【エコラ×リノベる】リノベーション業界先駆者のマインドを紐解く-企業の転換期「CVポイント」|特別対談
こんにちは、ECOLA noteです。
今回は特別対談と題し、株式会社エコラ(以下 エコラ)代表取締役・百田好徳氏と、リノベる株式会社(以下 リノベる)代表取締役・山下智弘氏の2名にお話をお伺いしました。
エコラとリノベるは2022年12月、リノベーション事業において業務提携に至りました。今回の対談の舞台となった『リノベる。宮城 仙台青葉区ショールーム』はその提携の先駆けとして誕生した、リノベーションや最新のIoT家電を連携させたスマートホームの魅力を体感できる空間です。
東北宮城を中心にリノベーション事業を展開するエコラと、国内No.1(※1)のワンストップリノベーション事業者であるリノべる。それぞれの代表が創業初期のエピソードから業務提携の裏側まで語り合う、特別なクロストークをお届けいたします。
また記事の中では、”用途変更”を大きく意味するリノベーション用語になぞらえ、企業の転換期を「CV(コンバージョン)ポイント」としてご紹介いたします。
その企業の屋台骨となったエピソードを知ることで、組織全体に対する理解も深まるのではないでしょうか。
ぜひ最後までお付き合いくださいね。
※1 リフォーム産業新聞1574号(2023/10/23発行)『マンションリフォーム売上ランキング2023』にて、ワンストップサービスを手掛ける事業者として首位
■2つのリノベーション企業
_早速ですが、簡単に企業のご紹介をお願いします。
百田 エコラは2004年に設立し、今年で創業20周年を迎えました。本社は宮城県仙台市青葉区の春日町、弊社が一棟丸ごとリノベーションしたシェアオフィス『THE6』に構えています。事業内容はリノベーション事業や建築施工事業がメインですが、近頃は古いビルやレジデンスを対象とした、一棟丸ごとリノベーション事業に特に力を入れていますね。
山下 リノベるの設立は2010年と、エコラさんより数年後になります。本社は築50年近いビルをリノベーションし、ショールームや工房兼ギャラリーを併設したオフィスとして港区南青山の骨董通りに構えています。主な事業は大きく3つ、個人のお客様向けの住宅リノベーションプラットフォーム、法人向けのCREリノベーションプラットフォーム、エコラさんのようなパートナー企業向けにノウハウやテクノロジーを提供するリノベDXプラットフォームを展開しています。
_現在も進化を続ける2社ですが、企業の最新情報を教えてください。
百田 LIXILさんの建材発注数が全国一位になり、表彰いただきました。また同じくLIXILさんより、業界最大級の住宅施工例コンテスト『LIXIL MEMBERS CONTEST 2023』にてリフォーム部門「地域優秀賞」を受賞できたのは大変喜ばしい出来事でしたね。
山下 リノベるは官民ファンドである「脱炭素化支援機構(JICN)」様からのご出資を、住宅・不動産・建設事業を行う企業としては初めていただいたことでしょうか。実は日本のエネルギー消費量の約3割を建築物分野が占めており、不動産事業の脱炭素化推進は早急に対応すべき課題なんです。そんな中でリノベーションという手法がGHGの排出削減に有効であると国からお墨付きをいただき、非常に嬉しく感じています。
■ゼネコンから「リノベーション」という未知の領域へ挑んだ
_エコラは宮城全域にリノベーション事業を展開中、リノベるは日本全国に40箇所以上のショールームをもつなど、業界の中でも一目置かれる存在かと思います。そんな実績豊富な企業に至るまでのエピソードを、まずは創業当初のお話からお伺いできますか?
百田 高校生の時に『成功の法則 松下幸之助はなぜ成功したのか』という本に感銘を受け、当時から将来は独立して事業を始めたいと考えていました。とはいえまずは経験を、ということで卒業後はゼネコンへ就職し、新築の建物を扱っていましたね。
_華やかなイメージのある新築業界から、なぜ独立してリノベーション業界への挑戦を始めたのでしょうか?
百田 ゼネコン時代に分譲マンションを手がけていた際に、内装や間取りがどの部屋も似通っていて、すべて一緒に感じてしまったんです。「これで5,000万円も6,000万円もする価値って、本当にあるのかな?」と正直思いました。新築の建物もいずれ古くなり、価値が下がってしまう。それなら安く購入した中古の建物に新たな付加価値を与え、住まい手が理想のライフスタイルを叶えられる環境を提供したい、と考えたのがエコラ創業のきっかけですね。
山下 僕は百田さんと違って、ゼネコンに入社しようと思って入ったわけではなく、大学のラグビー部の先輩に拾ってもらったのが建築の現場を知るきっかけでした。同じく新築の建物を手がけていましたが、いろんな職種の人たちとチームになって進めていく感じがラグビーと似ていて、とても楽しかったですね。
_山下代表は新築の現場にプラスの印象があったんですね。
山下 そんな中、僕の人生を大きく変える事件がありまして。当時僕は新築マンションの建設に伴う地上げの仕事を担当したのですが、対象の古い団地にお一人で暮らすおばあちゃんの一戸だけが、なかなか立ち退きに同意していただけませんでした。おばあちゃんの所へ通い続け、最終的には首を縦に振っていただき、迎えた竣工間近のある日。再会したおばあちゃんから「あんたに私の人生を奪われた」「亡くなった主人と大切に住んでいた家なのに…」と泣きながら言われてしまったんです。思い出の景色ががらりと変わってしまったのを見て、おばあちゃんはそう感じたのだと思います。
_やりがいを感じていた仕事から一転、他人の人生を奪ってしまった罪悪感が残る出来事になってしまった。
山下 当時は相当ショックでしたし、今でも心に残っています。その後しばらく休暇をもらい、海外に住む先輩の家を回ることにしたんです。そこで感じたのは、「古い建物を活かしつつ、自身の生活に合わせてアップデートしていく海外の暮らし方」と、「部屋の壁に画鋲すら刺せない、窮屈な日本の暮らし」のギャップです。まだ使える建物を活かす住まい方は日本でも実現できるのではないかと考え、リノベーション事業の立ち上げを決意しました。
■ 「貪欲さ」と「誠実さ」は変わらない
_創業から数年後、お二人は一般社団法人リノベーション協議会で初めて出会ったとお伺いしました。当時のお互いの印象を教えていただけますか?
山下 僕は協議会には発足1年目から参加していて、初めは業界の大御所たちに緊張しっぱなしでした。でも3年目くらいから百田さんが参加されて、すごくほっとしたのが一番の印象ですね。同じ施工の畑出身で同世代ということもあってか、「百田さんならわかってくれるだろう」と思っていました。
百田 山下さんは当時からトッププレイヤー。雰囲気も周りの人と全然違いましたね。自分のスタイルを持っていて、言いたいこともはっきり言うタイプでした。すごくたくさんのことを勉強させてもらいましたよ。
_現在のお互いの印象に変化はありますか?
百田 基本的な印象は変わっていないです。特に、とにかく貪欲に追求し続ける姿勢は、ずっとこのままです。業界の最前線かつ有言実行でやり続けている人って、僕の知る限り山下さんしかいませんね。
山下 僕も大きな印象は変わっていないですね。特に誠実なところ。自分がいいと思うものを、一つひとつ実直に積み上げていく芯の強さみたいなのは今もまったく変わってないです。まあちょっと白髪が増えたくらいかな(笑)。
■ 業務提携は必然だった
_お互いに信頼し、研鑽し合う関係だったのですね。そこからさらに月日は流れ、2022年12月、エコラとリノベるは業務提携に至りました。そもそものきっかけは何だったのでしょうか?
百田 エコラが一棟リノベーション事業に力を入れていたころ、リノベるさんでも同じく一棟事業に力を入れていました。お互い積み上げてきたノウハウを掛け合わせながら、よりリノベーション事業の可能性を拡大していくために提携に至りましたね。
山下 百田さんは「ロマンと算盤」を持っている方、いいと思うこと・面白いことにトライしながら、事業をつくって拡げていける方だと思っています。そのため、仙台で一緒にやるなら百田さんがいいなと感じていました。自然となるべくしてなったというか、必然だったと思います。
_そんな二社だからこそ創造できるシナジー(相乗効果)とは何でしょうか?
山下 やはりお互いの強みと弱みを補填しあえる関係、という点でしょうか。もしリノベるだけの力で宮城に進出しようとしても、多分できないんです。それはその土地で命をかけて事業に取り組んでいる人が必ずいらっしゃるので、片手間ではできないから。今回のようにベストなパートナーが見つかったのであれば、切磋琢磨し、互いに大きく成長し合えると考えています。
百田 正直、うちとしてはまだまだ欠けているところが多くある。でも、そこは素直にご教示いただいて、吸収しながら事業に取り組んでいきたいですね。
■ 転換期「CVポイント」を成長の糧に
_ここまで、創業エピソードから現在の業務提携に至るまでのお話をお伺いしました。そんな中で、企業の転換期となった出来事「CVポイント」を教えていただけないでしょうか?
百田 2016年にシェアオフィス『THE6』をオープンしたことですね。実は当時の社員に相当反対されたのですが(笑)。何かに囚われたかのように、このプロジェクトは絶対にやらないとだめだと直感で思ったんです。結局それがエコラの一棟事業の始まりとなりましたね。
山下 『THE6』の誕生によって、業界の中でエコラさんの見え方が変わったように感じました。
百田 まさにその通りで、以降は「仙台の一棟リノベーションといえばエコラ」と思っていただけるようになったんじゃないかと。あくまで僕の考えですが、ゼネコンは新築などの”決められた建築”は得意ですが、リノベーションなどの”創造する建築”は苦手なんです。それに対してエコラの一棟事業は、建物全体に多様な価値を与え、そこに人を集めつつ再収益化を図ることで、活気ある街づくりの一端を担うことができていると感じています。このような建築と不動産両方にとっての一棟事業の可能性の形として、THE6を創り上げることができたのは大きかったです。
山下 リノベるの転換期は2014年、初めて外部からの資本を受け入れたときでしょうか。プロの投資家から見てもリノベーションという事業に可能性を感じていただけたということなので、シンプルに嬉しかったです。
さらに外部からの資本が入るようになると、高頻度で目標に対する経過報告を提出する必要があるんです。そのため、結果的に自分自身のレビューの速度が上がるようになり、経営者として成長できたきっかけにもなりましたね。
■『課題を価値に。』そして次の世代へ
_エコラは20年、リノベるは10年以上の歴史がある企業ですが、長い歴史の中で培った、他の企業にはない魅力とは何でしょうか?
百田 やはり、一棟リノベーション事業を0から構築するノウハウがある点です。建物一棟を丸ごと設計施工することはできても、収益化をはじめとする事業の組み立て、いわゆるソフト面でのノウハウまで身につけている企業は、全国でもそこまで多くないと思います。これらはすべて、エコラならではのイノベーションの形を追求し続けた結果の表れだと考えていますね。
山下 リノベるはとにかくミッションドリブンな会社です。全社員がリノベるのミッション『日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。』を日々意識できるようにしています。ただしこの組織のミッションの下には、その人の人生のミッション、すなわち『個のミッション』があることは忘れてはいけません。1on1などを通して社員一人ひとりの『個のミッション』をしっかり聞き出し、組織のミッションから方向性がズレていないか、細かいぐらいにレビューすることを徹底していますね。
_最後に、ここまで記事を読んでいただいた読者の方に一言お願い致します。
百田 エコラ、ひいてはリノベーションという事業は、建築と不動産の両面から新しい価値を創造できる場だと思います。次の世代へより良い住環境を引き継ぐためにも、楽しく挑戦し続けられる人とご一緒できたら嬉しいです。
山下 先ほどリノベるのミッションのお話をしましたが、その下にさらに『課題を価値に。』というビジョンも掲げているんです。誰かの課題を価値に変えることができれば、自分自身の成長につながると僕たちは考えています。ぜひ成長を貪欲に求めている方にジョインしていただきたいです。
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今回の対談の中で、「リノベーションという事業は、新築至上主義の日本の住宅文化を変える挑戦なのでは?」と問うと、両者から「文化はなかなか変えられない」と同じ回答が返ってきました。
「それでも、変えられる部分はある。僕らが率先して建物という点を作り出し、そこに人が集まり、経済効果が出て、やがて街という面になっていく。もうそういう時代が来ているのかな」ーー
経営の神様と称された松下幸之助氏が残した言葉の一つ、『事業は人なり』。
今回の代表2名のお話を通して、あなたの目に、エコラとリノベるはどのように映りましたか?
なお今回の対談の様子はリノベるのコーポレートブログ『パズル』でも公開されています。
こちらもぜひチェックしてみてくださいね。
記事は2024年2月時点の情報です。記載の内容が現在と異なる場合がございます。
(文:鳴海 匠 写真:はまだ あつみ(Rim-Rim))