タブレット純さん:ロマン歌謡の歌声
昭和のころ、ムード歌謡というジャンルのグループが流行した。
私はなぜか、ロマン歌謡というのだと思っていた。
なんとなくだけど、ロマン歌謡。
歌の内容は、赤坂だとか、六本木や伊勢佐木町などの地名が出てきたり、「君は心の妻だから」とか、「誰よりも君を愛す」とか、今では考えられないようなものだった。
ジャズとブルースとハワイアンのメロディーと楽器を、演歌でシェイクしたような、明るくはない日陰が似合う歌だった。
楽器担当とメインボーカル、それからバックコーラスの人が何人か。
横並びのバックコーラスは、「デュワッ、デュワ。」というぐらいで、メインボーカルが、なんとも、ムードたっぷりに艶っぽい独特の声で歌うのだった。
その中のひとつに、「和田弘とマヒナスターズ」があった。
和田弘の奏でるハワイアンぽいスチールギターが特徴のグループ。
その「マヒナ」の最後のボーカルが、タブレット純さんである。
最近は「阿佐ヶ谷パラダイス」の番組進行でおなじみである。
タブレット純さんは、歌うときは、ムード歌謡のあの独特の艶っぽくて力強い声なのに、話すときは、小さくささやくような声になり、その格差があまりにもすごいので、えええっとびっくりする。
話の内容もなぜか、なんでそんなこと気にするんだろうというような、情けないっぽい話が多い。
それを、はかなげな表情で話す。
着ている服は、古着やさんで買ったような昭和テイストのオレンジ色のカットソーの上に赤い半そでセーター組ませていたりする。
阿佐ヶ谷あたりの西友ストアで、長ネギをエコバッグからはみ出して買い物しているところに出会いそうなイメージである。
「阿佐ヶ谷アパートメント」の番組内で、タブレット純さんが、「ほめて教える教習所」で、車の運転をおさらいするというのがあった。
タブレット純さんは、高速は速すぎるから運転しない、一般道も年に数回しか走らない。なぜなら、運転を習ったときの教官が怖すぎて、トラウマになっているらしい。(昔の教習所あるある)
そこで、ほめて教えるという、先生が登場。
タブレット純さんが、車に乗り込む。
先生が「40キロ出してください。」と言っても、
タブレット純さんは、20キロしか出さない。
ああ、これがタブレット純さんなのだ。
40キロ出していいところでも、20キロで走る。
あの声の力の抜き方は、自分の持っている力の半分を出しているからなのか。
車のスピードだけでなく、話すときも、着る服を選ぶときも、半分の力で生きているのかも。
素晴らしい、タブレット純さん。
でも歌う時はしっかりムード歌謡なのがすごい。
全力で生きるのは、少年にまかせよう。
力尽きないよう、ゆるゆる生きていこう。
「頑張らなくていいですよ」というメッセージをくれるのが
タブレット純さん。
ほめて教える先生の教習を受けた後、タブレット純さんは、はなうたを歌いながら運転をしていたのでした。
よろしければ、サポートお願いします。老障介護の活動費、障害学の研究費に使わせていただきます。