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良質な不信感 -「殺しへのライン」感想-

 結局GWは、家にこもって本を読んだり執筆をしたり紅茶を飲んだりパンを焼いたりする、ほとんどミッフィーちゃんみたいな生活をしていた。書いている内容はミッフィーちゃんとは程遠いけど。

 読んでいたのは、アンソニー・ホロヴィッツの「殺しへのライン」である。

 ホロヴィッツはカササギ殺人事件を読んで「なんかヤな話だなあ! 最高!」という経緯で好きになった。元々ミステリ好きなのもあるが、カササギ殺人事件は読み進めていくうちに何を信じたらいいのかわからなくなる。私は「劇的な変化があるわけではないけど、少しずつ少しずつ蝕まれていって気づいたら身動きができなくなっている」みたいな心理を描くのが上手い作家を信用している。

 殺しへのラインはシリーズ3作目で、1作目と2作目は未読で知らずに買ったのだが、本当に読んでいくうちに何を信じたら良いのか分からなくなって、終わってからも不信感に巣食われているような感覚が気持ち悪くて最高だった。誰もが少しずつ持っている人間の嫌さが相乗効果で最悪を生んでいて、読み終わった後は「私もこうなのか?」と思ってしまう。安全圏から見ていたはずが、気付いたら首元に刃が突き付けられている。穏やかなのに攻撃性が高くていい、その点においてのみ昔好きだった女の子に似ている。

 ケイト・モートンといい、創元推理文庫はなかなかいいミステリを翻訳していると思う。Homecomingの翻訳も待ってます。

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