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はなはなみんみのドームに籠る


はなはなみんみ物語、3
わたりむつこ作

私は引きこもりなのです。
「動く引きこもり」と言うのだそうです。
そう言ったのは、臨床心理大学院時代の教育セラピーのセラピストさんです。
彼は東京の西のはずれのアパートの一室で開業していました。
大学院の学生たちは仙人と呼んでいました。
当時から、体と心について研究しており、今や、ポリヴェーガル理論の日本での第一人者となり、ものすごーい翻訳本を出版し、日本各地で講演して回っています。

私は出かけるのが苦手です。
命がけで、えいやっと気合を入れて玄関を出ます。
外で食事することは、つらいです。。
音楽は好きですが、LIVEは頭が痛くなるので行けません。
人が大勢いるところへは行けません。
雑談はできません。
連れ立って歩く友達はいません。
カフェなどは落ち着かないので行きません。
大きな音が怖いです。
電飾はまぶしくて目が痛いです。
みんなで何かを一緒にすることは苦手です。

最近は、会合や、宴会や、集会が少なくなってきたのでとても楽になりました。
映画も配信が増えたので、映画館へ行く回数が減り助かっています。
インターネットを利用することで、図書館の本はリクエストできるし、ネットスーパーで買い物もできます。

しかし、仕方なく出かなければならないことも、たくさんあります。
出かけた時は、一目散に家に帰って、自分の世界に籠ります。
そして自分を取り戻さないと、呼吸ができなくなるのです。

私は、自分のためのドームを持っています。
誰にも見えない霧のドームです。
いのちの幕に守られた私のドーム。
そこで、私はやっと生きています。

私のドームは、はなはなみんみ物語の3巻の、緑の石の力を利用した霧状のドームのようなものです。
はなはなみんみ物語は、戦争でこびとたちが大勢死んでしまった後、生き延びたはなはなとみんみが、ほかに生きているこびとたちを探しに行くという壮大な物語です。
そして、いのちの幕に守られた都市を発見します。
いのちの幕のドームの中では、こびとたちが生き延びていました。
けれども、そのドームの中にずっといると、生命が退化していってしまうのです。
そこで、「投げる」という技をつかって、幕を割るのです。

しかし、私のドームの幕はまだ割る時期には来ていないようです。
私には、まだまだ、ドームが必要です。
外の世界から私を守るドームがあるから生きていられる。
そこでは、酸素の補給や、心の栄養摂取や、体の休養ができるのです。
だから私は、こう呼んでいます。
はなはなみんみドーム御殿。

居心地いいです。
出たくありません。
でも、長女を生活介護に送り出さないとね。

はなはなみんみ物語1

私のドームを開けてくれるのは、長女の存在です。


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