生き残っている生命保険営業の特徴
損保は必要性をもとに加入することが多いが、生命保険は販売担当者のファンになったから加入するというケースが多い。
私は最初にこの傾向を見て、「商品から目を逸らさせて、人間に惚れ込ませて買わせるって詐欺じゃね?」と一時期思っていた。
ところが、自分の加入商品を考えてみると見え方が変わることに気づく。
自分が亡くなったり病気になったりすることに果たしていくらの保険料をかければいいのか。
ネットを検索すれば合理的な説明はたくさん出てくる。私だってまがりなりにも保険のプロなので、自分で理屈だって考えられる。
しかし、どんな金額・保険料であっても、理屈はつけようと思えばつけられてしまうのである。
結局、散々考えた末に加入内容を決めたが、「判断を他人に委ねられるって、それだけで一つのサービスなんだなぁ」と実感した。
服を買いに行った時などに、フィーリングの合う店員さんと出会うと委ねることに心地よさすら感じることがある。
同じような心地よさを生命保険の分野で与えることができるのが、良い営業ということだ。
というわけで、生命保険はファンビジネスの色が強くなりがちだ。
アイドルとかと一緒で、販売担当者に惚れ込んだ結果としてお金を払う場合が大多数である。
ファンを作る過程をざっくりいうと、「GIVEしてGIVEしてGIVEしてTAKE」である。
G・N・P(義理・人情・プレゼント)というのは、生保業界の旧態依然とした体制を揶揄する言葉だが、ファンビジネスの性質を帯びる生保営業という点では、その本質は今も変わっていないと思う。
問題は「何をGIVEしたら人々が喜んでくれるか」について、保険会社の我々がどれだけ適応できるかである。
ハッキリ言って「情報提供」はもうお腹いっぱいだ。
YouTubeを開けば健康にせよお金の勉強にせよ、死ぬほど多くのチャンネルが洗練された方法で消費者に情報提供をしている。
石橋を叩いて叩いて叩いてから渡らないといけない企業公式アカウントからの情報提供では、消費者の時間シェアの奪い合いに勝てそうもない。
というわけで、結局のところ行き着くのは「スーパーアナログな人付き合い」である。
例えば・・・
マンションの管理組合に参加して課題解決を率先して担い、色々喋っていくうちに周りと家族の話になり、「私、実は生命保険を取り扱っておりまして(ドドーン!)」
地元の祭りを手伝って仲良くなった町内の人たちと交流していくうちに「保険入らなきゃかなぁ」「私、取り扱っております(ババーン!)」
他にも選挙の手伝い、馴染みの飲食店、保護者同士の繋がり、同じ大学の同窓会的な集まり・・・身体何個要るんだよってぐらいいろんなコミュニティに顔出して、動き回っている人はやっぱり実際に成績を上げていた。
一昔前は大きな会社の昼休憩に生保レディが陣取って社員に営業攻勢を仕掛けていたが、情報管理が厳しくなった現在はそうもいかなくなってきている。
既存の大規模なコミュニティを2,3個押さえれば食っていける、という時代はとっくの昔に終わっていて、中小規模のコミュニティに10個も20個も所属する戦略が主流になってゆくのではないだろうか。
今はオンラインでのコミュニティ参加が容易になっているので、関係維持コストを抑える工夫はできそうである。
営業の世界は、オンとオフの区別なくずっとエンジンふかしたまま進み続けられる人間が最強な世界だ。
これは私も実感として分かるが、いろんな人間と会って自分の視野が広がって、周りから評価されてのサイクルが回ってゆくと、脳みそ全体が快楽物質に満たされてどこまでも走り続けられるようなハイな気分になる。
(残念ながら私の場合は連続3日で途絶えてしまったが)
この感覚にずっと浸っていたいと思う人は、ずっとオンのまま仕事とプライベートが溶け合った世界の中で歩みを進めてゆく。
・・・と、自分なりの結論は出したが、会社が命令する範疇から完全に逸脱したプライベート領域の話なので、実践的には各自が必要性を感じるのに任せることになるだろう。
営業の指導者層も似た結論に至っている人はいそうだけど、委ねるしかなくてもどかしく思ってるかもなぁ。