aspieの発見基準 アスペルガーの強みと魅力
精神科治療学 25-12 2010年
自閉症スペクトラムにみられる「視覚優位」門眞一郎より
私は臨床心理大学院で、自閉症スペクトラムをテーマにした修士論文に取り組んでいた。
もう10年以上も前のことだ。
その頃、「発達障害」という概念が出始め、アスペルガー症候群が世間の注目を浴びていた。
そして様々な憶測が飛び交った。
自分はアスペルガーなのではないだろうか。
あの人はアスペなんじゃないだろうか。
アスペは犯罪と結びつくのではないだろうか。
などの憶測が街のあちこちで広がり、発達障害の専門病院の予約は半年待ちとかで、大混雑した。
アスペという言葉は、蔑称なのではないかと思うが、aspie(アスピー)は愛情込めてアスペルガーの人を指す言葉だ。
その頃、私は自閉症スペクトラムに関する国内外の文献を、片っ端から読んでいた。
そして出会った論文の一つがこれだ。
この論文の中に挿入されていた
「AttwoodとGrayによるaspiの発見基準」に魅せられてしまった。
以来、私はaspieという言葉を使うようになった。
少し長いが引用する。
aspieの発見基準
A.ほぼ以下の形をとる対人的な交流における質的な強み:
1.絶対の忠実性と完璧な信頼性を特徴とする友人関係
2.性差別、年齢差別、文化的な偏見がない:「額面価格」で他者を評価
できる
3.人間関係に左右されず、あるいは個人的な信条に忠実に自分の考えを
述べる
4.相矛盾するエビデンスがあっても自説を追求することができる
5.次のような聞き手や友人を探し求める。ユニークな興味関心事や話題
に熱中できる人:微に入り細を穿った考察ができる人:大した利益は
もたらさないかもしれないような話題を話しあうことに時間を費やす
ことができる人
6.常に意見や思い込みを挟むことなく話が聞ける
7. 主要な関心は、会話に意味ある貢献をすることにある:社交儀礼的な
雑談や瑣末な世間話や中身のない浅薄な会話は避けたがる
8.控えめなユーモアのセンスがあり、誠実で、ポジティブな、真の友人
を求める
B.以下のうち少なくとも3つによって特徴付けられる社交言語である《アスペルガー言葉Aspergeres》を流ちょうに話す:
1.真理を探究しようとする決意
2.暗黙の了解事項のない会話
3.ハイレベルの語彙と言葉への興味
4.駄洒落のような、語に基づくユーモアを愛好
5.たとえの絵による表現が高度
C.以下の少なくとも4つによって特徴付けられる認知スキル:
1.全体よりも細部をとても好む
2. 問題解決の際に独創的で、しばしばユニークな考え方をする
3.並外れて優れた記憶力や。しばしば他者は忘れたり無視したりするこ
とを詳細に想起する力。例えば、名前、日付、予定、ルーティンなど
4. 興味のテーマに関する情報を集めたりカタログ化することに熱中する
5.粘り強く考える
6.1つあるいはいくつかのテーマに関して、百科事典あるいは”CDROM”
的に博識である
7.ルーティンを理解し、秩序と正確さの維持を重点的に望む
8.価値判断、意思決定が明晰で、政治的な、または金銭的な条件ではゆ
るがない
D.付加的特徴としてあり得るもの:
1.特定の感覚経験や感覚刺激に対する強い感受性:例えば、聴覚や触
覚、視覚、嗅覚に関して
2.一人でするスポーツやゲームが得意。特に次の項目に関係するもの
3.持久力や視覚的正確さ。例えば、ボート漕ぎ、水泳、ボウリング、チ
ェスなど
4.人を疑わない楽天主義者で、「集団の中では縁の下の力持ち」だが、
対人関係が下手なためによく被害者になる
5.一方では、真の友情の可能性を固く信じている
6.高校卒業後、大学に進学する可能性が一般人口のそれよりも高い
7.障害が明瞭な人に対してはとても良く世話をすることがある
以上
トニー・アトウッドは、「ガイドブック アスペルガー症候群ー親と専門家のために」などの多数の著書がある心理学者。
キャロル・グレイは、自閉症のコミュニケーションに関する、「コミック会話」「ソーシャルストーリー」などの多数の著書のある心理学者
何と言っても、魅力的なのは、Aの2である。
「性差別的、年齢差別的、文化的な偏見がない」
そして、Bの2
「暗黙の了解事項のない会話」
そう、aspieは、偏見がなく、忖度をしない。
だから、本当のことを言って、周囲から浮いてしまう。
でもとても大事なことだ。
aspieは、なぜ人々が差別したりするのかよくわからない。だって、自分の中に差別するという感覚がないのだから。
そして、障害のある人のことを良く世話をする。子どものころからごく自然に。
今の時代に、いてほしい。aspie.
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