Neil Young & Crazy Horse の "Powderfinger"(79WPM)=英語教材のお話(その64)=

Neil Young & Crazy Horse の "Powderfinger"

 Neil Young は、あの声が嫌だという人も少なくありませんが、高校生のときより長年聞いているアーティストです。今回取り上げる "Powderfinger" が収録されている "Rust Never Sleeps" (1979)は、"It's better to burn out than to fade away"という歌詞でも知られる、数あるニール・ヤングとクレイジー・ホースのアルバムの中でも名盤中の名盤です。
 先日ワイタンギ・デーについて書いたので、"Powderfinger" を取り上げますが、"Powderfinger" はマオリ土地戦争(The New Zealand Wars)を歌っているわけではありません。ただし、とりわけマスケット銃を彷彿とさせ、イメージは重なっています。

とりあえず訳してみると

気をつけな、ママ、川を上ってくる白い船が見える
大きな赤いビーコンをつけて、旗を掲げ、手すりに男がもたれてる
ジョンを呼んだほうがいいんじゃないか
てのは、奴らが配達しに来たようには見えないから、手紙を
もうそこまで1マイルも離れてない距離のとこ
奴らが長居するつもりじゃなきゃいいけど
船の側面には番号が書いてあって、銃を積んでる
そいつが大きな波を立ててやって来るんだ

父さんはいないし、兄弟は山へ狩りに出てる
エミー・ルーが川に取られてからというもの、ビッグ・ジョンは酒びたり
だから決定権をもつ長老たちが、ここで俺に思案させることにしたというわけ
俺は22になったばかり
何をなすべきかずっと考えてた
でも連中が近づけば近づくほど、どうすべきかわからない不安な気持ちが強くなっていった

父さんのライフルを手にすると安心したんだ
父さんは言ってた、「息子よ、赤を見たら逃げろ。数字や番号に意味はない」
でも最初の弾丸が桟橋に当たったとき、戦闘が始まるとわかった
俺はライフルの狙いを定めた
なぜこうなるのか、考える暇なんてなかった
すると、眼の前が真っ暗になり、俺の顔は空に弾け飛んだ

銃の火薬と引き金から俺を守ってくれ
引き金を引く覚悟でもって、俺を被ってくれ
俺がこんなに若くしてこの世から消えていくなんて
誰も想像してなかったろう
やり残していることもたくさんあるのに
俺の恋人によろしく伝えてくれ
彼女を恋しく思うのはわかっているから

リョウさん拙訳

少しだけ歌詞を解説すると

 beaconは、「のろし」「信号灯」のこと。
 white boatは、文字通り、「白い船」だが、「白人の船」をイメージしていると思われる。
 it don't look は、it doesn't look となるところ。 
 mailは、「郵便」「手紙」ということ。少しユーモアをきかせている印象がある。
 numbers on the sideは、船の「認識番号」のこと。
 the powers-that-beは、一般に体制側の「権力」「権力者」のことを言うことが多いが、ここでは、この若者の所属している「決定権を持つ上層部」のこと。
reassureは、「安心させる」という動詞でreassuringは、形容詞。
 "Red means run, son, numbers add up nothing"は、息子への父親からの教訓で、おそらく赤は危険を意味するため、「危険だったら逃げろ」ということ。numbers が何を指すか明確でないが、おそらく戦力などの数字を合わせて理屈を考えても無駄だというような教訓と思われる。
 But when the first shot hit the dock, I saw it comin'のI saw it comin'のitは、いわゆる状況のit で、この場合は、戦闘や銃撃戦を指します。
 the powder and the fingerは、「(銃の)火薬と引き金を引く指」ということ。
 Cover me with the thought that pulled the triggerは、「引き金を引く考え(決意)で俺をおおってくれ(守ってくれ)」ということ。

"Powderfinger"は79WPM

 全部で218語。166秒で、79WPM。

つまらないと思った人は別の教材を探しましょう

 "Powderfinger"は、物語性のある歌ですね。
 この歌は、白い船(White Boat)や銃を持った侵略者の到来を描いていて、ネイティブ・アメリカンか、南北戦争時の南部人か、白人による支配・征服される側の話のように聞こえます。ただ、明確に歴史的事実を語っているというわけではなく、圧倒的な暴力に若者が巻き込まれる瞬間を描いているように聞こえます。でも、つまらないと思えば、あなた向きではありません。そんな教材は捨てて、自分にあった教材を選びましょう。
 


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