ロイヤルマッチの王、大丈夫か?

 すごくすごく嫌なことがあって、メンタルがブレブレになった時は、頭を無にするために毒にも薬にもならないゲームをする。今回選ばれたのは、ロイヤルマッチだった。

 インターネットの民なら知らぬものはいないだろう。ピクサー映画みたいな顔の王様を助けるために下手くそな3マッチゲームを披露し、失敗して王が死ぬ動画広告。あの広告を見るたびに、「親の顔より見た光景」という弾幕の幻覚を見える。

 ニート時代はキャンディークラッシュを極め、「キャンディークラッシュの王」として全世界から期待された過去を持っている私が再び3マッチゲームに手を出してしまったら……次こそ王座とお尻がぺったりくっついて、孤独の王として社会から断絶させられるのではないか……そんな一抹の不安を抱えながらも中途半端な自己破壊衝動で半身不随とかになるよりはマシと思い、インストールした。

 何も考えられないように、ただひたすらにゲームを進めていく。出てくるアイテムが城や王国にちなんでいるようで、ちなんでいたり、ちなんでいなかったりする。ミッションを限られた移動数で達成するというルールで、基本的にはキャンディークラッシュと一緒だが、途中で「王の悪夢」という一風変わったステージが登場する。これこそが我々インターネットの民が親の顔より見た光景である。

 ゲームとしてはこうだ。王が火事の渦中にいたり、猛獣と同じ檻にいたりと何かしらピンチの状況にある。普通のステージと違い、制限は移動数ではなく時間制。さらにブロックを消すことで道をつくる、特定のブロックを消すなど普段とは違うミッションが課せられる。ピンチの中、王はただただ怯えている。

 私は思った。王、なんて可哀想なんだ。

 一国の王なのに最初は城さえなく、チマチマと一つずつ場所を整理していく。周りには犬と執事がいるだけ。夜は疲れて眠りにつく。それなのに夢の中では炎に迫られていたり、目の前に猛獣がいたり、命の危険にさらされている。これでは休めるものも休めない。そんなしんどい中で、私がゲームに成功して王を助けられると「ありがとう!」と笑顔を見せてくれる。なんて健気なんだ。そもそも私がこんなゲームをしているばっかりに、不要な悪夢を見させられていると言うのに。

 人間の身勝手に、王は助けてもらえたと礼を言い、笑顔を見せる。そうか、このように民を大切にすることが、王の資質なのかもしれない。
とりあえず、王はこんな悪夢を見なくなるくらい、ゆっくり休んでほしい。睡眠薬とか、副作用に悪夢があったりするから、出来れば自然な眠りで……どうか……穏やかな日々を……

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