今日も東京は晴れ。5 さわらないで。
5.非接触の広がり
2030年5月11日、21時。
夕食を簡単に済ませた後、スマホから1分で来週の買い物を済ませた。食品については面倒なので「前回と同じ」ボタンを押してお仕舞い。野菜、果物、肉、乳製品、パン、水、お茶。いつもと同じだ。土曜18時と水曜18時にプリセットした品目が届けられる。小分けにして毎日デリバリーしてもらうことも可能だが、面倒なのでそんなことはしない。
生活に関しては、10年前よりも圧倒的に便利になった。「買い物」といえばほぼ100%が昔でいうところのネット通販だ。物理店舗にいくのはコンビニぐらいで、こちらはあえて「コンビニ買い」という。おいしいもの・鮮度の良いものが欲しいときは、漁協直送の水産物や生産者直送の野菜・果物が良い。noteで交流がはじまった酪農家や福島の漁師や愛媛のミカン農家から旬のものを取り寄せることも多い。もちろん、現地に出向いて直売所での購入も可能だが、直売所に限らずリアルの店舗はネット販売のためのショールーム的な位置づけだ。
ちなみに乳製品、パン、水、お茶などはネットスーパーへの注文だが、野菜、果物、肉、魚はそれぞれ生産者への注文で、事前にセットしておけば複数先にまとめ注文と決済ができる。通販といえば昔はアマゾンの独壇場だったが、公正取引委員会からの注意もあり、アマゾンは随分存在感を落とした。今は通販とりまとめサイトがアマゾンも含めて一括とりまとめ発注できる共通プラットフォームを提供しており、しかも送料無料だ。
今や宅配は電話や郵便と同じ国家レベルのユニバーサルサービス扱いなのだ。昔は送料無料にするために無理やり余計なものを買ったりしたものだが、今では宅配サービスが一元化され、都市部では各家庭に対して基本的に一日三回の無料宅配サービスが実施されているので便利だ。
宅配ボックスが玄関に設置されるところが増えた。それで便利なのは、宅配の受け取りが人と接することなく済んでしまうことだ。今は、すべてのレストランからのフードデリバリーも宅配サービスに統合されていて、デリバリーフードもそこに入れてくれるので、デリバリーの場合も配送の方の顔を見ることもなく、食事を受け取れる。
役所の諸手続きや確定申告も全て家の中で完結するので便利になった。政府が100%ペーパーレスをめざして全てを電子化したため、マイナンバーカードさえ使えば何でもできてしまう。そもそも区役所や税務署には昔のような窓口が存在しない。従って、役所の人にリアルでは会う機会はない。銀行も同じである。銀行に行く機会もない。そういえば、最近現金を見たことが無い。現金を使う機会がないのだ。そもそも現金預け払い機(いわゆるキャッシュディスペンサー)が殆ど見当たらない。Dペイとモバイルスイカで全部できてしまう。クレジットカードも海外通販と定期的な支払い以外は殆ど使わなくなった。昔、公衆電話があっというまに携帯電話に駆逐されていったのと似ている。
こうなってくると、外出どころか誰とも接触しないで生活できてしまう。
非接触といえば、以前であればICカードによるマイクロペイメントであるとか、ICチップ内蔵キーによる改札通過とか、限定的な利用であったが、今や、至る所が非接触だ。
例えば、トイレがどこもかしこも音声認識だ。以前はせいぜいセンサーで便器洗浄ぐらいだったように思うが、今や便座の開け閉め、手洗いの開栓閉栓などが音声コマンドで動作する(標準的なコマンドのセリフは大体、貼ってある)。siriやアレクサが出た頃、機械に話しかけるのが恥ずかしかったものだが、ここまで増えてくると何とも感じなくなる。たまに音声認識でない旧式のトイレがあるので「フタあけて」と言った後に何も起きなくて赤面することもある。
明かりのスイッチも触らないで勝手に点灯する。人感センサーだ。家の中のドアノブも触らない。人感センサーや音声認識によるリモート自動開閉だ。エレベーターでは行き先階のボタンに触る必要がない。基本的に音声認識で行きたい階を言う。生体認証によるオフィスや施設の入退館や、スマホによる駅改札の通過、車の自動運転、宅配ロッカー利用、はては、音声コマンドによる掃除機操作、モニターのONOFF、ニュースクリップの視聴、ガスレンジや食洗器の操作など「ここまでやるの?」と思う箇所までセンサーと生体認証と音声コマンドを利用した非接触ばかりだ。また、これらが全てIPv6で個々のアドレスを持っているので、スマホ・PC・タブレットからの操作も可能だ。私の場合、食洗器のONやルンバのONOFFはリビングで仕事をしながらPCかスマホで行う。
トイレで一人で呪文を唱えるとか、リアルの通貨を使わないとか、ネット通販とか、役所の窓口廃止とかいろいろやっているが、「非接触」がデフォルト化・全面化していく動きでもあるのだと思う。
例のゲーテッド・コミュニティーの話で、スゴイな、と思ったのは、ゲートを意識せず、まるで普通の歩行者のようにゲートを歩いて通過するだけで認証できてしまうという技術の発達である。住人であれば時速15キロで駆け抜けても大丈夫なように設計している一方、非許可者に対しては個々に警備員が出て行って質問の上で誘導するし、AIが不審者と判断した場合は直ちに警備ロボット・ドローンが出動して物理的に侵入阻止を実施するとのことだ。まるで未来の管理社会、ジョージ・オーウェルの1984の世界ではないか。
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そういえば、今日、食事の時の箸とお茶碗を除けば、スマホとPCのキーボードとマウスにしか触れていない。スマホとPCとマウスさえ消毒しておけば、完璧な感染対策ができている・・・。もはや手を洗う必要さえありませんね。(あ、トイレのあとは忘れずに洗いますけど。)
Black Swanの独り言
お読みいただきありがとうございます。非接触技術があらゆる場面で活用されることになりそうです。
次回はオープンエアをテーマとした人と人の関係や飲食業の再生への一つの方策の話、次々回は将来も継続しそうな海外渡航の制約についてです。
Bkack Swan拝