関東街歩き写真録―〇〇で何が見えるか― #1 銚子・犬吠編
文責:Belfastは19街区のなか。
東京から特急で2時間ほどにある関東地方最東端の都市・銚子。太平洋側に大きく突き出たその陸地は、関東にありながら華美な植生や険しい地形を我々に見せてくれます。ここで出会った自然の雄姿たちを、動画にする場もないので、皆さんに紹介していこうと思います。なお撮影日は、2019年10月・2020年9月になります。どちらも夏日でした。
犬吠埼にて
在り来りではありますが、やはり私が好きなのは犬吠埼から長崎町までに至る海岸地形です。犬吠と言えば日本の名灯台にも選ばれる犬吠埼灯台。
スペクトラムブルーに馴染むのか反発しているのか、どちらかわからないそのホワイトカラーは、視認性を良くするために塗られたことは確かです。また観光客は灯火の踊場まで上ることが可能です。
鉄骨が剥き出しの踊場。海面から51mしかありませんが、風当たりが強く、地球が丸いことなどどうでも良くなるくらい立ち竦みます。目下には岩礁に打ち上がった水しぶきが。人間は代々、この天然の白を描くのに苦労してきたのでしょうね。
君ヶ浜側から見た岬です。ウルトラマリンを水で溶かしたような空が眩しいです。岬に這いつくばった風衝草原は高山性のそれとは違い亜熱帯植物が混じり、夏期には暖色が色づいてくれます。
しかしこんな観光地なのになのか、だからこそなのか、大学生が安心して入れるカフェはあるもので。やはり現実の「非日常」から逃避したがる自身の内なる「日常」は、こんな関東の果てでも出てくるものなのだなと。ということで銚子港は有名な漁港でありながら、魚介には目もくれずホットドッグを食べました。
犬吠埼から
岬から眩しい方角を見てみると、眼下には岩石海岸に衝突するターコイズグリーンを見ました。この色の海は珊瑚礁地形の特権だと、高校生のときまでは思ってたんですけど、そうじゃないんですね。
石畳まで下りると、巨石に当たりそのまま砕け散る波のダイナミクスを感じることができます。輝く破片は舞い上がり、私は目線を上げていました。
犬吠埼から県道で南へ下ると、左手には酉明浦に面する砂浜海岸が見えてきます。いつも真夏から時期をずらして来訪するのですが、そのために人けの無い海岸を、靴一足の足跡を付けて浅海に向かいます。そこでふと、生き物が使わない砂浜海岸すらも、なぜ生き物が使いやすい形にわざわざ堆積してくれたのだろうか、そんなことを考えていました。
長崎町へ
更に南下すると、宝満の岩場や長崎鼻という岬が見えてきます。
まるで世界の終端に来た気がしてなりません。足元は歓迎されておらず、申し訳程度の緑、散らかった流木、そして自然の脅威に晒されるなか見張りを頼まれた照射灯と、そのために引かれた電線、そのどれもが終末であることを告げています。更に奥へ奥へ広がるのは母なる者か、恐怖に貶める者か、外洋が途方もなく続いています。人間は自身を超越するものを見ると思考を止めてしまうのでしょうか、私もそのひとりでした。
最後に
銚子は景観だけでなく、地形学や地質学、植生学、海洋学、位置天文学などの学問から見れば宝の山のような存在ではないでしょうか。そのような魅力をまた別の機会に発信できたらと思います。ぜひ美しい風景を見に足を運んでみてください。