なんでゲームって悪者なのか聞いてみました【インタビュー】
こんにちは!note更新担当のたぬ子です。
令和3年11月13日(土)に愛媛県県民文化会館全体を使って、『eスポーツフェスティバル~ポプカルえひめ~』を開催しました。
今回は、『eスポーツフェスティバル~ポプカルえひめ~』で講義をしていただいた、愛媛大学大学院医学系研究科精神神経科学講座 特任講師の河邉憲太郎先生をご紹介します。
医師として、このイベントどうでした?
―『eスポーツフェスティバル~ポプカルえひめ~』はいかがでしたか。
とてもいいプログラムだなあと思いました。
会場入ってすぐのところで、未就学児向けの体力テストをしてましたよね。講義で「eスポーツでも、体力って大事なんだよ!」と話をするので、ちゃんと体力面のブースもあってよかったです。
あと、真珠の間でしてた格闘ゲームのブースは熱気がすごかったですね。他のブースとは雰囲気が違って、あれこそがゲーム好きによるeスポーツの空間なんだろうと感じました。
県文全体がフェスティバル会場になっていましたが、1階や入口に近い場所をライト層ブース、2階の奥まった場所をコア層ブースにしていて、それぞれが自由に楽しめる環境になっていたので、いいブース配置だったなって思います。
―eスポーツ事業を広めていくためには、どうしたらいいと思いますか。
とっつきやすいゲームから始めていくといいんじゃないですかね。
野球とか、サッカーとか現実にあるスポーツのゲームだと印象はいいと思いますよ。
ゲームとの程よい距離感を大切にしよう
―ゲームに対して保護者から様々な意見があると思いますが、それぞれどのようにお子さんと接したらいいのでしょうか。
極端な例というのは、賛成でも反対でも難しいんですよ。
まず、「プロゲーマー目指していいよ!」っていう賛成派の方。
これは講義でもお話したんですけど、プロを目指すほど本気でゲームをやるんだったら、コーチが必要だと思います。
ただ、プロ野球選手を目指す子が少年野球クラブに入るように、どこかに所属できればいいんですが、ゲームの文化ってそういうのが無いんですよ。
だから独学でずーっとゲームをするっていう環境に、どうしてもなっちゃうんですよね。
そんな環境だからこそ、保護者が努力をして知識をつけることが必要だと思うんです。
少年野球クラブだって、お茶やお弁当を作ったり、練習に付き合ったり、保護者が子どものために努力をして支えてあげてますよね。
そして、”プロになれなかった時のこと”や”なるために頑張ること”を、お子さんとよく話し合ってください。
お子さんの決意も必要ですが、保護者がどれぐらい本気で「プロにさせたい」と思っているのか、どこまで努力できるかが大事になります。
次に、「ゲームは絶対ダメ!」っていう反対派の方。
これも、あんまりよくないです。
イギリスの研究結果なんですけど、全くゲームをさせないグループ・適度にさせるグループ・好き放題させちゃうグループの3つに分けたところ、もちろん好き放題させちゃうグループが1番問題が多かったんですけど、全くさせないグループでも問題が多かったんです。
―適度にゲームと関わっていくのがいいんですね。
そうですね。
そして、お子さんの場合は保護者がちゃんと管理することが大事になってきますね。
”日常生活<ゲーム”は危険信号!
―ゲーム依存の兆候は、いったいどんなものがありますか。
簡単に言うと、日常生活よりもゲームを優先するようになると依存の心配があります。
例えば、夜寝なくなって生活リズムが狂ったり、食事など生活における大事なことを後回しにしてしまったり、勉強や学校の予定をこなせなくなるなどですね。
あとは、ちょっと嘘ついちゃうとかね。
ゲームやってる時間を少なく言ってしまうとか、コッソリしてしまう。
そういうところも心配な兆候です。
―依存してしまう原因はあるんですか。
依存っていろいろあるんですけど、有名なのは薬や覚せい剤などの薬物依存やアルコール依存ですよね。
これらは薬やアルコールといった物質に依存してるんですけど、ゲームは”ゲームをすること”に依存する行動依存なんですよ。
行動依存だとギャンブルが有名なんですけど、ギャンブルって賭けごとなので、勝てば報酬があって楽しいし、負けると損を取り戻したくなるんですよね。
最近のゲームは「ランキング上位になりたい」とか、「ガチャでいい景品を当てたい」とか、競争意欲を出させる仕組みがたくさんあって、どんどんギャンブルの性質に近づいてきているんですよ。
自覚することが第一歩
―依存から、どうやって抜け出せばいいのでしょうか。
依存の治療は、自覚することから始まります。
自分の状態を客観視できてない人が多いので、「ゲームやりすぎてるな」とか、「このままじゃまずいな」って気づくことが、第一歩なんですよ。
「今の状態でいいんだ!」ってなってる人には、なかなか治療できないですね。
―自覚したら、次はどうするんですか。
次は、「どうやって依存をやめていこうか」という相談になります。
いきなり依存をゼロにすることはできないので、「少しでもいいからゲームをする時間を減らそう」とか、「他にやることをみつけようか」とか、そういう対策になっていきます。
お子さんの場合、保護者の力が必要なんですが、話し合いが上手くまとまらないことが多いですね。
―「ゲーム禁止!」と取り上げて、ゲームから離そうとするのは相当無理があるんですね。
そうなんです。
小学校低学年ぐらいまでは、取り上げることに効果があるんですけど、大きくなるとあまりうまくはいかないですね。
ある程度の年齢になると、取り上げても自分で買ったりできますし、一方的に取り上げるというのは子どもからすると、すごく理不尽ですからね。
ゲームは”コミュニケーションツール”
―「嫌なことから逃げたい」と思った時、どう対処すればいいでしょうか。
誰にでも起きることですから、壁や困難を乗り越える経験が大切になります。そのためには子どもの力だけではなく、保護者や友人など様々な人からのサポートが大事です。
子どもたちには、親に言えないことを話せる友人ができたり、自信がもてる趣味ができたり、たくさんの出会いが待っています。そういう出会いを大切にしてサポートしてもらいつつ、友人や家族をサポートできるようになるといいですね。
また「現実逃避がしたい」となった時にこそ、親しい人からのサポートが必要だと思います。
ゲームでも一緒に遊べるものにしたり、一緒にどこかへ行ったり、何をやってもいいんですけど、1人ではなく一緒に気分転換をしたほうがいいですね。その方が、周りの人に支えられているって感覚が湧いてくるんですよ。
―親しい人からのサポートが大事なんですね。
子どもにとって保護者の存在は、いくつになっても大事です。
ゲームに限らず”依存になるか””予防できるか”は、保護者の力量によるところがすごく大きい。
ですので、『eスポーツフェスティバル~ポプカルえひめ~』は、ゲームをやっている本人ではなく、保護者の意識を作っていく場にできればいいと思います。
保護者が一緒になって遊べると1番いいんですが、子どもの遊んでいる姿を後ろから見ているだけでも充分なんですよ。
ゲームはとても便利で子ども1人でも遊べてしまうので、ゲームしている間に家事や他のことをしてしまいがちですが、「どんなことをして、楽しんでるのかな」って見てあげれるといいですね。
―お絵かきや、絵本の読み聞かせのようにゲームと関わっていくといいんでしょうか。
そうですね。成長に合わせてぬりえや絵本を選ぶように、ゲームも保護者が適齢期を判断してデビューさせるといいですね。
またゲームは、子どもとコミュニケーションをとるためのツールと考えるのがいいと思います。
ゲームデビューするまでの遊び相手は、保護者や兄弟・友達といったリアルの人だったのに、デビューした途端その相手をゲームに任せてしまっている。
そこに、危険性があるんでしょうね。
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