こだわりの材料で自作する健康志向のカヌレ
カヌレが流行ってますね。
現地ではcannelé de Bordeauxと呼ばれる、フランスはボルドー地方発祥のこのお菓子、今は日本で第二次ブーム中なのだそうです。
TVも見ず、コロナ禍でこの二年というもの月に1~2度しか出かけないふもとの田舎街では、もちろんカヌレの存在を示唆するようなものはとんとお目にかかったことはないのですが、日頃パンづくりや世界の料理レシピをネットで検索しているので、ヒョンなことからカヌレのレシピ動画が出てきました。
このカヌレには思い出があって、実は四半世紀前に結婚式を挙げた時の引出物にしたんです。
インターネットの普及していない1995当時、カヌレの名も知らなかったんですが、その後にテレビや雑誌で突然カヌレ、カヌレと騒ぎ出したのを覚えています。それが今日で言うところの第一次カヌレブームだったわけですね。
そんな訳で田舎暮らしを始めてからも、カヌレ作れたらいいなあと、いつも心の片隅にあったのものの、何せカヌレを焼く銅型はあまりに高価で手が出せずにいたのです。
ところが、カヌレの動画が一つヒットするや、同じようなレシピ動画が無限に出てきて、どうやら今時は高価な銅製だけでなく、廉価な材質のカヌレ型が豊富に出回っていることもわかりました。時代は変わったんだなあ。
当然、無性に作ってみたくなってしまいました。
もちろんカヌレ型など持ち合わせていません。牛乳もありません。
バニラはエッセンスならありました。
小麦粉は自家栽培の無農薬小麦。
卵は自家自然卵。
なぜかラム酒もありました。
そこで、カミさんに「カヌレ作れるといいよね。カヌレ型って今時は安いのもあるよ」ともちかけたところ、
また道具が増えるのかといぶかったカミさん曰く「プリン型でいいでしょ?」
はい、プリン型でやってみました。
これがその試作第一号のプリン型カヌレ
四半世紀前に食べたのが最後だから、味も食感も覚えていない。果たしてこれがそのカヌレの味だったのか?でも、見てくれは悪いけど美味しいものには違いなく、カミさんも気に入ってあっさりと安いカヌレ型購入の許可が降りたのでありました。
ということで、金型を入手して試作の日々が始まりました。今日までに配合を変えて7回。
まあ、カヌレに関するウンチクもレシピもすでにネット上に溢れていて、そこにもう一つ付け足すのも気がひけるのですが、今回は我が家らしい健康的アプローチをご紹介したいと思います。
我が家のレシピ
その前にまず一つフランス人パティシエによるレシピ動画を紹介しましょう。
以下レシピを転載します。
■材料(15個分)
牛乳A 225cc
牛乳B 450cc
生クリーム(脂肪分35%) 75cc
バニラ 1g
バター 90g
グラニュー糖 338g
塩(フルール・ド・セル) 3g ※フルール・ド・セルとは、「塩の精華/精髄」を意味するフランス語で、良質の塩田から取れる大粒の天日塩である。
全卵 60g
卵黄 90g
ラム酒(オールドラム) 80cc
小麦粉(タイプ45) 285g
■作り方
1. 牛乳A、バター、バニラ、グラニュー糖を小鍋に入れ、一緒に沸かす。 2. バニラの香りと味わいが付き、グラニュー糖が溶けて煮立ったら直ぐに火から下ろし、ラップをかけて1時間寝かせる。
3. アンフュゼした牛乳を、こし器を使ってこす。
4. 冷たい牛乳Bに生クリームを加え、ラム酒、卵黄、塩、全卵を順に加え、混ぜ合わせる。
5. 4の液体とアンフュゼした牛乳を混ぜ合わせる。
6. ふるいにかけた小麦粉を加える。
7. 生地を冷蔵庫で1日寝かせ、カヌレ型に蜜蝋を塗っておく。
8. 寝かせた生地を、こし器の中でお玉を押し付けながら、こす。
9. 生地を型に流し、150度のオーブンで、1時間20分ほど焼く
10. 粗熱が取れたら、型から取り外して完成。
フランス菓子は魅力的なのですが、レシピ通りのバターや砂糖を入れるのは恐ろしくて勇気のいることです。というか、初めくらいはレシピ通りの分量でやればいいものを、どうしても全量の砂糖を入れることがでず、手が止まってしまいます。しかもグラニュー糖。
そこで、試作7回にしてほぼ決まってきた我が家のレシピの材料です。
材料(12個分)
●牛乳 450cc(またはバターミルクパウダー60gと水450cc)
●自家栽培小麦粉(パン用の強力粉)70g
●自家栽培そば粉 50g
●素焚糖 160g
●卵黄 2
●全卵 1
●バター 30g
●バニラペースト 小さじ1
●ラム酒 30cc
作り方は、フランスの動画よりずっとシンプル。
全ての材料を混ぜて、1日冷蔵庫で寝かせて、型に入れて焼くだけです。
と言っても、商品のように綺麗に焼くのはなかなか難しく、7回目にしてやっとコツを掴んだように感じています。
実際の作り方は日本語のYouTube動画だけでも無限にある(今もどんどん増え続けている)のでお気に入りを見つけて参考にして頂くとして、ここでは7回の試作の中で気付いた点をお伝えしたいと思います。
小麦粉は中力、練り過ぎてはいけない
多くの日本語のレシピでは、中力小麦粉を使うようにと指示されています。グルテンの多い強力粉を使うと、グルテンの膜が形成されて焼成時に膨らんでしまうからということです。
中力粉がない場合は強力と薄力を混ぜ、ビスケットなどと同様、生地を混ぜる時はあまり激しく練らずに、乾いた粉がないように水分を含ませる程度に留める必要があります。
そこで我が家では、自家栽培のパン用有機小麦に、グルテンのないそば粉を混ぜることにしました。まだ試してはいませんが、小麦の代わりに100%そば粉を使うこともできるようです。
砂糖はグラニュー糖でなくてもOK
どのレシピもグラニュー糖を使うこととなっています。理由は雑味がないからということのようです。
でも、もしあなたがグラニュー糖と上白糖の味の違いがわからないのなら、当然グラニュー糖にこだわる必要はありません。
本場のカヌレがどうであれ、家庭で作る場合は、美味しければOK。我が家では真っ白い上白糖ではなく、少し茶色い国産のサトウキビを原料にした「素焚糖」を使ってみました。
バニラはペーストがお勧め
本格的なレシピではバニラビーンを牛乳で煮て香りを抽出しますが。バニラビーンは高価だし手間がかかります。我が家では、「100%ピュア、砂糖不使用、コーシャー、増粘剤、保存料不使用」のNative Banillaのペーストを選びました。小さじ1杯がバニラビーンの鞘1本分に相当するとのことで、かなりお得だと思います。
バニラエッセンスは焼くと香りが飛んでしまうのでNGとのことです。
材料を混ぜる順番はどうでも良い
動画によっては、先に牛乳に砂糖を溶かしてしまう人、粉と砂糖を混ぜて、そこに卵を入れて撹拌する人などなど。要は粉がダマにならず、均一に混ざれば良いので、自分がやりやすいと思うやり方でいいと思います。
ボクは、牛乳の代わりにバターミルクパウダーを使うこともあるので(山の中に住んでいて牛乳の買い置きがないことが多いため)まず、
❶乾いたパウダーと砂糖をよく混ぜ合わせてから牛乳に相当する量の水を少しずつ注いで溶かします。ミルクパウダーだけだとダマになりやすいので。
❷、❶を火にかけ、バターと適量のバニラペーストを加えてよく溶かす。バターは「無塩」と指定しているレシピが多いですが、家庭にあるもので全く問題ありません。牛乳は沸騰させない派と、沸騰させて1日寝かす派がいるようですが、ボクは前者です。
❸分量の粉(ウチは小麦粉とそば粉)の入ったボウルに卵黄と全卵の混合液を加え粘りが出ない程度によく混ぜる。
❹、❸に60℃以下に冷ました❷の牛乳を数回に分け注ぎ、なめらかになるまで混ぜ、ラップでピッタリと蓋をして冷蔵庫で24時間寝かせる。これは生地を落ち着かせて「発射」という現象を防ぐ効果があるとのことです。(ウチでは冬季間中は冷蔵庫に入れなくても十分寒い)
裏ごしはしなくてもOK
プロのレシピは、バニラを煮出した牛乳をこして鞘(さや)と種を分離します。
バニラペーストの場合、バニラの種や繊維質が多少混ざっていますが、気になる場合は、粉に牛乳を混ぜる際に、最後に残るオリを残すようにする程度で、こし器を通す必要はないでしょう。
1日寝かせた❹の生地は焼く前に室温に戻しておき(冷たいまま焼くという説もあり)、カヌレ型に流し込む前に沈殿した粉をよく混ぜて濃さを均一にします。この時もプロはこし器にかけて滑らかにするのですが、ウチではこれもはしょって、ヘラでかき回すだけです。
家庭では洗う道具が増えるのはなるべく避けたいです。
離型剤は必ず塗るべし
滑らかにした生地を型の8割程の高さまで均等に注いだら、いよいよカヌレの焼成です。
アマゾンで購入した焼き型はテフロン塗装なので溶かしバターなどの油脂を塗っても弾いてしまうくらい。
伝統的には銅製の型に蜜蝋を塗って離型材とするのですが、結論から言うと、ボクが買った一枚に連結したテフロン型で綺麗に蜜蝋を塗るのは非常に難しいですし、そこまでする必要もありません。
少量の固形バターを直接擦り付けて指で隅々まで薄く伸ばしてやるのが楽だと思います。
これで焼成後の型離れも良好で、生地自体にもバターが入ってるので、毎回離型剤としてのバターは不要かに思えました。
ところが、何度か使うと糖分がこびり付くためか型離れが悪くなってきます。
型離れが悪いと型から外しづらいというだけでなく、カヌレの形が歪になってしまいます。
焼成初期には生地が沸騰して何割か体積が増えるので、一度型の高さを越えて盛り上がって来ますが、焼きしまってくると最初の水位位まで下がって来ます。
この時に型の内壁の滑りが悪いと思うように上下運動ができず、天井がドーム状に盛り上がったり、底に空隙ができて焼き色がつかなかったりします。
なので、テフロンとは言え、毎回離型材としてのバターの塗布は必須です。
いざ焼成
家庭のオーブンで焼く時は230℃で20分程度、その後190〜200℃に下げてトータル1時間前後焼きしめるとされています。
我が家では、カヌレは石窯でパンを焼いた後の余熱で焼いているので自動で温度設定というわけにはいきません。
その火加減を探るのに何度も試作を重ねているわけですが、パンを焼いた直後に生地を投入して、余熱だけで約1時間でちょうどよく焼けるようです。
途中火の通りを均一にするため、型の向きを反転させますが、これはそれぞれのオーブンの特性に応じて行なえばいいでしょう。
さていかがでしょうか?我が家では「なるべく手を抜いて、そこそこの成果を得る」ことが命題ですが、これでも十分美味しいカヌレが出来ますよ。
是非、ご家庭ならではの健康カヌレを作ってみてください。
(文:ジョー)