1本の太い矢より500本を束ねた強固な矢を。コミュニティラウンドでADDressが得た株主応援団【起業家のホンネ #05】
多拠点生活を叶える住まいのサブスクリプションサービス運営のADDress(アドレス)。同社は2023年7月、株式投資型クラウドファンディング(以下、株式型CF)「イークラウド」で関係者人口を増やすことを目指し、国内で初めて※「コミュニティラウンド」と銘打った資金調達に挑戦しました。
※イークラウド調べ
株式型CFを使ってサービスに愛着を持ったユーザーや企業のファンやコミュニティなどから資金調達することは、海外ではコミュニティラウンドと呼ばれています。
今回のコミュニティラウンド実施の結果、申し込み額は国内最高額※となる9,990万円に3日目で到達。最終的には、ADDressの家の管理人である「家守」(やもり)やユーザーを含む約500名の個人投資家が新たに株主になり、9,930万円の出資を受けました。
※イークラウド調べ
今回、ADDress代表取締役の佐別当隆志氏へのインタビューでは、シリーズC後のタイミングで株式型CFを採用した背景やイークラウドをプラットフォームとして選んだ理由、ADDressのコミュティに対する考えや今後の戦略をお聞きしました。
サービスへの共感を大事にしてくれる個人投資家の力が必要
───株式型CFを実施される以前の資金調達について教えてください。
これまでに、ベンチャーキャピタルや事業会社、複数の個人投資家から出資をいただいています。
前回はシリーズCラウンドとして、2022年8月にBonds Investment Groupと静岡銀行を共同リード投資家として資金調達を実施しています。
また、創業当初には約20名のエンジェル投資家から1人あたり50万円程度を集める少人数私募を実施したこともあります。
───株式型CFの実施を決めた背景を教えてください。
創業当初にエンジェル投資家から出資いただいた際は、ほとんどの投資家が顔見知りという状況でした。
実は創業当初から、まだお会いしたことのない方も含め、全国から多くの投資家をADDressの株主として巻き込む取り組みをしたいという考えはあったんです。しかし、当時は株式型CFに関して、法整備の問題や株主管理などの仕組みが煩雑という印象を持っており、踏み切れずにいました。
昨年の2022年にイークラウド代表の波多江さんとの意見交換で法整備が整ってきたことや、株主間契約がWeb上で完結できるなど、経営者の負担がかなり緩和されてきたことがわかりました。
資金調達環境の厳しさも背景にありました。たとえば、昨年くらいからSaaS系スタートアップの企業評価がぐっと下がったと思いますが、僕らのサービスはサブスクリプションモデルなので、ビジネスモデルとしては近いところがあります。スタートアップの資金調達では、厳しい業界と隣接したりビジネスモデルなどが近かったりする業界も市況の煽りを食うことがよくあります。
そういった背景もあり、ADDressが持つサービス自体の中身を見て、社会的意義やビジョンに共感してくれる個人の方々のお力をお借りするのは今だと思い、株式型CFの実施を決断しました。
コミュニティを理解して伴走してくれるかどうかがプラットフォームの決め手だった
───プラットフォームにイークラウドを選んでいただいた理由を教えていただけますか?
複数ある株式型CFプラットフォームの中で、特にハンズオンで伴走してくれると感じたからです。
既存投資家の中からは、最後発のイークラウドよりも歴史のあるプラットフォームを選んだほうが、投資家数の点などで調達しやすいのでは?という声も上がりました。
しかし個人的には、僕たちが本当にやりたいことを実現できるか?という観点をより重視したいと思いました。このラウンドの最も重要な目的は、ADDressがこれまで作ってきたコミュニティのメンバーやADDressに興味を持ってくださった方を株主としてお迎えすることだったからです。
そのため、僕たちの想いやコミュニティへの理解、コミュニティラウンドを最大限盛り上げてくれるサポートが得られるかがプラットフォームを選ぶポイントになりました。
株式型CFは上場の擬似体験?!約500名の新株主の期待を背負い、緊張感が生まれた瞬間
───株式型CFの実施にあたって、印象に残っていることはありますか?
クラウドファンディングの開始時刻、ちょうどイベントに登壇していたのですが、状況が気になって何度も確認してしまいました。開始30分で想定以上の額が集まったことから、目標が現実になる手応えを感じました。
一方で、多くの方からご期待をいただいていることから、これまで以上に気を引き締めてADDressを成長させていかなければという良きプレッシャーと責任感を感じました。そういった意味では、上場の疑似体験をしたような感覚に近いかもしれません。
▲募集開始翌日の佐別当氏のツイート
1本の太い矢より500本を束ねた強固な矢、メンバーの自信にも繋がった
───今回株主になった方から反応はありましたか?
募集後にADDressの家の管理人である家守(やもり)や、株主になった会員の方などにお会いする機会がありましたが、みなさん口を揃えて「ADDressの株主になれたことが嬉しい」と言ってくださいました。
ハイリスクも無論承知の上で、純粋にADDressの一員になれたことが嬉しいと言ってくれたんです。投資上限額である50万円※を投資してくれた方の中には、「本当はもっと投資したかった。何でも協力するので言ってください」と言ってくれた方もいます。
※特定投資家を除く
たとえば上場株式への投資ですと、その企業の株主になれて嬉しいとか、このサービスを応援して誇りに思うといった感覚を持つことって、なかなか稀だと思うんです。今回のコミュニティラウンドでは、株主の方から株主になれたことへの喜びやADDressへの応援の気持ちをいただき、強い信頼関係が築けたと思っています。
───社内の反応はどうでしたか。
複数名のスタッフが、今回のクラウドファンディングが自信に繋がったと言ってくれました。
中途でジョインしたメンバーは特に、創業当初の、エンジェル投資家がADDressが持つ可能性に共感してくれたという過程を体験していないので、「こんなに多くの人から応援されているんだ」と感じるとても貴重な機会になったようです。ADDressの社員でいることへの誇りが生まれたのではないかと感じています。
───株式型CFでの資金調達によって実現したこと、これからしたいことを教えてください。
会員のオンラインコミュニティ「ADDress+(アドレスプラス)」のリリースと同時にコミュニティラウンドを実施しました。2つのコミュニティを実現できたことで、改めてコミュニティこそがADDressというサービスにとっての資産であり、最大の強みだという共通認識が生まれています。
今後のプロダクト開発においても、コミュニティに重点を置いた機能を次々にリリースしていく予定です。今回お迎えした約500名の株主の方々については、ADDressの応援団として物件の紹介やオーナーの紹介など協力を仰ぎ、僕たちもコミュニティにしっかり貢献していくサイクルを作っていきます。そういった形で、コミュニティを今後の事業のコアに据え、共に成長していきたいと思っています。
コミュニティラウンド成功の鍵は「共感性」、どんな社会を作りたいかを考える
───株式型CFを検討したい起業家に伝えたいことはありますか?
「共感性」が重要なポイントになると思います。そのサービスを応援したい、大きくしたいと思ってもらえるようなサービスであれば投資家は必ず集まります。
ベンチャーキャピタルから5億円、10億円を調達するのもすごいことですが、こういった仕組みで投資のハードルを下げて、個人から10万円、20万円を積み上げて数百人の応援団を作れるのは、個人的には何倍も喜ばしく、カッコいいことだと思います。サービスが社会に必要とされている、何よりの証拠だからです。
これからコミュニティラウンドを資金調達の手段として考えるなら、共感・応援されるようにサービスを磨いていく必要があります。自分たちを主語にした事業計画ではなく、どんな社会をつくりたいか、どんな人を幸せにしたいかを軸に考えていくと良いんじゃないかと思います。
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