見出し画像

モダンバイオリンをバロック化(低予算版)

チェンバロの生徒に室内楽の授業をするために、子供の頃ちょっと習ったバイオリンで自分がメロディーを弾くことが増えた。バイオリンは私はうまいわけではないし、最初は415hzに調律しなおして弾いているだけだったのですが、今年からバロック室内楽の授業もはじめて、バイオリンをはじめとする他楽器の生徒を指導することも増えたため、思い切って自分のバイオリンのバロック化に乗り出すことにしました。

ただし低予算で

1.バロックボウを手に入れる

まずは弓。モダンボウよりも軽くて短いバロックボウが欲しい!
バロックボウを買った生徒(大人)によると「んー、アマゾンのはだめでしょ。まあ予算が2000ユーロぐらいあれば、バイオリン製造者のところで好きなの選べるんじゃないかな」。
😱
でも、私、猫の病院代もあるしiPhone 8 Plusもそろそろお釈迦になりそうだし、子供の頃バイオリン1年やっただけのレベルで弓に2000ユーロはちょっと・・・。 

オペラ座のバイオリニストをやっていてバロックをやることも多い友人に話したところ「とりあえず始めるのが先。あなた2000ユーロたまるの待ってたら80歳になるわよ。アマゾンでも中国製でもとりあえず安いのでいいから最初はそれでやりなさい」と背中を押してくれた。

そこで他の誰もが「やめたほうがいい」というアマゾンで59ユーロのバロックボウをポチりました
こちらのアマゾンジャパンのと同じです(セラーも同じ。多分中国です)。日本のほうが安くて悔しいな。

やっと届いたら見た感じ悪くない。毛も本物だしきちんと木でできます(個人的にはプラスチックでできたようなものが届いても泣かないと覚悟してました…)。毛はモダンボウよりかなり少なめ。バロックボウというと弓の背中が丸いイメージでしたがこれはわずかそりぎみなタイプ。また、弓の張りの調整は自分で皮など挟んでやるものだと思っていましたが、ネジで調整できるようになってました。これはこれで便利。見た感じはかなり丁寧にきちんとできてるかんじです。バロック後期風の弓なのかな。

左が59€の中国製バロックボウ。バロック「風」ボウと書いてあったので届くまで心配しました

さっそくバイオリンにあててみるが音が出ません。やっぱりAmazonでポチった安物だから?😱

いやいや、すっかり忘れてたけど、そういえば新品の弓って、松脂塗らないと音が出ないのでした。これはこれで夜中に練習したいときに便利!と思いましたがやっぱり音が出たほうがいいので、バイオリンケースにずっと前から残ってカチカチになっているPirastro Eudoxaを塗ってみますが全く変化がありません。

マルセイユのバイオリン工房できいたら、10年以上たった古い松脂は使えないとのことでした。確かにこの松脂の箱にはmade in West Gemanyと書いてあります(ˉ ˘ ˉ; )。今までモダンバイオリンの弓に一生懸命擦り付けてたのはなんだったのでしょうか。いくら滅多に弾いていなかったとはいえ(3年に一回ぐらい出して弾いてみてた)、道理でバイオリンが汚れなかったわけだ。

古すぎてカチカチになった松脂。こうなるともう使えない。
見て見て。Made in West Germanyって書いてある。きゃっほう(^o^)

2.バロックバイオリン用の松脂

絶対バロック用でなくてはいけないわけではありませんが、弓に塗る松脂も、バロック用のものがあります。私が試したのは以下の2個です。

手前がCecilia solo、右後ろがMelosバロックバイオリン用

Melos バロックバイオリン用  ギリシア製 22€
弦のつかみががっしりしていいかんじですがざらつき感が初心者レベルの私には少し辛い感じです。 日本のアマゾンではこちら。

Cecilia solo (旧Andrea Solo) アメリカ製  30€ こちらは初心者レベルの私にも音が出やすく弾きやすいと感じました。日本のアマゾンではこちら

2023年3月19日追記。しばらく使ってたら使用感がなぜか逆転しました。メロスのほうがあっさりしていて、Cecilia soloのほうがつかみが強い感じです。私の場合はソロよりも自分のチェンバロの生徒と室内楽やるときや、室内楽の生徒のバロックアンサンブル指導するときに使うことが多いのでメロスの出番が多くなってきました。

3.手始めに上の2本(EとA)をガット弦に替える

というのはエクスのコンセルバトワールのバロックバイオリンの先生のアドバイスでした。バイオリン製造者のところで「なぜ上の2本だけをすすめられたのか?」ときいたら「せっかくバロック化に踏み切った人が、調弦が常に狂いまくり弦がよく切れるのに慣れるまでは、うんざりしないように、上の2本だけといったのだろう」とのことでした。

ガット弦というのは腸で作った弦のことです。人間のではなく羊の腸です。思えばバイオリンとは、羊の腸を、馬のしっぽの毛に樹液の塊を塗りたくったものでゴシゴシと擦るなんとも野蛮な楽器なのですね。

2023年3月19日追記。やはりガット弦のほうが四六時中調弦が必要なので「初心者はE弦とA弦だけまずガット弦に」は良いアドバイスでしたが慣れてくるとA弦とD弦続けてパッセージひいたときのひびきのちがいが気になってきます。次はD弦もガット弦にしようかな。

マルセイユのCharles-Luc & Camille Hommelの工房
ガット弦に替える前にあちこち削ります。
鼻のない顔みたいになったバイオリン
駒も少し削ります
E弦とA弦だけガット弦にしました!

ちなみにガット弦は、フランスでは一番安い、Savarezのです。

運が良ければ1パッケージから2本とれる。

これで私もバロックバイオリン奏者なのです。ウィリアム・クリスティからのワールドツアーもしくはテオティムからのバイオリンデュオのお誘いを待っています。

といいたいところですが、まだ駒をかえてないとか、指板をかえてないとか、複数バロック化するべきところは残っているのですが、金欠なので当分このまま続けるのです。


いいなと思ったら応援しよう!