CCR の "Fortunate Son"(119WPM)=英語教材のお話(その58)=
CCRというサンフランシスコ出身のバンド
Creedence Clearwater Revival(CCR)は1967年から1972年にかけての4年余りの活動の中で "Proud Mary"(1968) " や、"Bad Moon Rising"(1969) "、"I Heard It Through the Grapevine"(1970)、"Have You Ever Seen the Rain" (1970)など、数々のヒット曲を出しました。
CCRはバンド構成もシンプルで、その楽曲は数分間の短いものが多く、労働者階級や庶民の気持ちを表現した楽曲が少なくありません。
また"Bad Moon Rising"や"Fortunate Son"のように映画やテレビ番組でかかることも少なくありません。
南部色の雰囲気から出身は南部かと思いきや、彼らはサンフランシスコ近郊出身なのでした。ジョン・フォガティ自身は1966年に徴兵を受け兵役を務めました。
CCRの"Fortunate Son"
CCRの "Fortunate Son" (「幸運の星の下に生まれた子弟(特権階級の息子)」)は、ベトナム戦争最大の転機となったテト攻勢の翌年1969年11月に発売され、これもビルボード3位となるヒットとなり、カウンターカルチャーのベトナム反戦運動の代表曲となりました。
ベトナム戦争で戦地に駆り出されたのは、一般の白人の子弟もそうですが、とりわけ黒人米兵が厳しい戦地に送られました。
発売前年、アイゼンハワー元大統領の孫と翌年大統領となるリチャード・ニクソンの娘の結婚を頭に置いてジョン・フォガティによって書かれた2分半にも満たないこの唄に溢れているのは、国会議員や大金持ちなど特権階級の子弟が愛国心を鼓舞し戦争に賛意を示しながらも自らはいろいろな理由をつけては徴兵を逃れ税金逃れをおこなって国や社会に何ら貢献をしない一方、大義なき戦争に説明もなしに駆り出される一般の青年たちや恵まれない青年たち、その殺される側としての怒りでありました。
近年では、5年前の大統領選で、かかとの骨の異常を理由にベトナム戦争で徴兵猶予を何度もした特権階級の代表であるトランプ大統領候補は、曲の使用を止めてもらいたいと使用中止命令をジョン・フォガティが書面で伝えても、それを無視して、2020年米大統領選でヘリを用いての集会への入退場の際に何度もCCRの "Fortunate Son" を使い、さらに翌年ホワイトハウスを去るときも "Fortunate Son" を大音量で流しました。
ご承知のとおり、トランプ氏は昨年の大統領選で再選となりましたが。
"Fortunate Son"を訳してみると
以下、拙訳になります。
幸運の星の下に生まれた子弟(特権階級の息子)
世の中には赤白青の国旗を振るために愛国心に富んで生まれてくる奴がいる
そして「大統領万歳」を楽隊が演奏するとき
大砲がお前に向けられるんだ
俺は違う
俺は違う
俺は上院議員の息子なんかじゃねぇ
俺は違う
俺は違う
俺は幸運の星のもとに生まれた特権階級の子どもなんかじゃねぇ
世の中には銀のスプーンを手にして生まれてくる奴がいる
連中は好き勝手にやってるよね
でも税務署が家に来ると自分の家をがらくた市のようにみせるんだ、そうなんだぜ
俺は違う
俺は違う
俺は大金持ちの息子なんかじゃねぇ
俺は違う
俺は違う
俺は幸運の星のもとに恵まれた特権階級の子どもなんかじゃねぇ
星条旗を愛する考えを受け継ぐ奴がいる
そいつらこそがおまえを戦地に送るんだ
「どれほど貢献しないといけないのか」とおまえが尋ねると
「もっと、もっとだ、限りなんかない」と奴らは答えるだけ
俺は違う
俺は違う
俺は軍国主義で育てられた息子じゃねぇ
俺は違う
俺は違う
俺は幸運の星のもとに生まれた特権階級の子どもなんかじゃねぇ
歌詞を少し解説してみると
folksは、人を指します。folksの頻度数は低くありません。
red, white and blue といえばアメリカ合州国の国旗を意味します。
ain't は、これまで幾度か説明しましたが、ここでは isn't の口語的言い換えです。否定の強調の二重否定も使われています。
silver spoon は、恵まれた子どものシンボルとしてよく使われます。
歌詞全体の中では、"don't they help themselves?" が一番理解が難しいかもしれません。help にはキリスト教的思想のニュアンスも感じられます。日常会話では食べ物を眼の前にして "Help yourself" なんて表現を聞いたことがあるでしょう。これは、「ご自由に」ということです。"don't they help themselves?" は、「彼らは自由にやっていないか(自由にやっているだろう)」という修辞的反語になります。「連中は好き勝手にやってるよね」と訳しておきましたが、英語で一瞬聞いても、意味をとりにくいのは、私たちに help の深い意味がわかっていないからでしょう。やっかいなことです。
rummage は、「物色する」で、a rummage sale は、いわゆる「ガレージセール」となります。税関吏が来ると貧乏人のフリをする金持ちの生態を皮肉っています。
ライブ演奏では、ジョン・フォガティはロックすると、fortunateをフォーチュネッタァと強音で発話しています。
ジョン・フォガティは、実兄であるトム・フォガティとのいさかいを乗り越えて、いまソロツアーを再開しているようです。
CCRの "Fortunate Son" のWPMは、119WPM
総語数201語で、1分41秒、101秒なので、119WPMになります。
つまらないと思った人は別の教材を探しましょう
カウンターカルチャーのベトナム反戦運動の代表曲といっても、つまらないと思うなら、あなた向きではありません。そんな教材は捨てて、自分にあった教材を選びましょう。