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暖炉で焙煎、体と地球とお財布にやさしい森のコーヒーライフ

焙煎を始めたキッカケ

コーヒーの自家焙煎を始めてかれこれ10年程になります。

田舎暮らしを始めてしばらくは割と厳格なマクロビオティックな玄米菜食中心の食生活をしていたためコーヒーというものをほとんど飲まなかったのですが、体調や心境やライフステージの変化により、食生活も緩やかになってきました。

ある時、普段買い出しに行くふもとの街(今市)にコーヒー豆の専門店があることを知って久方ぶりにコーヒーライフが再開しました。

炭火焙煎にこだわるそのお店のコーヒー豆は消費税を入れて100g500円くらいからと、自給自足の生活者にとって決して安い買い物ではありません。

ここぞ、というタイミングで大切に飲むようにしたいのですが、焙煎したコーヒー豆は酸化によって風味が落ちるので、つい新鮮なうちに飲みきってしまおうという意識が働きます。

月に2〜3回の買い出しの折に100gずつ買うという習慣がしばらく続いた末に、「生豆を自分で煎れば好きな時に新鮮なコーヒーを飲める!」さらにこの際、有機農産物ならより健康的だし、何より生豆なら焙煎豆よりずっと安価に入手できるはずだと思い至ったわけです。

調べてみると有機の生豆は思ったほど高くはなく、100g当たり100円代の前半。

実家から持ってきた半世紀前のバウルー

そこで最初は1kg単位で購入して、家にあった「バウルー」(ホットサンドメーカー)を使いガスコンロで煎り始めました。

これで思いの外うまく煎れたものの、一度に煎れる量はコーヒー数杯分しかないし、コンロの周りに大量の豆の薄皮が飛び散り掃除が大変です。

古い薪の竈門とアウトドアキッチン

そこで外のかまどの薪火で焙煎する方法を試行錯誤しはじめたわけです。

10年の間に焙煎の仕方も改良を重ね、現在は冬場は家の中の自作の暖炉で、夏場は屋外のかまどで薪の直火で焙煎をおこなっています。

今回はそんな薪焙煎の様子をご紹介します。

生豆の入手

焙煎前の生豆

現在生豆は静岡県の輸入業者から購入しています。フェアトレード有機コーヒー豆をあつかう業者は数々ありますが、たまたま知ったそのサイトの経営者のコーヒー愛とか社会課題への姿勢に共感するからです。

コーヒー豆に限りませんが、農産物の「有機」や「フェアトレード」という呼称にはしかるべき認証団体による認証が必要です。

認証にまつわる問題はここでは書きませんが、認証の有無よりも、流通業者の信頼性を大切にしたいと思っています。

同じ商材を購入するなら、よりエシカルで、生産者の境遇の改善につながるものを選びたいものです。

ただ、コーヒー豆の場合、以前は品質(味)があまり高くないケースが多く、「フェアトレード有機だから」という満足とともに飲み込んでいた感もありましたが、近年では品質も向上し在来農法のものと比べ遜色はなくなっています。

「有機豆は高い」という印象を持っている人が多いと思いますが、流通量も増えたせいか焙煎した豆の価格も以前よりだいぶリーズナブルになっているようです。

薪の直火で焙煎

さて、焙煎の方法です。

自作の焙煎器(四代目)

これが自作の焙煎器。鉄製の鍋に長い柄と蓋をつけています。この焙煎器には生豆を1Kg強入れることができます。

「炭火焙煎」という言葉はよく見聞きしますが、「薪火焙煎コーヒー」はあまり一般的ではないと思います。

炭火は木炭を燃焼させるため、遠赤外線の輻射熱で比較的長時間焙煎するのに対し、薪焙煎は高温の炎の火力プラス輻射熱(ふくしゃねつ)を利用します。

薪を燃やすと煙も出ますから焙煎器には蓋をしないと豆がススけたり、燻製の匂いがついてしまいますので、ピッタリと蓋をして、激しく振るっても外れないように固定します。

大谷石の廃材を積んだ暖炉

これは自力建築の我が家の居間に自作した暖炉。真夏を除いてコーヒーの焙煎はここでおこなっています。

暖炉の良いところは、断面積の大きな長い煙突の吸引力で、どんどん煙を吸い込んでくれること。

なので家の中でコーヒーの焙煎だけでなく、イワシの丸焼きも燻製もできてしまいます。

この暖炉のフェンスに焙煎器の柄を置いてガランガランと転がして焦げ付きを防止しながら、薪の量で火力調節をします。

豆がある温度に達すると、膨れてプン、プンと弾ける音が始まります。これが1ハゼ。

この音が1〜2分続いて一度音が止んだ後ほどなくして、今度は油分が沸騰するようなチリチリという音が始まり、モウモウと白い煙が出て来ます。これが2ハゼ。

2ハゼが来てすぐに火から上げるとミディアムくらいの深さ。ここから先はあっという間に色が濃くなる(メイラード反応と言うらしい)ので全神経を集中し狙った深さで止めます。

所要時間は23分を目標にしています。

世のプロの焙煎士は、この間の温度上昇カーブをチェックして理想の味わいを求めたりするわけですが、焙煎の科学については専門家ではないので、興味のある方はネットで検索してみてください。

我が家では、気温や使う薪の樹種や形状により火力を思い通りにコントロールするのが難しく、また焙煎器の中の品温を測ることもできません。経験と勘だけが頼りです。

煎り上がったコーヒー豆は竹製の”手箕”(てみ)に移し即座に屋外で粗熱を冷まします。そうしないと自身の熱でどんどん変化が進んでしまうからです。

油が回る手前のフルシティローストで焙煎を止めても、もたもたしていると油がギトギトしてフレンチのようになって来てしまいます。

手箕であおぐと、焙煎時に剥がれた薄皮も風に飛ばされますが、最後に目の粗いフルイにかけて残った薄皮や小さい破片を除去して完成です。

では、実際に焙煎している動画をご覧下さい。

自給自足の余剰の交換

さて、タイトルに書いた「財布に優しい」の説明をしましょう。

仮に一家で月に1Kgの「焙煎済み」の有機コーヒー豆を買ったら6,000円掛かるとします。

その6,000円で「生豆」を買ったら4kg分の焙煎コーヒーができますから、余剰の3kgを100g500円で売ると15,000円の売り上げ。

(売り上げ)15,000 - (仕入れ値)6,000=9,000

つまり、4Kgの豆を焙煎する労力で、1kgの自家消費分がタダになり、9,000円が手に入ることになります。

これは純利益ではなく、薪を調達する労賃や、設備のメンテナンスや投資を含みますが、いづれにしろ我が家の暖房費を支えていただいているものと理解しています。

というわけで豆を売っています

現在では自家消費用の豆が無くなると、その時点での注文分と合わせて2〜3釜(2〜3Kg)焙煎します。

注文分だけ煎ることはしませんし、1日に4釜以上煎ることもしません。

集中力が持続しないし、お金のためという邪念が入るのを恐れるからです。

ですから生産量は月に10kg程度が限界です。

また、商売ではないので多くの銘柄を取り揃えることはできませんし、焙煎度合いにバラエティもありません。

季節や気分やその時々の豆の特徴に合わせて多少変化することがありますが、大抵はシティ〜フルシティ(中深)になります。

ウチでフルシティローストと呼んでいるのはこのくらいの深さ

世に美味しいコーヒーはたくさんあると思いますが、焙煎過程で電気や化石燃料を使わず、生産者の顔の見える、地球環境に配慮した農法で栽培されたコーヒーも是非一度お試しください。

発送は豆の状態でクリックポストで400gまで送料250円で送れます。

クリックポストには梱包の厚さ3cmという制限があるため、200g単位で真空パックして投函しています。

時間が経つとガスが出て膨らむので、到着後はなるべく早く開封して容器に移すか未開封のまま冷凍か冷蔵保存をお願いします。

2022年1月現在の取り扱い銘柄は、

無農薬ペルー(カフェオルキデア)1000円/200g

無農薬東ティモール 900円/200g

無農薬メキシコ・カフェインレス 1100円 /200g

お問い合わせはこの記事のコメント欄またはFacebook「森のコーヒー焙煎所」からお願いします。
(文=ジョー)

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