イメージもわかない、何と発音してよいかわからない英語の名前がたくさんある=英語にまつわるお話(その3)=
英語のファミリーネームから引き出せる情報とは何か、知りたかった、かけだし英語教師のころ
すでに昔の話だが、私大付属高で、かけだし英語教師になった頃、映画で英語を勉強していて、数多くの映画のタイトルロールやエンドロールを見るたびに、スクリーンに流れる俳優の英語名を「速読」できないことに情けない思いを繰り返していた。
さらに、その英語名から、イギリス系・フランス系・ドイツ系・イタリア系等々のイメージがつかめないことや、イギリス系といっても、スコットランド系・アイルランド系・ウェールズ系などの違いを少しでも知りたいと思い、新宿は紀伊国屋書店で、 "The Penguin Dictionary of Surnames" なる本を買い求めたことがある。2428円だった。この本の初版年度は1967年だが、私のもっている版は1978年版のものだった。1980年代初頭のころのことだと思う。
英語のファミリーネームは、個人名や場所・あだ名・職業に関連して発展してきた
英語を勉強した人ならば、Johnson とくれば、「John の息子」くらいのイメージはもてるだろう。
Hill (丘)という名前がどこから来たか、想像もつくだろう。
Taylor(仕立屋), Miller(粉屋), Smith(鍛冶屋), Baker(パン屋)とくれば、中学校の英語の教科書のひとつのレッスンくらいにはなるだろう。
Armstrong (強い腕)とくれば、どんな特徴をもつ人から発生したファミリーネームか、わかるだろう。
本書は、英語のファミリーネーム(ラーストネーム)を、first name(名) / local name(地名)/ nickname (あだ名)/ occupational name(職業名) の4つに大別している。それをFLNOという略字にして使っているほどだが、これでは少し大雑把すぎるかもしれない。「ファーストネーム」といっても、母親や父親、ローカル名といっても自然環境や、「職業」といっても位(くらい)など、さらに、さまざまなカテゴリーに分けられることを想像できるなら、この4つの大別は、かなり役に立ってくれるだろう。
ところで、わが祖国と同じく、イギリスでファミリーネームを用いるようになったのは昔からのことではない。それでも、英語のファミリーネームが、個人名や場所やあだ名や職業に関連して発展してきたものだということは知っていてよいことだ。
また、いわゆる ノーマン・コンクェスト (1066-1071) 以前の行政区であった各郡 (shire) 由来のものや、古英語、古フランス語 、古ノルド語、古ウェールズ古 等の出生や、何世紀にはアイルランドにはで何番目に多かったファミリーネームであるという説明など、本書にはさまざまな情報が書き込まれている。
高校時代から聴いていた洋楽系アーティストの名前にはかなり親しんできたものもあるから、Young や Nash, Crosby, Fogarty, Byrne, McKenzie, McLaughlin, Towns(h)end, Taylor, King など、洋楽アーティストのファミリーネームをこの本で調べたりしていたが、斜め読みしたくらいでラーストネーム(ファミリーネーム)の奥深さがわかるはずもない。名前やファミリーネームは文化に深くかかわるもので、だから、なんといっても現地での文化体験が必要になってくる。
名前がわかるためには本だけではなく文化体験も必要
実際、名前の話は、現地に行って体験しないとわからないところが多い。
1980年代初頭に、UC Berkeley のサンフランシスコ出先機関で英語集中講座を受講したとき、サンフランシスコに半年暮らしたことがある。残りの数カ月で、アメリカ合州国をグレイハウンドバスで周遊していたときに、ニューヨークのあちこちの美術館を訪れたことがあって、たまたま印象派のひとりルノワール絵がそこに飾ってあって、絵の近くにいた10代の女の子に、「この画家の名前はなんて発音するの」と尋ねたことがある。
そのとき「レノワー」という発音を覚えた。
ただ、その子がどこの生まれで、どういう育ちの子なのか知る由もなかったから、これはかなり限定されたデータと言うしかない。
英語のテキストを音読してくれるサイト、たとえば、Natural Reader は超便利で超おすすめ
レノワーは鮮明に覚えている記憶のひとつだが、いまなら、たとえば、以下のような音読してくれるAIのサイト(アプリ)がある。
Free Text to Speech Online with Realistic AI Voices
他にも読み上げサイト(アプリ)はさまざまあるが、この Natural Reader のたいへん良い点のひとつは、イギリス英語・アメリカ英語・オーストラリア英語と選べることだ。また男性・女性と、個人が選べる点がさらによい。まぁ、そうは言っても AI なのだが、使い始めて機械的な印象はない。愛用している。
画家のヴィンセント・ヴァン・ゴッホは、英語でどのように発音するのか
「レノワー」続きで、画家の名前をもうひとつ。
何故だか理由はわからないが、またこれが適切なのか否か、全く自信はないが、私は「ゴッホ」の英語式発音を「ガック」と覚えている。ヴィンセント・ヴァン・ガックと。これがどこでそうなったか、高校時代のリーダー教科書 "The Crown English Readers Book One (Sanseido)"には、ヴァン・ゴッホのレッスンがあったから、そこでだったか、あるいは、別の機会でだったか。全く覚えてないのだが、ガックという発音を脳が記憶している。
それで、最近愛用している読み上げサイト Natural Reader にかけてみたところ、Vincent Van Gogh は、アメリカ英語で、ヴィンセント・ヴァン・ゴウ。イギリス英語で、ヴィンセント・ヴァン・ホー。日本語でも読み上げさせてみたら、これはさすがに「ゴッホ」と読んでくれた。いずれにせよ、ガックという自分の我流の発音も訂正が必要のようだと思いながら、念のために、これを AI に尋ねてみたら、「ガック」は「オランダ語の発音に近い形」ではないかという。「オランダ語では、特に「Gogh」の部分が喉の奥で擦るような音(いわゆる「軟口蓋摩擦音」)で発音され、「ガック」に近い音」になるらしい。「「ヴィンセント・ヴァン・ガック」のような発音」は、「オランダ語に近い発音をする人(特に学術的な場や、美術史家など)がこの発音を使う場合がある」と考えられる、とAI はいう。AI は、まことしやかにウソを言うことがあるから、ほんとのところどうなのかわからないが、ガックで、ひとまず保留としておこう。
ちなみに、Natural Reader でのルノワールは、アメリカ英語で、ピエールオーギュスタ・レノワーかピエーオーギュスタ・レノワー。イギリス英語で、ピエールオーガスタ・リノワーと聞こえた。
高校時代からジャック・ニッチェはどう発音するのかわからなかった
以下は、大昔の話、かつマニアックな話で申し訳ない。
でも、マニアックな疑問でも、Natural Reader はつき合ってもらえるということで我慢しておつきあい願いたい。
高校時代からニール・ヤングのファンであった私はニール・ヤングの音楽師匠・ジャック・ニッチェ (Jack Nitzsche) の Nitzsche を何と発音するのか、高校時代から長年の疑問だった。最近リリースされたニール・ヤングのライブ音源「タスカルーサ」などでようやく確認できるのだが、ニール・ヤング自身は、ジャック・ニッチィと発音している。
有名な哲学者のひとりフリードリッヒ・ニーチェ (Nietzsche) と音楽家ジャック・ニッチェ (Nitzsche) の綴りは e があるかないかだけの違いで、これを AI に尋ねてみると、ドイツ系の名前という共通点はあるものの、違う由来の名前と考えたほうがよいとの回答を得た。
それで、Jack Nitzsche という、綴りを覚えることの難しいファミリーネームを Natural Reader にかけてみたところ、アメリカ英語で、ジャック・ニシッ、あるいは、ジャック・ニッシュ。イギリス英語で、ジャック・ニッチェッシュと発音してくれた。
何と発音してよいのかわからない英語名は、手がかりがないから、どうしようもない。こうした強力な助っ人サイト(アプリ)を利用するのも、ひとつの有力な手だと思う。
ということで、Naturral Reader はおすすめなのだ。
これは、「学習方法のお話」になるけれど、Natural Reader はテキストも読み上げてくれるサイト(アプリ)であることはわかっているが、当分、自分の使い方は単語レベルの使い方になりそうだ。それでも、Natural Reader は、超便利で、高校生にも超おすすめなサイト(アプリ)なのです。