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第一波。

新型コロナの第一波を日本は何とかしのげたようだ。第二波に用心しつつ経済再開を進めていかなければならない。そんなタイミングで、世界に企業倒産の第一波が押し寄せている。

米百貨店JCペニーが経営破綻した。同社はシアーズ・ウォルマートと並ぶアメリカの老舗だ。米小売りではコロナ後の倒産として3例目となる。

1.米小売老舗はもともと苦境にあった

米小売はもともとネット通販の台頭により経営不振に陥っていた。バーニーズニューヨークはコロナ第一波の来る前に力尽きた。

米高級百貨店のニーマンマーカスが5月7日にチャプター11(米連邦破産法11条=日本の民事再生法に相当)だ。米国に住んでいたころ、多くの高級ショッピングセンターにキーテナントとして入っていたニーマンマーカスは輝いていた。

衣類チェーン大手Jクルー・グループは5月4日にチャプターイレブン。

新型コロナウイルスに伴う営業停止による現金収入の急減がとどめを刺した格好だ。

米国を覆いつくそうとしている消費不況が日本にも押し寄せてくる様相だ。予兆が今回のレナウン倒産。そして三陽商会の不調。いずれも老舗アパレルだ。

2.日本の第一波は小さい

レナウンの民事再生適用申請が、昨日15日、東京地裁に受理された。東証1部上場企業として2020年初の倒産。負債総額は約13,879百万円。

緊急事態宣言や自治体からの営業自粛要請を受けて百貨店やショッピングセンターは休業、テナントとして出店していることが多いレナウンも営業休止を余儀なくされている。収入がほぼ途絶えたことで、資金繰りが急速に悪化した。

バーバリーブランドを失ってから迷走が続いていた三陽商会は、ついに万策尽き、三井物産の下で経営再建に向かう。

日本も第一波でバタバタと行ってしまうのか。そうはならないであろう。

私の見立てとしては、米欧はロックダウンという荒療治に加えて、もともと資本の論理で自転車操業的な資本効率の高さが良しとされてきたことが仇になったと考える。先の米小売チャプターイレブン三社は、もともと、超低金利により辛うじて延命されていた『終末期患者』だったといえそうだ。レナウンや三陽商会も失礼ながら同様である。逆にいえば第一波では健康体の大企業でつぶれたところはないし、今後もつぶれないであろう。企業へのインパクトの発現の仕方を見ると、慢性疾患を持つものが重症化しやすいというまるで新型コロナだ。

幸いなことに日本の平均的大企業・中堅企業は手元資金に余裕があるところが少なくない。コロナ前までは「カネを手元に置きすぎて成長分野や新規事業への投資が十分でない」とマーケットでは非常に評判が悪かったぐらいだ。ところが、手元資金の使い道がなくて困っていたことが幸いした。突然の環境激変でマーケットの評価は180度かわった。新型コロナ不安の中「キャッシュリッチ銘柄」が人気だ。体力があるものは『免疫力』も高い。

従って、多くの企業では、1~2か月ぐらいの休業であれば、雇用もなんとか持ちこたえることができる(というか国や世間の目が気になるので雇用に手を付けにくいというのもある)。

3.今後に備えを

今後はどうか。

日本にとって第一波は例えれば「弱い引き波」であったのではないかと思う。それで、ひっくり返る企業はよほど『免疫力』の低かったところである。なぜ弱い引き波で済んだのかは、先に述べた手元資金の余裕(含金融機関)と、欧米と比べて著しく緩めの経済封鎖(我々が『自粛』と呼んでいるもの)だったからだ。

ところが第二波には警戒を要する。海外の需要激減は津波で言えば波高が高いのみならず波長が大きい(長く続く)ものである可能性がある。それだけでも非常につらいのに、万が一、金融危機との合わせ技になると、その襲来速度は想像を絶するスピードとなり、しかも波高は高く(多少の余裕資金では水面下に)、さらに波長もかなり大きい(長引く)ものとなる可能性がある。コロナショックの中であたかもリーマンショックと同クラスの金融危機が起きるようなイメージだ。こうなった場合、金融も自己防衛に走らざるを得ず、そうなれば資金がいきわたらなくなる。それが怖い。

大企業・中堅企業で過剰な生産能力を抱えてしまっているところ、移動ビジネスや接触ビジネスを柱とするところ、インターネット通販の波に翻弄されている小売など、さらなる警戒が必要だ。

自分のおかれた事業環境が「低地にいる」(=第一波で余裕資金が尽きた)「免疫力が低い」(=適応力が低い)「体力がない」(=規模が小さい)に該当すると少しでも思うなら、引き波のうちに少しでも安全な場所へ直ちに避難すべきである。

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