専門性を深める罠と、生命保険の新しい稼ぎどころを考える
専門性とガバナンスのききづらさ
最近個人的な興味から医療系の本を読んでいるのだが、「医師はガバナンスが効きづらい」というフレーズを目にした。
資格職で補充がききづらく、仕事内容が専門的で、「医療機関の稼ぎ頭や最終責任主体は医師である」という意識もあり、周りの人間が口を出しにくい要素が揃っている。
手に職がついているので、気に入らなければ他の組織に移ればよい、という考えもあるかもしれない。
そのため、組織目標と医師個人の目標が合わず、力を束ねられないケースがあるようだ。
実は生命保険の仕事も資格職である。入社して早々に20個ぐらい資格を取らされる。入社する人間に高学歴が多いのも、ペーパーテストへの耐性を考慮しているのではないか。
ただし、生命保険業界において、事務系の人間は会社に対してはかなり忠実だ。国内に存在する生命保険会社の数(=転職先の候補)が限られているからだろう。
生命保険会社からコンサルを転職先に選ぶ人間は多いが、配置されるのは結局保険セクターだったりするので、案外狭い世界である。
円満退社をしておかないとその後の仕事もしづらくなる可能性があるので要注意だ。
優秀な成績を挙げている営業職はその逆で、引く手あまたなのでガバナンスがききづらくなる。
周りからの尊敬が統率力に繋がる仕事
自身も1プレイヤーとして現場で高いパフォーマンスを挙げ、周りからの尊敬を勝ち得ることがそのまま組織の統率力に繋がる構図が専門職の世界では多い。(↑の本でも言及されている)
しかし、一線級の活躍をするには修練に相当な時間を要するので、経営視点での対応には手が回らなくなる。
生命保険業界で情報発信する人間がなかなか出てこないのもここに原因があると思っている。
つまり、人材の流動性が限定的で、仕事内容が専門的であるがゆえに、組織内での承認獲得が生涯年収アップの最適解になりやすいのである。
しかし、機能面での差異がどんどんなくなっている現代社会において、ストーリーを語れないのは業界にとって致命的である。
医療機関の気持ちにどれくらい寄り添えるのか
現代医療はもはや病院で完結するものではなく、周辺機関との連携が織りなす生態系によって作り上げられるものになっている。
たとえば、薬局などはそばにある病院とある種の運命共同体になっており、病院が潰れれば薬局も大きな打撃を受ける。
この潮流は近年ますます強まり、医療機関では連携室といった名称で、地域包括支援センターや他の医療機関、施設と連携を深める動きが出てきた。
当然ながら業務は複雑化・膨大化するので、事務対応可能な人材が不足して困っている医療機関も多いらしい。
実は生命保険会社では、日々の引受査定や支払査定で医療系の知識を蓄えた人材が一定数いる。
医療事務の委託会社などとの人材交流機会を設けられれば、医療機関との関係構築ならびに地域福祉とのシナジーも生まれるのではないだろうか。