フランスの幼稚園で2017年まで園児たちが歌い踊らされていたアジア人ステレオタイプ童謡
Chang est assis
Il mange un bol de riz
Ses yeux sont petits
Riquiquis
チャンは座って茶碗の米を食べてるよ
チャンのお目目はちっさいよ♪
リキキ(フランス語では卑小で貧相なものを馬鹿にした擬態語)
Chang me sourit
Quand il me dit :
"Veux-tu gouter a mes litchis ?"
チャンは私に微笑んで言ったよ♪
「僕のライチを味見する?」
T'es dans ton bateau qui tangue
T'as mal dans tes tongs
チャンはガクガク揺れるお船に乗って
草履履きでしゃちこばって(←Etre bien dans ses baskets スニーカーが似合うという、自分に自信があって落ち着いた状態を表す表現の裏返しか)
Tu vois des orangs-outangs
Ta tete fait ping-poing
Ping!
オランウータンを見て(←なんかこの表現に特別な意味あります?ツイッターのふらごぽん様のご意見が欲しいところ)
頭がピンポン(卓球)みたいに揺れて
ピン!(中国語の真似)
(以下は幼稚園で配られたバージョンにのってない歌詞の続き)
Chang boit du thé
Et du saké
C'est pour digérer
Son dîner
チャンはお茶とサケ(フランス語でsakéというと日本酒のこと)をのむよ。
夕ご飯の消化よくするために。
Chang à Pékin
Dans son jardin
Cueille du jasmin tous les matins
北京のチャン
自宅に庭で
毎朝ジャスミンの花を摘み取るよ♪
(最後だけは詩的ですね)
子が幼稚園生の時に「幼稚園で教わってきた」と喜んでわたしの前で踊った吊り目しぐさやしゃちこばった歩き方の動作が入った中国人についてのダンスとこの歌が衝撃で、幼稚園に「これはどういうことでしょうか? 私たちアジア人にとっては人種でステレオタイプ化した侮辱的な仕草だし娘がこういうダンスさせられるのは困るんですけど?」と話に行ったことがあります。
「また、うちは日本人とのハーフで中国人ではないけど、日本と中国には歴史的に軋轢があり、日本人の一部は中国人差別をする。だからこそ余計日本人のハーフである娘が中国人の前でこういうことをしたら困る」とも付け加えました。
アジア人もアジア系ハーフもその時はその幼稚園で娘一人だけでした。娘はまだ小さかったのでそれで傷ついたとか差別されたとかいう感覚はなく一緒に楽しく踊ってたみたいなんですが(ˉ ˘ ˉ; ) 、スタッフの一人は流石に何か気まずいことに気が付いたのか、娘に「あなた吊り目じゃないし中国人に見えないわねー」などと髪の毛を撫でながら言っていたそうですが。いやそういう問題じゃない(ˉ ˘ ˉ; )。
以上は15年近く前のマルセイユの、アジア系など私たちしかおらず、労働者階級の極右が多いような地区の話でしたが、このアジア人を極端にステレオタイプ化した変な童謡、なんと2017年に中華コミニュニティが告発するまで、フランス各地の幼稚園で園児たちに歌わせたり踊らせたりしていたようです。
全体に、ぎくしゃくとしゃちこばって動きもカリカチュアライズされた滑稽なアジア人の印象が歌詞でも描かれていますが、これがダンスにされてるわけです(笑)。それを幼稚園で先生や保母さんたちが園児たちに教えて園児たちが年末発表会とかで集団で踊るわけです(笑)
この歌は国からの差し止めでもう幼稚園では歌われないことになりました。2017年中華コミュニティがSNSで抗議しSOS racisme(反差別団体のNGO)に訴えて、SOS racismeがフランス文部省に、この歌を幼稚園の教育から削除させるように訴えたからです。
この最初にうつって話してるのが中華コミュニティの保護者アソシエーションの会長で、パリに隣接したオーベルヴィリエの2つの幼稚園でこの歌が配られたことを受け、彼がまずSNSに告発したそうです。
https://youtu.be/S8O7J852J-Q
どう思うかインタビューされてる他の人からは(「差別だと思う」という人しかインタビューされてないけど)「19世紀かよw」というコメントが。
幼稚園側は「外部からきてるバイトさんがやったことで幼稚園の先生が配ったのではない」と責任転嫁の言い訳をしています。私の娘の幼稚園ではばっちり先生がこの歌に振付して全員にやらせてましたが・・・。
この中華コミュニティの告発のおかげで、このことはメディアに大きく取り上げられ(フィガロ紙・HuffingtonPost等々)、いままで無自覚だった人もようやくこれが差別だということに気が付くようになったのです。
これはなまじ親が個人で学校に訴えにいってもその場で「こんなのは差別ではない」「差別しているつもりはない」と片づけられてしまったはずです。中華系保護者団体の会長として、SNSに広め、反差別団体にも報告し、反差別団体に国の教育省に働きかけてもらうというかたちで、メディアと集団をうまく使ったからこそ、物事が動いたのだと思います。
こんな歌詞と、吊目しぐさやしゃちこばった動作をアジア人にかぶせたダンスを幼稚園で先生や保母さんに教わって楽しく歌い踊って(笑)育ってきたフランス人たち・・とりわけ国際的な環境で仕事をするわけでもない人や、他の人に比べてとくに頭が良いわけでもない多くの人は、アジア人に対して吊目しぐさをしたりチンチョンチャン言うことが差別だということが、肌間隔としていまいちよくわかりません。
長年私たちアジア人が差別だと感じることも、フランス社会では差別と認識されてきませんでした。同じことをアラブ人やユダヤ人にすれば大問題になるのにです。最近話題になったサッカー選手のグリズマン(フランス人)は、バルセロナチームの公式ビデオでチンチョンチャン言ってますが、自分のツイッターで、「私は常にあらゆる差別に反対してきた。自分がアジア人差別したなんて不当な非難。断固抗議する」と差別であることを否認しています。多分彼にはアジア人をまねてチンチョンチャン言うことが差別だという認識がないのでしょう。
それはアジア人が抗議をしてこなかったからです。しばらく前から、デモや反差別団体を通すなど、「フランス式のやりかた」で抗議をするようになった中華コミュニティのおかげでその状況がかわってきています。