ペースメーカチェックで見るべきポイント(作動設定)
👨【藤澤】
「今回はペースメーカチェックの時に、見るべきポイントをおさらいしておきます。」
👩【研修医】
「実はMEさんに任せきりで、自分でやったことはありません。いつも言われるがまま、異常はないということでそのままにしてました。しっかり勉強します。」
👨【藤澤】
「なんとなく電池寿命を見ればいいというものではないですからね。患者の状況は刻々と変わりますので、その時の状況にあった設定なっているのか確認することは大事です。まず基本として、ペースメーカのチェックは、原因疾患に合わせた設定が適切かどうかを確認するところから始まります。例えば、房室ブロックの患者にはデュアルチャンバー設定、洞不全症候群の患者にはAAIやレートレスポンス設定が必要かもしれません。」
👩【研修医】
「…いきなり難しいです。先生。」
【藤澤】
「ごめんごめん。ゆっくりいきましょう。まず基礎疾患と設定については2章の5でやりましたね。手帳に書いてあるはずですが、基礎疾患に対して適切な作動様式になっていないのは論外です。例えば、房室ブロックで自己の心房波はあるのにVVIになっている、とかです。これは自己をセンシングできる設定にするべきです。他にも実は永続性の心房細動になっているのにずっとDDDになっている、とかですね。心房波をセンシングする意味はもはやないでしょうから、VVIあるいはVVIRにしてあげてもいいでしょう。」
👩【研修医】
「ここまではついていけます。」
👨【藤澤】
「では続けます。次に心拍数です。患者さんが必要とする心拍数に合わせたペーシングが設定されているかを確認します。」
👩【研修医】
「これはあまり気にしたことがないかもです。大体下限は50-60bpm(beats per minutes)、上限は120-130bpmくらいのイメージでした」
👨【藤澤】
「イメージは間違っていないです。普通はそれくらいで問題はないでしょう。例えば下限レートの話です。房室ブロックで安静時洞調律レートが55bpm程度であるなら、電池を温存する意味では50bpmで設定してもいいかもしれません。60bpmに設定すると心房にもペーシングが入ってしまいますので。他に洞不全症候群の心不全合併症などで心房興奮が自分で上げられない患者には、あえて心房ペーシングレートを上げて分時拍出量を維持させることもあります。」
👩【研修医】
「何も考えずに、下限60bpmにしてました。」
👨【藤澤】
「チェックの時に自己脈のレートを確認したり、ペーシング率を確認したりすることでこれらの確認は可能です。次は上限レートの確認です。心房レートは上がっているのか、上がったときの心室の調律は自己なのかペーシングなのか、これらもレポートに書いてあるので確認します。例えばVVI60bpmの設定でペーシング率100%とすれば、この患者の自己脈はなく、ずっと60bpmで打ち続けているわけです。でも運動したり、働いたりすると普通の人でも一時的に心拍数は上昇することがありますよね。」
👩【研修医】
「ずっと60bpmだと倦怠感が出るかもしれませんか。」
👨【藤澤】
「鋭いですね。もちろん活動性が低ければ症状がないことはありますが、活動性の高い人や若年者においては注意してみておく必要はあります。労作時の息切れがあるならば設定の調整を検討します。どうしたらいいと思いますか」
👩【研修医】
「下限レートを80bpmに上昇させるとか、レートレスポンスをつける、でしょうか」
👨【藤澤】
「どちらもありですが、ここは高嶋さんの案を採用しましょう。レートレスポンスをつければ、心拍応答を感知してペーシングレートを上昇させることが可能です。詳細は4章5でもお話しします。」
👩【研修医】
「実は色々見ないといけないのですね。」
本日のまとめ
・基礎疾患と設定があっているか確認する(心房波を見る必要があるか)
・適切なレート設定になっているか確認する(下限はそれでいいか、上限は足りてるか)