障老介護する人たち、自閉症の息子さん
私の家は老障介護ですが、世の中には障害のある人が高齢者を介護している家がたくさんあります。
私もたくさんの障老介護の家庭を見てきました。
周りの人達が、心配したり、手伝おうとしても、なかなか、うまくいかない場合がたくさんあります。
ある自閉症の息子さんとお母さんの二人暮らしの方のお話です。
アパートの2階に、住んでいました。
息子さんは言葉が話せない自閉症で、知的障害もあり重度でした。
特別支援学校卒業後は、生活介護の事業所に通っていました。
まじめな性格で、休むことなく通って、日中は福祉サービスを受けることができていました。
ところが、母親が病気で寝たきり状態になりました。
母親は、歩くことができなくなり、アパートの2階から、外へ出ることができなくなってしまいました。
母親にケアマネージャーが付き、介護保険を利用することができるようになりましたが、母親が希望したのは「訪問入浴」だけでした。
ヘルパーの利用は嫌だ。
デイケアに通うのは嫌だ。
福祉用具は使わない。
かなり、自分の意見をはっきり言う母親で、他人を家に入れるのは最小限にしたいとのことでした。
母親は、自閉症の息子さんに生活介護に通うのを辞めさせ、自分の家に置くことにしたのです。
息子さんは、一日中、母親の寝る布団の横に坐り、自分の世界に入っていました。そして母親が
「トイレ。」というと、
布団に寝ている母親を抱え起こし、お姫様抱っこして、ドドドドっとトイレに走って連れていくのです。
便座に母親を座らせたら、終わるのを待ち、また、お姫様抱っこして布団へ連れていき、ドスンと寝かせます。
このときの足音が、ものすごくて、下の階の住人から苦情が出ました。
ご飯はというと、母親が息子さんにお金を持たせて、コンビニにお弁当を買いに行かせていました。
しかし、話すことができず、お金の計算ができず、コミュニケーションが苦手なものですから、お店や近隣とのトラブルが絶えませんでした。
生活介護の事業所の職員さんは、息子さんが日中の福祉サービスを受けることができるよう、通所を再開できるよう努力していましたが、母親の反対が強く叶いませんでした。
これは、息子さんに対する福祉の機会を奪う虐待ではないかと周りの人は心配していましたが、なかなか、うまく解決に至りませんでした。
母親の病気がもっと重くなり入院するという状況になれば、息子さんがまた福祉サービスをうけることができるようになるかもしれません。
あるいは、息子さんがもう耐えられなくなって、パニックを起こして保護されたりしたら、息子さんは福祉サービスが受けられるようになるかもしれません。
親と子の福祉は、親は介護保険。子は障害者福祉。
と縦割りです。
法律も担当者も別なのです。
今後は両方の福祉を考えることができる人が増えていってほしいです。
見ないで済めば、普通の町に見えますが、気が付いてしまうと心が痛むことがあります。