CSIですか?いえ、CIAです。
私は介護認定調査員として、65歳以上の高齢者、また40歳以上の特定疾病の方のもとに足を運ぶ仕事を長年してきました。
訪問すると、その方のことがよくわかるのです。
家のたたずまい。
玄関前の様子。
ドアを開けたときの匂い。
部屋の様子。
などで、その方の生活がよく見えてきます。
たぶん、おうち以外で面接するよりも、何十倍もの情報が得られるのです。
これは、精神科医のサットマリも、「虹の架け橋」という本で書いています。
ある方はご近所からの被害に心を砕きすぎて、疲れ果てていました。
その方は、ご近所の人が自分に嫌がらせをしてくるといって、家の前に沢山の監視カメラをつけていました。
そして、そのモニターを一日中監視しているのです。
そのモニターはカメラの数だけあるので、壁一面がモニターに埋まっています。
いやいや、巨大ホテルとかじゃないんだから。
そんなに必要ないでしょうと、私は思うのですが、その方が言うには、「東西南北どこからご近所さんがやって来るかわからないから」だそうです。
しかし、閑静な住宅街、モニターに映し出されるものは、宅配便の車、郵便屋さんのバイク、犬の散歩のおばさんくらいのものです。
同じ画面を見るのだったら、面白いミステリでも見たらいいのにと思うけど、その方にはそんな暇ないそうです。
出かける暇もありません。
いつやって来るかわからないご近所からの嫌がらせに備える。
それが彼の生きがい、日課なのでしょう。
ある女性はカラスから攻撃を受けていました。玄関を出るたびに烏が攻撃してくるのだそうです。
それで、外へ出られなくなっていました。
高齢の方が外へ出られなくなっている原因はいろいろなんですね。
それである日、外へ出ようとしたら、足が上がらなくて、玄関の段差を超えられなくなっていたとSOSを出した方もいます。
また、「自分は狙われている。」と訴える方がかなりの数いました。
ある方のおうちに行ったら、壁一面アルミシートが貼られて、ギンギンギラギラでした。
どうしたのですかと聞いたら。
「シーアーアーが狙ってきている、追われている。」とモゴモゴ言うので、
私の大好きなドラマ、CSI科学捜査班のことかと思って、
「CSIですか?」と聞いたら
「いえ、CIAです。私はCIAに追われているのです」と真剣に訴えられました。
いやあ、CIAに追われるのは相当大物ではないと、なんて心の中で思っていたら、
「ほら、向いのあの店の看板の裏から見ているでしょう。こちらの電波が届かないように、アルミ貼っているんですよ。」って言うのです。
最初はびっくりしましたが、CIAに追われている方は何人かいることが経験上分かりました。
そして、医療につないでいくことが必要だということもわかってきました。
ご本人たちは、本当に緊張して毎日過ごされているのでしょう。
家の中にいて、ゆっくりできない暮らしをしている苦しみ。
苦しみは人それぞれなのですね。