🔥炎熱地獄！特養真夏の入浴介助🔥

２０年ほど前のお話です。
今はどうなっているのでしょうか。
私は2000年４月、介護保険がスタートした時から６年間特養で働きました。
ヘルパー２級の資格を取って、訪問か施設かどちらで働こうかと考えたとき、自分が真夏の炎天下を移動するのは無理だなあと思い、できたばかりの特養に非常勤で働くことにしました。
特養なら、冷房もあるだろうなと思ったのです。

ところが、この施設は親切な施設ではありませんでした。
職員のほとんどは、特養と同じ法人が経営する専門学校の卒業生。
当時は、国家試験を受けなくても、専門学校を卒業すれば、介護福祉士の資格がもらえる時代でした。
だから、福祉のふの字もわからないような２０代の若い人ばかり。
私はおばさんと呼ばれ馬鹿にされ。
課長は利用者さんの目の前で、職員を怒鳴るし。
その後、理事長がわいせつ罪で逮捕されるし。
施設の質が良くなかったのですね。

そして、仕事のやり方を、なあんにも教えてくれないのです。
ほったらかしです。
非常勤には、パソコンも触らせてくれません。
おばさんはパソコンなんてわからないだろうと言われるし。

非常勤の仕事は早番と遅番のどちらか。
そしてどちらも入浴介助でした。
入浴介助は地獄でした。
冬でも、浴室は暑いし、入浴する人は多い。
特養だから重度の人が多くて、歩いて一般浴に入れる人はごくわずか。
ほとんどの人が、チェア浴か、機械浴でした。

浴室は、右側が機械浴室、左側が一般浴室（大浴場）となっていました。
特養の入居者とショートステイの人合わせて１００人の人が、週二回入浴します。
計算すると一日に３0人以上入浴することになります。（日曜は入浴休み）
午前２時間、午後２時間。
早番の日は午前中に入浴介助。
遅番の日は午後入浴介助。
来る日も来る日も、非常勤は入浴介助。
２時間で１5人以上入浴します。　

入浴介助の前後には、食事介助、排泄介助、一時間の昼休み以外は、ひたすら介助、介助。
ただし、たばこを吸う人だけは、堂々とたばこ休憩に行ってました。
介護士、看護師、喫煙者多い。
一日に何回もね。

タバコを吸わない私はひたすら介助。介助。

さて、入浴介助ですが、二人くらいが中介助で、ひたすら、利用者さんの体を洗い。
もう二人くらいが、外介助で、利用者さんの服を脱がせ、お風呂から上がった利用者さんに服を着せ、車いすに戻し、誘導係が４、５人まとめて居室へ戻す。
そして、同時進行で、脱いだ服を大型洗濯機に入れてスイッチオン。
入浴介助中に具合が悪くなる人が続出。
人手があれば丁寧にできるけれども、人がいません。

徹底的に流れ作業でやってました。
でないと、仕事が終わりません。
利用者さんもごはんの時間までに、戻らないと食事ができません。

２時間以上も、もくもく湯気の立つ浴室で、入浴介助をしていると、
Ｔシャツはびしょぬれになり、頭に巻いたタオルはずぶぬれになり、片手で石鹸付けたスポンジ持って、片手で麦茶飲んで。

とにかく事故だけは起こさないように。
機械浴のストレッチャーから落っことさないように。
車イスへの移乗の時に、落っことさないように。
服を脱がすときに、表皮剥離させないように。
お風呂場で転倒させないように。
施設で一番大事なことは、事故を起こさないこととされてました。

石鹸が付いて、ぬるぬるの裸の体を支えるのは、無理を通り越しての大仕事。
衣服を着ている時には、摩擦があるから、立位をとれない人でも体を支えて、立ってもらうことができるのだけど。
寝たきりの人を、ストレッチャーへ移すときは二人がかりで、体抱えて、一、二、の三でタイミング合わせて移す。

時には、ショートステイで、半年お風呂に入っていなかったという、黒光りしたつわものがやってきて、垢を落として真っ黒い泡が流れ出すのを見たり。
もつれにもつれてこんがらかった髪の毛をほぐして洗ったり。
入浴中にも失禁をする人もいるから、黙ってシャワーで流したり。

これを真夏にやってみた日には、体中の水分が抜けてしまいます。
しかし、力仕事なので、筋肉が付き体重は減りません。

やがて、若い職員はつぎつぎ、やめていき、人手不足は加速し、働く人は非常勤のおばさんとおじさんばかりになりました。
３年目に介護福祉士の資格を取りましたが、待遇変わらず。
５年目で介護支援専門員の資格をとって、さっさと、この特養を離れました。

その後、他の資格を取るため、その特養に勤務証明書をもらいに行こうと電話して、名前を名乗った瞬間。
「社会人としてどうなの！急に電話してきて。常識あるの。」と課長に、電話口で怒鳴られました。
じゃあ、いきなり、押しかければよかったんでしょうか。
証明書書いてもらいたいので、都合が聞きたかっただけなんですけど。
でも、職場が残っているだけでも運がいいらしいです。
証明書書いてもらいたくても、なくなってしまった事業所も多いのです。

何で怒鳴られるのかわからない。
福祉の現場で、怒鳴ることでコミュニケーションをとる人にたくさん出会いました。なんで？

しかし、私はどうして馬鹿にされやすく、怒鳴られやすいのでしょうか。

次の職場、有料老人ホームの正社員さんに言われました。
「やさしすぎるから。」だそうです。

それにしても、入浴介助は大変です。
私は、介助者の方には、決して無理をしないよう、２１世紀の、令和の介護をしていきましょうと勧めています。
福祉用具、介護技術を適切に使うことを勧めています。
（予算の問題で却下されることも多いですが）

平成なのに昭和の介護をしていたあの特養。
おばさんと馬鹿にされていた私は、介護の講師になりました。
臨床心理学の修士にもなりました。
あんな苦労をこれからの人にしてもらいたくないのです。

介助者が幸せでなくて、どうして利用者が幸せになれるでしょうか。
高齢になっても、病気になっても、障害者であっても、介護する人が幸せでなければ、幸せな未来はありません。