それでも100円ショップでイヤホンを買う理由

私はいつも、100円ショップでイヤホンを買います。

今どきは100円ショップで何でも手に入るので便利ですね。

有難い世の中です。

私が初めて100円ショップでイヤホンを買ったのは、今から10年ほど前のことです。

大学近くの商店街に新しくできた100円ショップへふらりと立ち寄ったら、イヤホンがあったので買った次第です。

別に音質にこだわりとか無いし何でもいいや、と、思ったわけでもなく、イヤホンが100円で買えるのか、という完全なる無駄買いの思考で購入しました。

以降、その時使っていたイヤホンが壊れてから、4~5年はそのイヤホンを使っていました。

最後にそのイヤホンがこと切れたとき、4~5年もの間の思い出、楽しかった大学生活、初めての独り暮らし、甘酸っぱい青春の匂い等々、そんなものは1つも感じることなく、「ああ切れたか」とだけ思い、西武新宿駅ペペ8階のキャン☆ドゥへ新しいものを買いに行ったのを覚えています。

西東京市はゴミの分別が面倒臭いからな、と思いながら捨てたこともよく覚えています。

キャン☆ドゥのイヤホンも、2~3年ぐらい使いました。

100円の割には長持ちだと思います。

その後もやはり別の100円ショップでイヤホンを購入したのですが、それは2日で片耳が聞こえなくなり、絶望的な心境に追いやられた私の扱いが乱雑だったこともあって、3週間程度で完全に断線しました。

その次も100円ショップで購入したのですが、また3日目ぐらいで左側が聞こえなくなりました。

ここで私は「最近の100円ショップで買うイヤホンは長持ちしないんだ!」ということに気づき、新たな作戦に出ました。

それが、『1度に2個買う』という作戦です。

2個買っておけば1個駄目になっても困らないだろうという考えの下、思いつきました。

これなら大丈夫、という思いと裏腹に、『安物買いの銭失い』という言葉も脳裏に過りましたが、私は最早、家電量販店でちょっと良いイヤホンを買うということが出来ない体になってしまっていたのです。

何故ならば、家電量販店へ行くのが怖いからです。

家電量販店に一歩足をを踏み入れようものなら、たくさんの店員さん達が元気よく「いらっしゃいませ」と言ってくれるし、イヤホンの売り場を探そうものなら「何かお探しですか」と声をかけてくれるし、事前に何がどこで売られているかインターネットで調べてそそくさと売り場へ向かい品定めをしようものなら「○○をお探しですか?」と優しく声をかけてくれます。

素晴らしいサービスです。

店員の鏡だとさえ思います。

私も店員なのでわかります。

あれは店員の目指すべき姿なのです。

しかし、私は、人生の長い期間、人としゃべるということをして来なかった人間です。

時給をもらうために時間や体力はおろか人格まで切り売りして店員をやっているという認識で生活しているため、時給の発生しない時間に客として知らない人と会話するなんて、恐ろしすぎて出来ないのです。

だから、私は100円ショップでイヤホンを買います。

それで断線するようならば、また100円ショップで新しいイヤホンを購入するのでしょう。

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