を言われる事があるんですけど、実際は半分イエスで半分ノーって感じです。

この人じゃないと出来ない領域とか、この創業者がやってるという事自体が参入障壁が高かったり、この創業者あってこそのストーリーとか。創業者のエッジ、タレントが一番大事かなと思ってます。

そういう方は、ビジネスマンとしては何のエッジも立ってないって事がよくあるんですね。そこに不安を抱いて相談しにいらっしゃる方も多いのですが、そういう方こそサポートのし甲斐もあるし、僕たちがいる意味があると思います。

採用支援という意味でも、エキスパートの創業者にジェネラリストをマッチングする事は結構出来てきてますが、逆は難しい。ある意味不器用でパラメーターのバランスが凄い悪い型破りな創業者に投資をして、自分がご一緒した後に、足りない所を一緒に埋めに行くっていうのが基本的な投資スタンスかなと。

KiteRa、Rehab for JAPAN、Ax Robotix - 最近のエッジの効いた投資先

波多江:
エッジの立った投資先って最近だとどんなところがありますか?

木村:
皆さん大体エッジは立ってるんですけど、最近だとKiteRaっていう社内規定、就業規則とかのSaaSですね。

◆株式会社KiteRa
働き方改革に対応した就業規則や社内規程を簡単に作成・運用できるクラウドサービス「KiteRa」シリーズを展開。“安心して働ける世界をつくる”がミッション。

代表の植松さんは、社労士なんです。まず社労士で起業してる人があんまりいないじゃないですか。いい意味で社労士らしい所と全然社労士らしくない所がある。

就業規則や社内規定は、とりあえずコンプラの為に作っておけばいいってものじゃない、ほんとに働き方を改革するとか働く為のいい職場作るんだったら、ここから変えていかないとだめだっていう強い意思を持っていらっしゃいます。

そんな事を思って起業する社労士なんて、少なくとも僕は植松さんくらいしか知らないですね。

彼が始めたプロダクトだからここまで来れてるみたいなことを言われたりしますし、立ち上げの初期には、植松さんが熱っぽく、これが先生方の業界の未来じゃないですか、変えていきましょうよって。植松さんがそう言うだけで、伝わるんですよ。

それから、Rehab for JAPANっていう介護業界向けSaaSも尖ってますね。リハプランっていうサービスをやってて。

◆株式会社Rehab for JAPAN
デイサービス向けクラウド機能訓練ソフト「リハプラン」の提供。専門職の脳内で行われていたリハビリ訓練計画の立案工程を自動化し、最適なリハビリメニューが自動提案される。”介護を変え、老後を変え、世界を変える。”がミッション。

代表の大久保さんは作業療法士という、介護現場のリハビリ専門職がご出身です。リハビリの力があれば、おじいさんおばあさんが要介護になっても諦める必要なんかないんだ。もっと長くお元気でいて貰える方法があると。そのやり方を自分は知っているから、経験してきた事を広く普及させたい、と。

みんな、特定の領域に長い時間を費やして他の誰にも真似できない経験をしてきている、尖った専門家です。

また、これからはドメインのエキスパートだけでなく、テクニカルエキスパートへの投資・サポートを強化していきたいです。

最近の例で言うと、Ax Robotixという会社です。

◆Ax Robotix株式会社
睡眠の質改善を目的とした変形し成長するベッド『Bexx』を手掛ける。“快眠のその先へ”がビジョン。

元Photosynthの最初のエンジニアだった川村さんというロボットエンジニアが作っているベッドです。あれは、彼のロボットエンジニアとしての素質がないと、そもそも作ろうとすら思わないだろうっていうものだったと感じています。

プレチームラウンド、創業期のメンバー集めから本気で支援する

木村:
そういった、エンジニア発とかリサーチャー発領域にも今後もっと投資を増やしていきたいと思っていますし、その尖った部分さえあれば経営の知識や経験が無くても全然関係ないと思ってます。

そもそも、そういった尖った専門家に対して最初からチームが出来あがってる事を期待して待ってしまうと、その後アップデートがないままに、諦めてしまったり脱線してしまってたりという事が結構あります。

それくらいに、創業メンバーを集めるのは難しいと思っています。

そういう背景もあって、今後のファンドではプレシードの一個前に新たなラウンドを創設しようと思っています。プレチームラウンドというもので、共同創業者を探す為だけにお金使ってくださいという、チーム組成のためのものです。

資金的な部分だけでなく、一緒になって自分やエージェントさん含めて候補者を見つけに行ったりすることはもちろん、起業家自身の採用コンテンツ力を磨くっていう部分もやっていきます。特に専門家の方の場合、採用の候補者へのアピールが苦手なようです。

なので、定例ミーティングの冒頭に、30秒ピッチというコーナーを設けて、自分が当社の採用候補者で、グーグルにいるエンジニアだと思って自己紹介してみて下さいっていうのをやってたりします。

長く愛され、存在し続ける事業を創出する『才能』に投資する

波多江:
ライフタイムベンチャーズのコンセプトについて教えてください。

木村:
ライフタイムベンチャーズは「長く愛され、存在し続ける事業を創出する『才能』に投資する」をミッションに掲げる、ヒト・ドリブンな独立系プレシードVCです。

長く愛され存在し続ける事業とは、2050年の人と地球の為に意味のある事業を作ろうとしてるかどうかです。

今までは、ヘルスケアとか働き方改革とか人における2050年を見る事が多かったですが、次のファンドからは環境、地球の問題も含めて取り組んでいこうと思っています。

未来の子供達の世代に残るものを作ろうとしている事に対してモチベーションを持っていただいている方に投資をしていきたいです。

そして、才能に投資する。

プロダクト、チーム、マーケットじゃなくて、あくまで「人」の才能に投資する。

事業の踏ん張りどころ、プレシリーズAの新たな資金調達手段として株式投資型クラウドファンディングに期待

波多江:
弊社事業である株式投資型クラウドファンディング(以下、株式投資型CF)について伺います。調達手段としての株式投資型CFについてはどのようにお考えでしょうか。

木村:
株式投資型CFについては、僕自身は割と推奨派です。

ライフタイムベンチャーズの投資先で言うと、例えば教育系のスタートアップは相性が良いと思っています。それ以外でも、社会課題とかこれから未来を変える為のサービスが全体的に相性がいいと思いますね。

このトラクションでは次の資金調達は厳しいかなというような、プレシリーズAのタイミングではVCの担当者ベースでは応援したくても、組織としては意思決定が難しいというようなこともあると思っています。

そういった状況下では、サービスへの純粋な興味や好奇心だったり、その会社が創ろうとしているものの社会的な意義については、個人の方が共感しやすく意思決定が早いと感じています。

僕としては、起業家には資金調達に精神とか時間を摩耗せずに、事業に集中して欲しいと思っているので、新たな資金調達手段として株式投資型CFの存在には期待したいですね。

代表となる国内事例の創出と、それを業界に浸透させること

波多江:
株式投資型CFについて、課題に感じることは?

木村:
そうですね。端的に言うと、分かりやすい成功事例。

イグジットまで含めた成功事例が、もっと増えてくると良いかなと思います。蓄積されていってる成功事例を私たちVCがちゃんとタイムリーに把握できているのかどうかも大事ですね。出資先の成功事例がちゃんとVC含め業界に浸透してる状態が大事だと。そこだけかなと思います。

そういう状態だと、安心して自分達も共同投資とか今の出資先を紹介していいかどうか、判断がつくっていうのはありますね。

起業家本人は、やっぱり新しいスキームに対しては特に、不安を覚える方も多いと思うので。成功事例が見えないからやらないっていう事、意外と我々の業界は起こりがちだと思ってます。

一方で、リードVC、リード投資家になるんだっていう気持ちで起業家のために良いと思う手段は積極的に活用していくような、私たちVC側の気持ちも必要かもしれません。

波多江:
今後、ライフタイムベンチャーズの投資先案件をイークラウドでもご支援して、分かりやすい成功事例を一緒につくれると嬉しいです!

まずは自分の才能を信じて、どうやったら実現できるかは一緒に考えましょう!

波多江:
最後に起業家の方へのメッセージをお願いします!

木村:
ご自身の事をまあまあ凄い人だと内心思ってるけど、周りに起業してる人があまりいなかったりで、今ひとつ踏み出せない、というような環境にいらっしゃる方、是非ライフタイムベンチャーズにお話をして頂ければと思います。

特に専門家の方。医師、医療専門職、研究者の方。

多分そういう方の周りには起業してる人があまりいないと思います。そういう環境で、周りの人に相談するとやめとけとか、色々言われたりしますが、それで諦めてしまうんじゃなくて、自分がどうしてもやりたいことに自信を持ってほしい。

自分はこれをやるべきだと思うんですけど…と謙遜気味に相談にいらっしゃる方も多いですが、そういう方ほど私たちが投資する意味があると思います。

どうやったら一緒にそれを実現出来るかということを一緒に考え、一緒に動くVCでありたいと思っています。

最後に一つだけ。
私たちは『才能』に投資するVCです。

ご自身がどうユニークなのか、人生の沢山の時間を投資してきて誰にも負けないと思うところがどこなのか、主観的に自信を持ちながら、客観的に説明出来るように振り返ってみていただきたいなと思ってます。

自分の専門性や才能を、ぜひ大事にしていただきたいなと思います。

WEBサイトの「返信保証あり」問い合わせフォームにご連絡いただければ、必ず返信します。全国各地どこにいる方でも、尖った専門家の方のご相談お待ちしてます!

波多江:
起業を目指す環境もなく自信を持てずにいるけど、自分はここなら誰にも負けないって思える専門家タイプの起業家さんは、木村さんに相談すると良いですね。

木村さん、熱いメッセージありがとうございました!

▼木村さんに相談したい方はこちら

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