五輪報道で焦る新聞各社 スポーツ報道が危ない!?
さまざまな準備と体制変更が進み、開催まで50日を切って、東京2020が大きく動き出しています。
・海外メディアについて、GPSを用いて行動を管理する方針。
・日本向けに選手団のほか、審判や通訳ら国内の大会関係者ら計約2万人分のワクチンを無償提供する方針。
・パブリックビューイングを中止。
これまで水面下で検討し、準備してきたととが、やっと決定。発表することができるようになったのでしょう。関係者の努力に頭が下がります。
日本人初のIOC 委員 嘉納治五郎銅像
1ヶ月前とは激変している世論
そのような動きと連動して世論は刻々と変わり、6月の世論調査では「開催賛成」が半数。「中止」の48%上回りました。
これまで、東京2020の中止を求める根拠として「国民の大多数が反対している」という世論調査の結果が挙げる人が多くいました。ところが、その根拠の期待に反して、おそらく、ワクチン接種が進み、感染の波もひと山越える方向で進むため、これから「開催賛成」がさらに増えると思われます。「国民の大多数が反対している」時期は終わったのかもしれません。
人気絵本「はらぺこあおむし」をモチーフにした毎日新聞の風刺画に驚き
そんな中で発生した、毎日新聞による稚拙な風刺画に、私は危機感を覚えています。人気絵本「はらぺこあおむし」をモチーフにした毎日新聞の風刺画に対し、出版元である偕成社が「猛省を求めたい」とする社長名義の文書をサイト上に掲載したのです。
読んでみると、人気絵本「はらぺこあおむし」のストーリーとは乖離した「はらぺこ」だけしか繋がりのない残念な風刺画でした。多くの新聞社は「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020)のオフィシャルパートナー」として活動しており、直接的に東京2020批判の記事を書きにくい環境にありました。それゆえ、私たちは「海外メディアがこう報じた」を記事にするような回りくどい「東京2020反対報道」を多く目にすることになりました。
ところが、新聞社の中には東京2020を中止すべきだと主張する人たちが多数います。もしかすると大多数なのかもしれません。そう感じるくらい、最近の新聞報道は反対に力を込めています。一方で、世論調査は賛成多数に傾いている。新聞報道への支持が広がらない。その焦りから、強引な風刺画を開発した記事を掲載したのではないかと感じます。自信があれば、もっと自然で正々堂々とした記事を掲載すれば良いのです。しかし、それでは新聞社の意図が読者に伝わっていないのでしょう。そんな焦りから、今後、今回の風刺画のような攻撃的な論調の新聞記事が増えるのではないいかと懸念しています。
オリンピックの開催目的な何でしょうか?
オリンピック憲章の中から抜粋してみました。
オリンピック・ムーブメントの目的は、いかなる差別をも伴うことなく、友情、連帯、フェアプレーの精神をもって相互に理解しあうオリンピック精神に基づいて行なわれるスポーツを通して青少年を教育することにより、平和でよりよい世界をつくることに貢献することにある。
ところが「苦しんでいる人がいるときに、なぜイベントを?」「COVIDー19(新型コロナウイルス感染症)が大変なのに、なぜお祭りを?」という声が挙がっています。オリンピック・ムーブメントの目的とはかけ離れた論調です。さらに「復興五輪」「コロナに打ち勝った証し」というオマケもついてきました。この2つは、本来はオリンピック・ムーブメントの目的に加えるオマケにしか過ぎないのですが、なぜか、これがオリ・パラの開催目的だと勘違いをされている人もいます。
本来であれば、オリンピック・ムーブメントの目的を実現するために、開催国が背負うリスクは大きいのかどうか?開催都市の国際的な役割や信用とは?を議論すべきです。しかし、そうはなりません。
ホンネは政治問題であることが垣間見える朝日新聞の社説
例えば、話題となった朝日新聞の社説では結論の直前に、このように書かれています。
それどころか誘致時に唱えた復興五輪・コンパクト五輪のめっきがはがれ、「コロナに打ち勝った証し」も消えた今、五輪は政権を維持し、選挙に臨むための道具になりつつある。国民の声がどうあろうが、首相は開催する意向だと伝えられる。
主催がIOCでホストが東京都であるスポーツ大会・東京2020に対して、この書き方です。むしろ逆に、朝日新聞こそが、政権批判をするためにスポーツを悪用してはいませんか?国民の声と乖離した意見を表明していませんか?なぜ、平和でよりよい世界をつくることに貢献するスポーツ大会に関する社説に、新聞社が自ら政権批判を持ち込む必要があるのでしょうか?(しかも主催がIOCでホストが東京都です)
池江璃花子選手に対する酷い仕打ち
池江璃花子選手にSNSを通じて東京202辞退や反対の表明を求めるコメントを寄せた人の多くは、スポーツを通じで政権に一泡吹かせようと考えた人々でした。こうした行動に対して、一定の理解を表明するメディア側の人たちがいることに驚かされます。
スポーツの政治利用はスポーツの未来に影を落とす
私は、政権や政治家が自らの利益のためにスポーツを利用することは許されないと考えます。スポーツは政治から独立しているからこそ最強のエンターテイメントであり平和でよりよい世界をつくることに貢献することができるからです。どのような政治思想の人でも参加でき、いつでもを競えるのがスポーツの良いところです。しかし、その逆も同様であると、みなさんに考えてほしいです。市民やメディアが自らの政治的利益のためにスポーツを利用すると、将来、スポーツを破滅に追い込むことになります。私たちが、自らスポーツを手放すことになりかねません。