審判(誤審)問題が生まれる理由と解決策の方向とは?「あなたはJリーグの審判に満足ですか?」不満は31.3%サポーターによるアンケート調査から考える。
審判(誤審)問題の生まれる理由は?その解決策は?Jリーグ25年間に様々な角度から語られてきた、この話題を、Jリーグサポーターを対象にしたアンケート調査から探る。
このアンケート調査は、おそらく長く語り継がれるであろうJ1 2018年第33節、清水エスパルス対ヴィッセル神戸の直後2018年11月27日から29日に行った。回答者数は300。この試合では、ファールの見落とし、長すぎたアディショナルタイムといった審判団の不手際が話題となっている。
あなたはJリーグの審判に満足ですか?不満は31.3%
「やや不満」を加えれば全体の60%以上が不満という回答をしている。しかし、審判の判定に全て満足というサポーターはスタジアム内で稀な存在であることを考えれば、いわゆる不満は31.3%と考えて良いだろう。
アンケート調査実施前の予想と比較すると、意外と不満は少ないと感じる。参考となる指標を探すことに苦労したが、一つだけネット検索で見つかった。
「審判を信頼していますか?」という質問に62%のTIFOSI(サポーター)が「信頼している」と回答したのはイタリア。これは「カルチョポリ」と呼ばれるユヴェントスによる不正が発覚した直後のアンケート調査結果だ。
「誤審をした審判に対する処分強化」「審判からの情報発信強化」を求めるサポーターが多いが、ほぼ同数のサポーターが「サポーターのルール理解向上」も求めている。
ネット上に顕在化されるサポーター世論の通り「誤審をした審判に対する処分強化」を求めるサポーターが最も多い。併せて「審判からの情報発信強化」も求められている。ただし、これは文字通りの要求ではないだろう。テレビの情報番組や週刊誌を見ての通り、今の日本では「謝罪を求める」「復讐(報復)を訴える」ことが一種のエンターテイメントとなっている。「審判からの情報発信強化」の中には「偉そうにしている主審が謝罪するのを見てみたい」という声が多く含まれているであろう。「誤審をした審判に対する処分強化」も「復讐(報復)を訴える」ことの一種であろう。それは、もう一つのアンケート調査結果との矛盾で明らかになっている。
あなたは、どのようにすればJリーグの審判問題は解消されると思いますか?(3つまでお選びください)
「誤審をした審判に対する処分強化」を求める一方で、審判に課せられてきた処分や処置を知らないサポーターが圧倒的多数。
「誤審をした審判に対する処分強化」を求めるサポーターと同様に、サポーターの多くは、誤審をした審判に課せられてきた処分や処置を知らないことが明らかになった。サポーターの一部には「現在の処分や処置が軽いのか重いのかを知らずして処分強化を主張している」という大いなる矛盾が生じているのだ。
「処分しろ!罰を与えろ!現実は知らないけど」という姿勢が感じられる。
ちなみに、実際には、過去にJリーグでは誤審をした審判に対する厳しい処分や処置を行っている。
自分では見えていないが「試合中の選手・監督のアクションから誤審だと判断するサポーター」が10%以上もいる。
10%というのは小さい数字に見える。しかし、スタジアムに20,000人の人がいたとすると2,000人もの人が、自らの目で見ることなく「試合中の選手・監督のアクション」を根拠に「誤審だろ!」という感情を抱いていることになる。
そのようなこともあり、MCタツさんは、サポーター主体でルール理解力をレベルアップして正しい判定を求めていくことは難しい妥当と考えている。「まず選手が審判をリスペクトする環境」を作ることが大切ではないか。
何があっても選手の全てを応援するというサポーターは多い。先の質問の回答の一つである「選手・監督のルール理解向上」を審判(誤審)問題解消の方法に上げている人が22.3%にとどまっていることも、おそらく同じような理由からであろう。選手が審判に尊敬の態度をとり、正しい判定には反発することなく受け入れていくことが審判(誤審)問題解消には必要なのではないか。
サポーターが審判(誤審)問題の解消を求める声は逆効果になっているのではないだろうか。
1990年代~2000年代初頭に世界的レフェリーとして活躍し、今年1月からFIFAの審判委員会長を務めるピエルルイジ・コッリーナ氏は、レフェリーへの不当な振る舞いが世界レベルで広まっていることに危機感を露わにした。
「誤審が適切に指摘されることが、今後の防止につながる」「判定に対する論議がタブーであってはならない」それは正しい。誤った判定については、それを共有し「なぜ誤審が起きたのか」原因を多くの人が理解できるようになれば全体のレベルは向上し誤審は減少するし、誤審が発生した時のトラブルも最低限で抑えられるようになるだろう。先のアンケート調査の結果にあるように情報発信は重要だ。しかし、感情の赴くままに無根拠に審判を糾弾するようなことが繰り返されれば、審判を目指す人材は減少し、審判(誤審)問題は逆に拡大するのではないだろうか。
たぶん多くの選手は勘違いをしている。もしかしたら審判の中にもそういう人がいるかもしれないのだが、審判には権威などないのだ。審判の権威は守られているだけのものであって、審判自身が偉いわけでもなければ、ミスをしないわけでもない。
スポーツライターの西部謙司さんは「審判と権威」で書いている。権威ある存在を作っておかないと、誰もルールを守らず、誰の言うことも聞かず、やりたい放題ではサッカーにならない。つまり、選手は自らを守り、サッカーを成立させるために、審判という仮の絶対権威を作って容認している。
この基本的な審判のスタンスを多くのサポーターと選手は、時に忘れてしまっていることがある。
このような機会により、あらためて「審判とは何なのか?」「審判(誤審)問題が生まれる理由は何なのか?」「どうすれば審判(誤審)問題は解決するのか?」をサポーターは自らの胸に問いかけ、今後は、答えを探しながらJリーグと付き合うことが必要だろう。
こちらのイベントの登壇することになりました。ぜひお越しください。
お申込みは画像のリンクより。
12/19(水) OPEN 18:30/START 19:30/END 21:30予定
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