ブルーノメンデスのチャントはなぜバズったか?ちゃんとしたチャントの話
ブルーノメンデスがどのような選手なのかを知らなくても、その名を、そしてあのメロディを知っている人も多いのではないか。2019年6月22日夜、突然にブームはやってきた。発端はゆうぽみTVで人気のぽみさんがツイッターに投稿した動画だった。
何度も脳内でループする中毒性の高いチャント。
この動画は2日間で60万回以上も再生され「チャントが頭の中でループ再生される」中毒患者が続出。今や「日本で最も有名なチャント」の一つに仲間入りした。
なぜブルーノメンデスのチャントはなぜバズったのだろう?
単純に歌っている4人のセレ女がカワイイというのは大きな理由だ。そして歌っている様子が楽しそうだ。だが、それだけではなさそうだ。
そもそもチャントとは何だろう?
世界で人気のチャントを動画で見てみた。まずはイングランド。Jリーグほど楽器を使うことはなく、即興でチャントが起きることが多いとされている。
辞書の説明だと少しイメージが違う。
チャントとは?このように書かれている。「詠唱」「スポーツの試合などで、観客が声をそろえてかける掛け声や応援歌」・・・詠唱?掛け声?Jリーグでは「コール」と呼ばれている掛け声もチャントに含まれていることがわかる。
多種多様な人種の集まるNYで育ったWWEのチャントは「コール」が大半。
この動画を見ていただくと「おやっ?」と思う人も多いだろう。歌ではなく掛け声がほとんどなのだ。様々な人種、様々な母国語を使う人々が世界中で楽しむWWE(世界最大のプロレス団体)では、英語が苦手でも誰もが覚えられる、短くて簡単なチャントで、観客がスポーツエンターテイメントに参加する。観客には、いわゆる「いちげんさん」が多い。サッカーのようにシーズンチケットがあるわけではないのだ。
精選版 日本国語大辞典によるとチャントには「聖歌」の意味もある。
チャントは「 グレゴリオ聖歌などの教会聖歌、また『詩篇』の朗唱など典礼音楽の総称」なのだそうだ。YouTubeで検索してみるとグレゴリオ聖歌は英語では「gregorian chants」と書くようだ。グレゴリオ聖歌は世界で最も古い聖歌といわれる。
「単旋聖歌(plain chant)」とも呼ばれ、無伴奏、単旋律。集団による抑揚を伴う朗読からの発達のなごりをとどめている。当初200年以上は楽譜がなく口伝えだった。つまり、楽譜がなくても覚えられた。
ブルーノメンデスのチャントは短い。歌詞が単純。
ブルーノメンデスのチャントを思い出してほしい。すぐに思い出せるはずだ。メロディも歌詞も単純でとても短い。だから、セレッソ大阪のこともブルーノメンデスのことも知らない人でも、すぐに覚えることができたのだ。
複雑で長くなりがちなJリーグサポーターのチャントに一石を投じるニュースだった。
年間チケットで、いつもスタジアムに通っているサポーターは複雑なメロディでも歌詞でも覚えることができる。だが、いわゆる「いちげんさん」は、短く単純なチャントしか覚えられない。そして、新しい仲間のほとんどは「いちげんさん」から始まる。それが現実だ。
無伴奏、単旋律な「単旋聖歌(plain chant)」こそバズる重要な理由だったのではないか。そして、スタジアムで仲間を生み出し多くの人に大きな声で歌われやすいチャントも同様だろう。
こちらは続編です。