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瀬尾まいこ『そして、バトンはわたされた』(2018)

■2020年10月の読書。フィクション。

■プロローグとエピローグが良い作品は、だいたい本筋も良いというのが私の個人的な意見で、本書はまさにその典型。ワクワクした気持ちで読み始めることができて、読後の気分もとても良かった。

■血は繋がっていなくても、自分のことを本当に愛してくれる家族がいたら、子供は、人は、真っ当に育つ(のだろうか)。とにかく、子を想う「親」たちの愛が溢れていて、心があたたかくなった。

■第1章では主人公優子が高校2年生から3年生の頃、第2章では成人して(早めの)結婚するまでが描かれる。

■自分か再婚した妻(継母)を5年生の娘に選ばせる血の繋がった父、水戸。水戸の再婚相手として優子の母となり、優子のために再婚して豪邸に住んだ末数ヶ月後に消えてしまった梨花。梨花の再婚相手として優子の父となった実業家の泉ヶ原。そして、東大卒でエリート会社に勤務している、梨花の同級生で3度目の結婚相手として優子の父となった森宮。

■本書で「親」として描かれているのは、大部分が森宮のこと。高校3年生に進級した朝にカツ丼を作って食べさせたり(たしか、始業式のために時間給まで取ったんじゃなかったな)、友人との諍いに負けないようにと餃子を作り続けたり。親として普段から向き合って関わる食卓での食事や間食シーンを通した描写が多いのだが、その言動が少しずれているけれど、憎めなくて愛おしい。決して男女間の愛情に転化するようことは一切なくて、本当に父親としての役目を一生懸命真っ当しようとしている。その一生懸命さに主人公の優子は自分の「故郷」は森宮と思えるんだろう。

■優子の結婚相手となる、早瀬の天然っぷりがまた、良い。また放浪するかも知れないけれど、優子が初めて自分自身の意思で自分の苗字を変える相手に相応しい。

■こちらも本屋大賞ノミネート作品。本屋大賞シリーズ読書は楽しいな。

「そして、バトンはわたされた」 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163907956

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