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スタートアップ市場調査:ウェアラブルデバイス編

いつもイークラウドのnoteをご覧いただきありがとうございます。

イークラウドではサービス開始以来、株式投資型クラウドファンディングを通して20案件以上をご紹介してまいりました。ご紹介した企業の事業領域も幅広く、オンラインのカタログギフトからはじまり、D2C、SaaS、Femtech、培養肉、クラフトビール、ドローン、VR、AIなど幅広い事業領域のスタートアップ企業のサポートをしてまいりました。これからも、多種多様なスタートアップ企業をサポートしていきたいと思っております。

今回も弊社のインターンの前田が、今後イークラウドでご紹介したい特定の業界に関する市場の動向や注目のスタートアップ、その業界で株式投資型クラウドファンディングを実施したスタートアップなどを調査しました。

本記事では、健康への意識の高まりにより注目されるヘルスケア領域を中心とした「ウェアラブルデバイス」をテーマとして取り挙げます。

・「ウェアラブルデバイスの市場は、現在どのような状況?」
・「ウェアラブルデバイス市場に、どのような企業が取り組んでいる?」
・「ウェアラブルデバイス市場は、今後どう成長していくの?」

などの疑問に少しでもお答えするような記事になれば幸いです。
*本記事は、1ドル=145.81円(*2023年8月21日)のレートで計算しています。


■ウェアラブルデバイスとは?

身体の一部に装着して利用するコンピューター

ウェアラブルデバイスは、スマートフォンのような「持ち運ぶ」ものではなく、「身に着ける」ことで、本人が意識せずとも利用可能な点が特徴です。デバイスの様式は、リスト型から、ゴーグル型、キャップ型、リング型、ヘッドホン型、ペンダント型など、多種多様です。

その機能は、スマートフォンのように一つのデバイスで複数の機能を搭載し、よりシームレスな決済やチャットなどを可能にしています。
また、ウェアラブルデバイスを身に着けている箇所において、センサーで身体の動きや心拍数などの生体データを取得し、利用者の行動記録や健康管理などに応用できるデバイスも多く誕生しています。

■ウェアラブルデバイスの市場規模

年次成長率が14.6%の急成長の世界市場

世界のウェアラブル技術市場は。2022年に$61.3B(約8兆9000億円)となっており、2023年から2030年にかけて年平均成長率14.6%で拡大していくと予想されています。

現在のウェアラブルデバイス市場は、スマートフォンのデジタル機能の代替手段や、自身の生体データを可視化することを目的とした、個人における消費が市場を形成してきました。

そして現在、多くの企業は、ウェアラブルデバイスから取得した個人の生体データを、医療・スポーツ・エンターテイメントなど、より広範囲なライフポイントに接続するデバイス本体やアプリケーションの開発に取り組んでいます。2023年以降は、ウェアラブルデバイスから計測された個人情報を、日常生活の多くのポイントに共有していくライフスタイルの形成が、市場を成長させていくと考えられています。

市場をデバイスの様式別に見ると、アップルウォッチなどのリスト型が全体収益の49.45%以上を占め、2022年における最大シェアを持っています。
成長市場としては、ヘッドウェア型ゴーグル型が注目されています。
マルチメディアやヘルスケア産業におけるVR や ARに対応したヘッドセットの導入の増加や、データ駆動型の洞察力と追跡技術を搭載したスマートキャップの人気が高まっており、世界中の大企業が参入しています。

市場を地域別に見ると、全体の33.8%を北米地域が占めており、アジア太平洋地域とヨーロッパ地域が続いていきます。特に、予防治療や病気の管理など、ヘルスケアの側面を目的として北米地域では普及しており、既にアメリカ人の30%がウェアラブルデバイスを用いたヘルスケアを行っていると報告されています。
2030年までの成長市場としては、アジア太平洋地域が最も高い成長率を予測されています。
(参考記事:GVR Report coverWearable Technology Market Size, Share & Trends Report
Wearable Technology Market Size, Share & Trends Analysis Report By Product

ウェアラブルデバイスの現在

国内外で多くのスタートアップが急増中

世界中の大企業やスタートアップは、多様な事業領域においてウェアラブルデバイス開発に取り組んでいます。

ウェアラブルデバイスは単なるデジタルデバイスの代替手段だけでなく、より有用なデータの測定手段と考えられています。
例えば、睡眠中の変化の検知を行うことで、睡眠障害や精神疾患などを特定する「ACCEL」を開発するACCELStarsなど、従来の医療手法では定量化が難しかった症状において、日常的に取得されたデータによる定量的な測定が可能となります。このようなウェアラブルデバイス(ACCEL)で取得したデータの医学的応用は、研究報告や臨床試験の報告が近年増加傾向にあります。

また、スポーツ領域において、WHOOPが提供するスマートリストバンドの「WHOOP Strap」は、心拍変動、安静時の心拍数、睡眠、呼吸数の4つの生理学的指標を24時間読み取り、身体の疲労度合いや、適切な睡眠量を科学的にユーザーへ提案します。

他には、教育現場や専門人材の育成においても使用されています。Holoeyesが提供する医療用画像処理ソフトウェア「Holoeyes MD」は、CTやMRIで撮った画像を最短10分で3Dモデル化することが可能です。VRヘッドセットを装着することで、臓器など術野の立体データが空間で手に取るように映し出され、手術前の会議やトレーニングが実施できます。

その他にも、飼い猫の健康の追跡に特化したペット領域の「Catlog」や、文章を指でなぞる動きに合わせて文章を音声で読み上げてくれる「FingerReader」など、幅広い領域でサービスがローンチされています。

これらの事例だけでなく、あらゆるデバイス様式の開発が進められています。ご興味ある方は、下記のウェアラブルデバイスの事例まとめをご覧ください。


自治体において、ウェアラブルを用いた実証実験が本格化

自治体が企業や大学と連携して地域の健康管理や未知病の予防を目的とした実証実験が始まっています。静岡県の掛川市では、数十名の高齢者を対象に、装着したスマートウォッチによる日常の運動量や、家庭に設置したセンサーから生活データを集計し、生活状況や健康状態を分析する取り組みが行われました。

企業と病院が連携し、ウェアラブルデバイスを用いて、地域の高齢者や病院スタッフの健康管理を行う事例もあります。

また、大企業においても、スマートウォッチから社員の健康状態を検知する取り組みが始まっています。


■ウェアラブルデバイスを開発する上場企業

上場企業においても、さまざまなウェアラブルデバイス開発が行われています。ここでは、4社取り挙げていきたいと思います。

①株式会社ジンズホールディングス

時価総額:823億7100万円(*2023年8月18日現在)
事業概要:まばたきや頭の傾きなどの検知機能を搭載した眼鏡型ウェアラブルデバイス「JINS MEME」の開発を行う。装着時における「目の瞬き」「視線移動」「体の姿勢」をデータとして読み取り、集中力の可視化を実現する。

(出典:https://jinsholdings.com/jp/ja/)

②CYBERDYNE株式会社

時価総額:376億6,000万円(*2023年8月18日現在)
事業概要:身体機能の改善・補助・拡張が可能な世界初の装着型サイボーグ「HAL®」の開発を行う。装着者の「生体電位信号」を皮膚に貼ったセンサーで検出し、意思に従った動作を実現する。HALには複数の種類があり、目的に応じて選ぶことができる。

(出典:https://www.cyberdyne.jp/)

③QDレーザー株式会社

時価総額:288億2,300万円(*2023年8月18日現在)
事業概要:眼球の中の網膜に映像を投影するディスプレイ「RETISSA」の開発を行う。眼鏡型のフレームに内蔵された超小型プロジェクタから、安全で微弱なレーザーで網膜に直接映像を投影し、映像を見ることを実現する。矯正や手術を必要としないロービジョン者の視覚の補助を可能としている。

(出典:https://www.qdlaser.com/)

④サン電子株式会社

時価総額:288億2,300万円(*2023年8月18日現在)
事業概要:産業現場のARを用いた遠隔作業支援型スマートグラス「AceReal」の開発を行う。離れた場所にいる支援者に映像と音声で現場状況を共有することで、現場にいながら支援者との情報共有を実現する。複数タイプの形があり、さまざまな業務用途に合わせた選択が可能である。

(出典:https://www.sun-denshi.co.jp/)


■ウェアラブルデバイスを開発するスタートアップ *非上場

スタートアップ(非上場企業)においても、さまざまなウェアラブルデバイス開発が行われています。ここでは、4社取り挙げていきたいと思います。

①株式会社クォンタムオペレーション

創業:2017年
調達後評価額(潜在株を含む):101億5500万円(*INITIAL:2021/12/03時点
事業概要:医療・介護業界向けIoTセンサーの開発・製造・販売を行う。枕下敷設シートセンサー「ネムリエ」による睡眠時の動きの継続モニタリングや、リング型パルスオキシメーター「バインスタ」による動脈血中の酸素飽和度を取得している。また、血糖計測の際の負担を軽減する非侵襲的リスト型の血糖センサーを開発している。
株主:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 / 大正製薬株式会社 / アルフレッサ株式会社 / 富田薬品株式会社 / 株式会社sweemie

(出典:https://quantum-op.co.jp)

②Fairy Devices株式会社

創業:2007年
調達後評価額(潜在株を含まない):211億1000万円(*INITIAL:2023/03/30時点
事業概要:音声による作業現場DXデバイスの開発を行う。ウェアラブルカメラ「LINKLET」による一人称視点での遠隔支援や、「Connected Worker Solution」による現場作業のリアルタイム遠隔支援と熟練工スキルのデジタル化による技能の伝承を行っている。
株主:ダイキン工業株式会社 / ヤンマーベンチャーズ株式会社 / NTTテクノクロス株式会社 / グローバル・ブレイン株式会社 / 横浜キャピタル株式会社

(出典:https://fairydevices.jp/)

③株式会社SOXAI

創業:2016年
調達後評価額(潜在株を含む):5億1200万円(*INITIAL:2021/11/05時点
事業概要:健康データを正確に取得・分析可能な日本発のコンディション管理用スマートリング「SOXAI RING」の開発を行う。装着したリング型のデバイスから、心拍数、心拍変動、血中酸素レベル、体表面温度、活動量等のバイタルデータを測定し、独自のアルゴリズムで健康状態の解析を行っている。
株主:大正製薬株式会社 / りそなキャピタル株式会社 / スパークス・AI&テクノロジーズ・インベストメント株式会社 / 合同会社テックアクセルベンチャーズ

(出典:https://soxai.co.jp/)

④株式会社ラングレス

創業:2015年
調達後評価額(潜在株を含む):6億5300万円(*INITIAL:2021/11/19時点
事業概要:拍変動解析から、愛犬の状態を可視化するウェアラブルデバイス「inupathy(イヌパシー)」の開発を行う。また、自律神経解析による生体情報解析の開発技術を生かしたプロダクト・データ解析事業を展開し、世界中の研究へのデータ提供や、他種動物向けのコミュニケーションデバイスの開発を行う。
株主:Mistletoe JAPAN合同会社 / 合同会社リアルテックジャパン / 株式会社ABBALab

(出典:https://www.inupathy.com/)

■創業まもないウェアラブルサービス企業(創業5年以内)

①株式会社enstem

創業:2019年
調達後評価額(潜在株を含む):7億円(*INITIAL:2023/07/07時点
事業概要:専用スマートウォッチで得た生体データ・主観データを分析し、コンディションを数値化する個人向けコンディショニングアプリ「Nobi」の開発。「Nobi for Team」や「Nobi for Driver」といった複数種類のアプリケーションの提供により、生体データに基づいたチームのパフォーマンス及びコンディションの向上支援や、眠気や健康起因による事故リスクの軽減を目指している。
株主:インクルージョン・ジャパン株式会社

(出典:https://www.en-stem.com/)

②株式会社Ashirase

創業:2021年
調達後評価額(潜在株を含む):8億1800万円(*INITIAL:2022/09/15時点
事業概要:視覚障がい者向け歩行ナビゲーションシステム「あしらせ」を開発。スマートフォンアプリによる音声入力や案内および、靴につける振動インターフェースで構成されており、「安全に歩く」と「迷わず歩く」の両立をサポートしている。
株主:レオス・キャピタルパートナーズ株式会社 / QBパートナーズ有限責任事業組合 / 本田技研工業株式会社 / アシックス・ベンチャーズ株式会社 / 株式会社ゼネラルアサヒ
(出典:https://www.ashirase.com/ )

(出典:https://www.ashirase.com/ )

③株式会社sci-bone

創業:2022年
調達後評価額(潜在株を含む):1億円(*INITIAL:2023/03/17時点
事業概要:タイムの向上を目指すすべてのランナーの生活をサポートするサービス「Sci-move」を開発。首元にデバイスを装着しデータを計測、独自の解析AIによってランナーの皆さまが欲しい情報を提供。スポーツ、日常生活、業務中の動作など、動作計測・解析をオーダーメイドで行うサービスも行う。
株主:不明

(出典:https://sci-bone.com/)

④株式会社ABEL

創業:2021年
調達後評価額(潜在株を含む):1億円(*INITIAL:2022/01/21時点)
事業概要:競争馬に装着するIoTデバイス「EQUTUM」を開発。経験と感覚で行われる競走馬のトレーニングをデータで分析可能にし、より確実な意思決定をサポート。
株主:不明

(出典:https://www.abel-inc.com/)

■海外のウェアラブルデバイススタートアップ

①kegg Inc(アメリカ) 

創業:2017年
総調達額:$4.5M(約6億5,614万円)(*Crunchbase:2023年8月時点
本社:アメリカ
事業概要:自分の妊娠可能な時期を把握できる「kegg Fertility Tracker」の開発を行う。身の子宮頸管粘液(おりもの)をデバイスで分析後、検査結果をスマートフォンのアプリで確認でき、月経周期をグラフで確認や、メモを記録できる。現在は、更年期や産後の症状や性感染症の分野におけるサービスを新規開発中。

(出典:https://kegg.tech/)

②Cognixion(アメリカ) 

創業:2014年
総調達額:$14.8M(約21億5,798万円)(*Crunchbase:2023年8月時点
本社:アメリカ
事業概要:利用者が体を動かさなくてもコミュニケーションできる「Cognixion One」を提供。言語障がい者を持つ人でも、ARデバイスの画面に映し出されるボタンを頭で操作することで、入力した文字を音声アシスタントが思いどおりに読み上げが行われる。目や顔の表情を使って会話をサポートする「Sparkprose」の提供も開始。

(出典:https://www.cognixion.com/)

③Noisy Guts(オーストラリア)

創業:2019年
総調達額:$1M(約1億4,581万円)(*Crunchbase:2023年8月時点
本社:オーストラリア
事業概要:過敏性腸症候の早期の診断を実現するリスト型の本音響ベルトの開発。経時的に腸の騒音、心拍数、皮膚温度、皮膚電気反応といったデータと組み合わせ、非侵襲的に過敏性腸症候群の診断と治療法の提案を実現。

(出典:https://www.noisyguts.com/about )

株式投資型クラウドファンディングで調達したウェアラブルデバイス関連スタートアップ

①Fisherwallace

総調達額:$8.3M(約12億1,022万円)(*Crunchbase:2023年8月時点
本社:アメリカ
事業概要:セロトニンの生成を助けるパルス電流を流すヘッド型の非侵襲性デバイスを開発。うつ病や不眠症などの精神疾患者の緩和ケアを行うことが可能。株式投資型クラウドファンディングプラットフォームであるStartengineにて、2020年に$1M(約1億4,560万円)を1回目の調達、2023年に$2.8M(約4億800万円)を2回目に調達した。
(出典:https://www.fisherwallace.com/)

(出典:https://www.fisherwallace.com/)

②Sensate 

創業:2015年
総調達額:$4.3M(約6億2,698万円)(*Crunchbase:2023年8月時点
本社:イギリス
事業概要:10分の利用で、深いリラクゼーションを提供する「Sensate」を提供。中枢神経系をターゲットした、超音波療法により、ストレス軽減を行う。使用方法は、横になってデバイスを胸に置き、ヘッドホンを装着し、10分間使用する。2023年に、株式投資型クラウドファンディングプラットフォームであるWefunderにおいて、シードラウンドの一部として、$2.6M(約3億7,910万円)を調達した。

(出典:https://www.getsensate.com/)


■まとめ

ウェアラブルデバイスの開発に取り組む企業数は、スマートフォンの普及や、5Gの登場によって、2015年以降に多様な領域の中で急速に増え始めました。対象とされる事業領域は幅広く、そのデバイス形状も、目的に応じて多様な種類が開発されています。

今後のウェアラブルデバイス市場の特徴は、単なる個人の生体データの収集や利便性の高いデバイスにとどまらず、取得データの共有や利便性の高さを生かし、予防治療やスキルアップなどへ応用していくことで、新しいライフスタイルを形成しようとしている点です。
医療承認されたデバイスも現れはじめ、必需品としてライフスタイルの一部へと浸透して行く可能性が大きいと考えられます。

10年後には、あらゆるウェアラブルデバイスを使い分けた生活が当たり前になっている世界があるかもしれません。
そんなウェアラブルデバイス領域の成長に目が離せません!

イークラウドでウェアラブルデバイスに関連する業界のスタートアップも積極的に資金調達のサポートをしています。


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