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決めるのは起業家自身、だからこそ誠実に向き合い続ける。サイバーエージェント・キャピタル北尾崇|投資家の素顔 #03

スタートアップ起業家の誰もが通る、資金調達。

起業家には個性的な方が多いですが、ベンチャーキャピタリストもまた、いろいろな経験を経ており、その知見や個性を生かして起業家を支援している方が多数いらっしゃいます。

この記事では、ベンチャーキャピタリスト個人に着目して素顔を明らかにしていきます。パートナー選びに困っている全ての起業家が、この記事を通して会いたいと感じるキャピタリストを見つける一助になれば幸いです。

第三回は、株式会社サイバーエージェント・キャピタル(以下、CAC)北尾崇さんにお話を伺います。イークラウド波多江もCAC出身者であり、北尾さんとは元同僚という関係です。肩肘を張らない関係で、北尾さんのキャピタリストという仕事や起業に対する考えを伺うことができました。

◆北尾 崇
2013年中南米メキシコにて、ENVROY MENIKAを創業し、代表取締役に就任。約3年間Clean Technology関連プロダクトの輸出・販売事業と、日本企業のメキシコ進出支援事業を手掛ける。2016年1月現場を離れ日本に帰国後、同年4月サイバーエージェント・キャピタルに入社。シード・アーリー期の資金調達ピッチイベント「Monthly Pitch」の運営責任者。大阪大学経済学部卒。

学生時代、直感と勢いに任せてスタートしたメキシコでの起業

波多江:
まず、珍しいキャリアだと思うのですが、メキシコで起業されていた時の話をお伺いできますか?

北尾:
大阪大学2年生の頃くらいから、起業したいなって思いがあった中で、海外のビジネスコンテストに参加しました。アメリカに滞在してメキシコで本番のコンテストをやるというものだったんですが、そこで優勝したのがきっかけでした。

直感的に縁もゆかりもないメキシコでやるかという、完全に勢いに任せた感じでしたね。(笑)

3年生で休学して秋にメキシコに渡って創業して、3年ちょっとの間メキシコで事業をやってました。

創業資金については、投資とか銀行の融資とかそういうのは全く受けなくて、当時はVCも全く頭になかったです。なので、知り合い経営者から数百万借りてスタートしました。

最終的に、その事業自体は引き続きやり続けたいっていうメキシコ人のメンバーにそのまま譲り渡しました。

結局、そのコンテストで実際に参加されてる中から起業・創業に至ったのは後にも先にも自分だけでして。結果的になんかクレイジー(な奴)だったなみたいな感じになってるんですけど、凄くいい経験させて頂いた感じですね。

メキシコでの起業仲間と

起業家から一転、帰国後ベンチャーキャピタルでのインターンをスタート

波多江:
サイバーエージェント・ベンチャーズ(以下、CAV / 現:CAC)は、最初インターンでしたっけ?

北尾:
そうです。日本に帰って来てもう一回起業しようと思ってたんですけど、アイデアが決まってなくて。

当時サイバーエージェント内定者かつインターンしてた田中優祐さん(RestUp,Inc.)に、どうすんの次?みたいな感じに言われて。

決まってないって言ったら、ちょうどうちでインターン探してるからよかったらどう?って声をかけていただいて、それが最初ですね。俺アメリカ行くからって感じで、後任みたいなことですかね。

投資家って言われても全然ピンとこなくて、そういう仕事があるんだくらいに思ってました。

ただ、CAVってシード期のVCなので、アイデア持ってる人を創業期から支援していくんだよみたいな話を聞いて、結構面白そうだし、好きかもみたいなのは初感ではありましたかね。

決めるのも実行するのも最後は起業家本人、経験者だから寄り添えた

波多江:
実際今は投資の道を選ばれてると思うんですけど、当時の起業経験はどう活きてますか?

北尾:
やっぱり自分が(起業)やってた分、こういう事をされると嬉しいとかされたら嫌だみたいなものが、感覚ベースでは当時からありました。

その感覚に従いながら起業家と接点を持たせて頂いてた感じで、そこはずっと今も意識してます。

例えば、最後決めたりやったりするのは起業家なので、僕の経験に基づくアドバイスが正しいからこうしろみたいな事は絶対しないでおこうと。

自分はこういう風に思うという事は伝えるんですけど、その起業家の意見を尊重するというところは絶対にぶらさないですね。

起業家は、大きなチャレンジを短い時間軸でしようとしている

波多江:
北尾さんの当時の起業スタイルだとVC投資家がいた形ではないと思いますが、それでもそういう風に起業家との向き合い方を強く意識されてるのはどういった経験からですか?

北尾:
それで言うと、同い年ぐらいの日本でやってる起業家とも結構すぐ仲良くなったんですね。例えばCAVの投資先ですけどBECの高谷さんとかライボの小谷さんとか。喋ってるとなんか僕が思ってやってた事とあんまり変わらないなと思えて。

お金の手段は違ってましたけど、僕もそういう選択肢をもし知ってたら多分取ってただろうし。

とにかく、大きなチャレンジを短い時間軸でしようとしている。そういう意味でシンクロしてったって感じです。

起業家の仲間と親交が深まる中で、彼らの考え方を知ることができて、それが自分の起業経験やその時の価値観ともリンクしたことで、起業家との向き合い方についてより具体的に、強く意識できたんだと思います。

12月、真っ暗な寒空の下、出会った起業家とその事業に武者震いした

波多江:
北尾さんにとっての一番最初の投資は?

北尾:
1社目はPOLでした。僕にとって、すごく印象的かつ象徴的な案件です。

◆株式会社POL
研究内容をもとに優秀な理系学生をスカウトできる新卒採用サービス「LabBase(ラボベース)」の提供、優秀な理系学生に自社をPRできるオンライン採用イベント「LabBase Now」の展開を行う。

2016年12月に加茂さんのプレスリリースを見て。

加茂さんとの出会いは実は2015年4月。当時CAVでインターンをしてた時にイベント主催していて、その時に加茂さんが来てくれて。

出会いのきっかけになったMonthly Pitch

改めてすぐにご連絡して。そこで一度、一番最初のオフィスだった京橋のマンションのワンルームみたいなところにお邪魔させて頂いて。

その時の事、すごい覚えてるんですけど、17時くらいにミーティングが終わったら12月なので外が真っ暗で。寒さと同時に良い事業と起業家に会えたことに武者震いみたいなのが止まらなくて。

ただ、難しかったのは、当時POLはめちゃめちゃ投資家が殺到していて、加茂さんからすると全然CAVさんじゃなくても良いですみたいな感じだったので、あっ、これはやばいなみたいな感覚でしたね。

当時のCAVにいらっしゃった、波多江さん(本インタビュー聞き手)、竹川さん(CAC、シニア・ヴァイス・プレジデント)にも白川さん(現:mint/Apricot Ventures、ジェネラル・パートナー)にも、取りに行かないとまずいんじゃない?みたいな事を言ってもらったことにも背中押されて、改めて加茂さんと話をさせてもらう中で気づいたことがあって。

POLのファイナンスの資料。今の状態だと、うちの投資委員会に呼んでプレゼンしてもらっても通らない可能性あるなと思って。

ブラッシュアップする必要を感じて、一緒に夜中まで資料作りとかさせてもらってたんです。それが当時、POLのSlack内で北尾さんが作ってくれた資料がめちゃめちゃ良いみたいな事で結構騒いでくれたみたいで。

そんな事もあって、CAVって結構良いかもねみたいな事を言ってくださって、正式には2017年4月に投資に至ったという感じでした。

波多江:
なるほど。ただ、他の投資家が殺到してたなら、資料のブラッシュアップとかいらないです、みたいな風になりそうな感じもしますが違ったんですか?

北尾:
POL側もマーケットとか規模感のリサーチがちゃんと出来てないっていうのは感じてたみたいで。その後に控えてるVCのお偉い方々とかに向けた資料を作りたかったっていうのが、加茂さんにもあったんじゃないかと。

それを言ったら、いやそれちょっと是非一緒に手伝って欲しいですみたいな感じで進んだんです。

自分的には、意見は尊重しつつ話の流れで必要性に気づいてもらえたらなという感じでした。(最終的に手伝って欲しいと言ってくれて)すごくありがたかったです。

会社も人も成長する、見違えるように変わった起業家を見て自分もまた一つ成長した

波多江:
影響を受けたキャピタリストもしくは経営者、起業家の方は?

北尾:
そうですね。起業家については、主に投資先から学ばせて頂いてます。加茂さんとかタイミー小川さんが僕的には結構大きかったですね。

◆株式会社タイミー
働きたい時間と働いてほしい時間をマッチングするスキマバイトサービス「タイミー」、地方での仕事や生活を体験したい人と、人手やスキルが欲しい地方の事業者をマッチングする「タイミートラベル」を展開。

会社って、人って成長するんだっていう部分ですごい学ばさせてもらいました。

加茂さんは、投資する約2年前から接点を持っていまして、小川さんも実は一番最初に会ったのは投資した2018年8月より1年以上前なんですけど。

2017年1月ぐらいにスタイラーの小関さんから、ファッション系ビジネスをやろうとしてる立教の学生がいるんだけど、リクルートでインターンとかしててちょっと優秀そうだから北尾会ってみない?みたいな流れで、お会いしたのが最初でした。

タイミーに投資する時、こういうモデルに変えて今度リリースするんですけど、すごい面白いと思うんですけどって言われた時に、めちゃめちゃ良いなと思って。

しかも小川さんめっちゃ雰囲気変わったなと思ったのがあって。人って変わるなっていうところを凄い学ばせてもらいました。

僕は1990年生まれで、なので4つ差と7つ差って感じなんですが、

僕が起業してたのが結局21歳とかの時だったので、加茂さんとか小川さんの創業の年に近かったって考えると、当時の自分の起業の経験はやっぱりすごく良かったなって思ってます。

この年齢でこういう感じの事考えるって事は、絶対この人たち志高いなとか辞めないな、折れないなみたいなものを感じる事ができたっていう。

起業家の思いを尊重する、思いの数だけ支援の方法がある

波多江:
起業家の方との関わり方って、投資前後で違いはありますか?

北尾:
(違いはあまりなく、)投資前の段階から一貫してですかね。

とにかく人を見るようにしていますし、人によって支援の仕方を変えるようにしています。逆に絶対これはやりますって決めてる事は、あえてないように心がけているつもりですね。

投資したら多分こういうところが弱いからこういう支援をすべきだなっていう風に考えて接しているんですが、一貫して共通してるのは冒頭に申し上げた、絶対起業家が最後は決めるべきということだったり、最後は起業家を尊重すべきっていうところだけは常に大事にしています。

同時に、投資前からアドバイスに対する素直さや柔軟さみたいなものは見てます。

我が道を突き進むタイプと、ちゃんと周囲の声聞きつつ微妙に修正できるタイプと。結構自分が支援したいなとか合うなと思うタイプは後者の方で、そこの素直さ柔軟さみたいなものは見ながら接させて頂いてるって感じですね。

長きに渡って必要とされながら、足元に強力なペインがあるビジネスか

波多江:
最近、テーマ的に共通するものとか、どんな未来を北尾さんが実現したいと思ってるかとか聞かせてもらえますか?

北尾:
投資をする時のマーケットとか事業ドメインとかは、長い目で見た時に世の中に絶対必要になりそうなものかどうかをすごく意識してます。

例えば人口減少とかですね。

ギグワークとかクラウドソーシングとかシェアリングエコノミーとか、外国人活用、地方活性化みたいなテーマのところが多かったりしますね。

あとは、世界から見た時の日本はアカデミックとか研究は強いけどビジネスは弱いとか、そう言った文脈も。それこそ、POLにすごく共感した理由の一個なんですが。

ずっと長い目で見た時に日本の素晴らしいものは、数十年かけて築かれたと思ってるので、そこをもっと応援するものっていうのは、長く、ニーズがあるだろうなと思ってます。

今で言うと、ESG領域のものは、もっとやるべきだなと思ってます。

一方で、ネット系のビジネスとして、一定の時間で仕上げたいという思いもあります。そういう意味で、ビジネスそのものに時間がかかるかどうかは確かに見てます。

長きに渡って応援されるトレンドであると同時に、足元ではすごく強力なペインがある事業が結構好きだったりします。

起業家ファースト、長い投資経験と国内外チームによる強力なサポート体制が魅力のCAC

波多江:
CACとしては、投資領域や特徴は?

北尾:
インターネット領域であればなんでも投資対象という風に思ってます。シードアーリーのタイミングで主にリードインベスターとしてご出資するという感じが多いですね。

実績で言うと130社ほど、海外も入れますと170社近くの投資実績があります。その中には、象徴的なIPOやM&Aも沢山あります。グループとしては2000年前半から投資をしていて、長きに渡ってずっと投資活動してるというところは特徴かなと思います。

強みとしては、シードアーリーにおいて起業家ファーストでありながらもしっかり支援をすること。

最近、支援チームというものを作りまして、開発部隊だったりHR、広報、PRといった専門の支援チームを作りました。

あとはやっぱりグローバルですかね。アメリカ・中国・東南アジアという海外ネットワークがあり、ローカルに人を置いて投資させて頂いてます。情報交換とかを活発にやったりする事で日本の起業家にもグローバルの情報を提供したり、海外に出る時に支援をさせて頂いたり人を繋いだりっていう事ができます。

◆株式会社サイバーエージェント・キャピタル
「Change the World, From Asia」のビジョンを掲げ、7カ国9拠点の”グローバルネットワーク”で海外展開もサポート。過去実績としては、日本ではクラウドワークスやスペースマーケット、ビザスク、kaizen platform、Retty。海外拠点では、インドネシアのTokopedia、中国のFangduoduo、ベトナムのTiki、Clever ad、韓国のKakao Corpなど。現在も、note、hey、タイミー、ソーシャルインテリアなど有望な投資先が成長を遂げている。

シェアリングエコノミー。C向けかつみんなで担ぐ必要のあるものは株式投資型クラウドファンディングと相性◎

波多江:
弊社事業である株式投資型クラウドファンディング(以下、株式投資型CF)について伺わせてください。今までCACの案件で株式投資型CFを実施した会社はありますか?

北尾:
まだないですが、相性が良いと思ってるところは、やっぱりシェアリングエコノミーみたいなC向けで且つみんなが担ぐ必要があるサービスは、もう二重で相性が良いなと思ってます。

これまで、シード投資家としては株式投資型CFを使った後に次のファイナンスがしづらいなどの懸念があったんですが、最近の事例を見るとその辺の印象はかなり変わってきたように感じます。

波多江さんが多分言ってたんですけど、一回会社として株式投資型CF使った後に入れると、そこのイメージが払拭されて、株式投資型CFいいよねみたいな感じになるので。今はそれが結構広がってる感じはしますよね。

波多江:
そうですね、ちょっと前で言うと信託型ストックオプションとかも最初は懸念あったけど、何社かそれで上場してから、現在は普及期に入ってきているように感じます。

今後もっと、そういう風に広げていきたいなと思います。ありがとうございます。

とにかくアクション、常に変化できる起業家と絶えず会っていきたい

波多江:
最後に、起業家へのメッセージを頂ければと思います!

北尾:
起業家も人も事業も常に変化すべき、して行くものだと思ってます。その中でまず信じる事ができるのは僕たちは、人物そのものかなと思ってます。

その人の成長・吸収力みたいなものに期待をしているので、絶えず接点を持ち続けたいとも思っています。色んな接点を持たせて頂く中で、ご縁があればご出資・支援させて頂きたいです。是非アクティブに色んな機会で接点を取りに行って欲しいです。

Twitterでも良いですし。Facebookとかで共通の友人がいらっしゃれば、その方経由でも。いずれにしてもSNSをよく見てるので、何度でも連絡いただけたら嬉しいです。

波多江:
北尾さんに壁打ちしながら柔軟に変化していきたいという方は積極的にご連絡するとお互いにとって良いマッチングになるかもしれないですね。

北尾さん、ありがとうございました!


▶︎北尾さんに相談したい方はTwitterから連絡!

▶︎CAC主催ピッチイベント⇒Monthly Pitch

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