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【要点と感想】ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』(原文: 1962, 翻訳: 2008)

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【著者のプロフィール】
ミルトン・フリードマン(1912-2006)はアメリカの経済学者で、シカゴ大学を拠点に活躍したシカゴ学派の代表的存在です。経済学の主要な領域で多くの業績を残し、特に金融政策を重視するマネタリズムの提唱で知られています。『資本主義と自由』をはじめとした多数の著作を通じて「小さな政府」「市場の自由」「貨幣供給量の安定的ルール化」などを主張し、1976年にノーベル経済学賞を受賞しました。

以下では、本書の章ごとの要点を説明し、その後に感想を書きます。要点には含まれていない詳細を知りたい方はぜひ本を手に取ってみてください。


第1章 経済的自由と政治的自由の関係

フリードマンは「資本主義と自由」という主題を貫くうえで、「自由市場(経済的自由)と個人の権利・民主主義(政治的自由)のあいだには深い関連がある」と強調します。大きな政府や政府の権力拡大は、たとえ公共の利益をうたうものであっても、最終的には個人の自発的な選択や言論の自由を制限しがちだ、という問題提起から始まります。

  • 政治権力の集中がもたらす自由の侵害
    政府が経済活動を直接コントロールする体制では、反体制的な人々の仕事や資産を簡単に奪うことができるため、表現や思想の自由すらも危うくなるおそれがあると指摘します。

  • 市場メカニズムの分散性
    逆に、自由市場では生産や取引が多様な主体によって分散されているため、一部の権力者が経済的手段を武器に独裁的な支配を行うのが難しくなるという利点を説きます。

  • 冷戦期の背景と「大きな政府」への警戒
    本書が書かれた当時は、ソ連型社会主義や拡大路線の福祉国家が注目を集めていました。フリードマンは、これらが内側から自由を侵食する可能性を懸念し、自由市場こそが政治的自由を守る防波堤になると位置づけています。


第2章 自由社会における政府の役割

フリードマンは決して「政府は不要」と主張しているわけではありません。むしろ、社会の秩序維持や契約を強制する仕組みづくりなど、必要不可欠な部分はあると認めています。一方で、どこまで政府が介入すべきかを厳密に検討する必要があるとも主張します。

  • 政府の正当な機能
    国防や治安維持、私有財産権を守るための法整備、公共財の供給など、個人や企業だけでは対応しにくい分野には政府が関与するのが妥当だと考えます。

  • 外部効果への介入
    たとえば公害などの「負の外部性」は、放置すると第三者に被害を与えてしまいます。一方で教育のように「正の外部性」をもつものは、個人の私的選択だけに任せると必要量が足りなくなるかもしれません。こうした局面で政府がどの程度関わるべきか、フリードマンは慎重に議論し、最小限かつ明確なルールを設けるにとどめるべきだと説きます。

  • 「大きな政府」のリスク
    行き過ぎた介入は、しばしば意図しなかった弊害(unintended consequences)をもたらします。過剰な保護政策が産業全体の活力を奪ったり、官僚機構の肥大化によって自由が損なわれたりする恐れを強調しています。

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