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心房細動のすべて

心房細動解説

【原因】
心房細動は90%以上が肺静脈からの期外収縮で発生します。肺静脈は左房に血液が戻ってくる血管であり、上下左右に計4つの肺静脈が存在します。それらから発生した期外収縮が左房に伝導し、マイクロリエントリーという小さな回路をたくさん形成することで心房が細動します。
【分類】
心房細動は心房が細動するために、P波が消失し細動波が出現し、RR間隔がバラバラになります。心房細動はいろいろな分類方法があります。
 


(症状による分類)
・症候性/無症候性心房細動:症状があるかないか
 
(弁膜症による分類)
・弁膜症性/非弁膜症性:弁膜症(主に僧帽弁狭窄症)による心房細動かどうか
 
(持続時間による分類)
・発作性心房細動:持続時間が7日以内
・持続性心房細動:持続時間が7日を超える
・長期持続性心房細動:持続時間が1年を超えるが洞調律維持を考慮し得る
・永続性心房細動:洞調律復帰が困難なもの
 
(V1の細動波の波高による分類)
・Straight -line type:V1の細動波の波高が<0.5mmであり、基線と区別が難しい

・Fine type:V1の細動波の波高が<0.5mm

・Coarse type:V1の細動波の波高が0.5-2.5mm

・Very coarse type:V1の細動波の波高が>2.5mm

【治療】

心房細動の治療にはレートコントロールとリズムコントロールがあります。レートコントロールとは心房細動を止めるというものではなく、心拍数を安定させようとするものであり、リズムコントロールとは心房細動そのものを停止させようとするものです。両者の予後に差はないとされています(N Engl J Med 2002; 347:1834-1840)。ゆえに、高齢者や症状のない人においてはレートコントロールが行われます。ただ洞調律を維持することによるQuality of Life(QOL)改善効果や脳梗塞予防効果が報告されてはいるため(Cir J 2009; 73: 242-248. Eur Heart J . 2016 Aug;37(31):2478-87)、若年者や症状に困っている人は積極的にリズムコントロールを試みます。薬物での治療が困難な場合、カテーテルアブレーションの適応となります。カテーテルアブレーションの基本戦術は肺静脈を隔離することです。前述のように肺静脈からの期外収縮が心房細動発生の起点になるため、肺静脈と左房をつなぐ部分を電気的に焼灼します。すると電気的に肺静脈が隔離されるため、心房細動の発生を抑えることができます。一定数は肺静脈隔離では心房細動完全に抑えることができず追加でアブレーションを行うこともあります。
 もう一つ心房細動患者において大事なことは脳梗塞予防です。心房細動そのものが致死的なものではありません。しかし心房が細動すると血液の流れがよどみ、左房内にある左心耳というくぼみに血栓ができやすくなります。血栓が形成され、それが血流にのって脳血管に飛ぶと脳梗塞を起こします。心房細動がある人はない人に比べて脳梗塞リスクが5倍上昇しますので、元々のリスクが高い高齢者や高血圧の持病を抱える人には抗凝固薬という血液を固まりにくくする薬を使います。

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