「ロストフの14秒とアジアカップ」森保日本代表監督が記者会見で「マリーシアを学ぶ」と発言したのはなぜか?サポーター視点で考える。

「マリーシア」という単語を聞いて、どのようなプレーを思い出すだろう。どのような選手を思い出すだろう。大久保嘉人?小笠原満男?ある意味、そのイメージは正しいかもしれないが、多くの人は本当の意味を取り違えている。

ジーコは「マリーシアが最も身についている日本人選手はカズだ。」と発言している。

森保日本代表監督が記者会見で「マリーシアを学ぶ」という趣旨の発言をした。日本人には、いまだに、マリーシアが足りないらしい。

「日本人にはマリーシアが足りない」というインタビューが雑誌の掲載されて30年が経った。しかし、それでも森保日本代表監督は「日本人にはマリーシアが足りない」と言う。

日本で初めて「マリーシア」という言葉を使ったのはオスカー(FIFAワールドカップ1982スペイン大会ブラジル代表主将)だ。1987年に日産FC(現横浜F・マリノス)に加入したオスカーは雑誌のインタビューで「日本人にはマリーシアが足りない」と発言した。

同様に外国籍選手で「マリーシア」について発言しているのはドゥンガ(FIFAワールドカップ1994アメリカ大会ブラジル大会主将)。オスカーと同じく「日本人にはマリーシアが足りない」という意味の発言をしている。

「シャツを掴む」「シミュレーションで審判を欺く」「見えないところで肘打ちをする」と言ったこととは縁の遠いカズ、そして、守備面が特徴的なオスカーとドゥンガと「マリーシア」との関係に疑問を感じた人がいたとしたら、あなたは、きっと「マリーシア」を誤解している。先に挙げた卑劣な行為の数々は「マランダラージ」と呼ばれている。

「マリーシア」は「ズル賢さ」と訳される。オスカーが発言した当時の日本サッカーは1-0でリードをしていても試合終了まで真正直に攻め込むことが当たり前だった。状況に合わせて時間を使いながら試合を組み立てるという発想がなかった。相手の力や前掛かり具合を利用して逆を突いてボールを動かすことも出来なかった。時間を使うプレーも出来なかった。例えばイエローカードを1枚もらっている選手にあえてドリブルで突っかけることも、後ろでボールを回して相手が前に獲りに来たタイミングで縦パスを入れるようなことも稀だった。いわゆる「自分たちのサッカー」だけをやろうとしていたのが日本サッカーだったのだ。あれから日本サッカーは劇的に進歩を遂げた。しかし、オスカーの発言から30年を経ても「日本人にはマリーシアが足りない」と言われる。

NHKスペシャルにより「ロストフの14秒」と呼ばれる残酷な結末を見れば「日本人にはマリーシアが足りない」現実から目をそらすことができなくなる。

ベルギー代表戦アディショナルタイムのカウンターによる失点には、グループステージ第3戦ポーランド代表戦での時間稼ぎが影響していると言われている。ポーランド代表戦では、そのままの得失点であればグループステージ突破を出来る状況で、日本代表が長時間のパス回しを行なった。それがスタンドから大ブーイングを受けた。そのパス回しはサッカーの世界では普通のことであるが、日本国内の多くのサポーターからも大きな批判の声が上がった。本田は「ただただブーイングを送っていた、面白いサッカーを見たかったファンには申し訳なかったと思う」と「謝罪」のコメントを残した。

「謝罪」をしたグループステージの記憶を残したまま、日本代表はベルギー代表戦を迎え、残り時間がわずかであるのにも関わらず攻めに徹して失点。敗退となった。NHKスペシャル「ロストフの14秒」では2つの試合の関係性についても触れている。

森保日本代表監督の「マリーシアを学ぶ」は選手だけではなくサポーターにも必要なこと。

サッカーはサポーターも含めた総力戦で決着がつくスポーツ。ベルギー代表戦「ロストフの14秒」が起きてしまった原因の一つに、多くのサポーターからの「勝負してほしかった」という批判の声があったことがNHKスペシャル「ロストフの14秒」で明らかになった。「マリーシアが足りない」のは「選手」ではなく「日本人」だったといえる。多くの日本代表選手は「マリーシア」を身につけている。しかし、森保日本代表監督は、あえて「マリーシア」という単語を用いて、日本中に発信した。そのメッセージをサポーターとしてどのように捉えるか。

一つ提案がある。「マリーシア」は「ズル賢さ」と訳される。この「ズル」を外すことはできないか(この提案をしているのは私だけではない)。本来の「マリーシア」は試合や対戦相手の状況に合わせて駆け引きをする「賢い」プレーであるはずだ。

「ズル」という表現が加わっているがために、日本人には「マリーシア」が理解されていないのではないか。

あなたも「マランダラージ」と「マリーシア」の違いを理解して、応援するチームが賢く勝利に近くよう、さらに貢献できる応援に挑戦してみてはどうだろうか。

アルゼンチン指導者協会名誉会長が校長を務める監督養成学校「Escuela Osvaldo Zubeldía」に在籍中の河内一馬さんと共に、こちらのイベントに登壇することになりました。ぜひお越しください。
お申込みはこちらより。
12/19(水) OPEN 18:30/START 19:30/END 21:30予定
高円寺・スポーツ居酒屋KITEN!

「ロストフの14秒」完全版は下記で放送されます。
12月30日(日)
午後9:00-午後9:50
BS1スペシャル「ロストフの14秒 完全版」(前編)
午後10:00-午後10:50
BS1スペシャル「ロストフの14秒 完全版」(後編)

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