おかあさんといっしょ
夏休みの今頃になると、Eテレの6時台は、高校野球の中継になる。
そして、6時台の子ども向け番組がなくなってしまう。
となると、長女の大好きな「おかあさんといっしょ」の放送がないということになる。
毎朝、バスを待っている間に、
「きょうも、おかあさんといっしょみられるかなあ。」と放送を楽しみにしている、永遠の幼児番組ファンの長女に、
「高校野球の中継だから、おかあさんといっしょはないよ。」なんて、口が裂けても言えない。
だから、朝早くの「おかあさんといっしょ」を録画して、夕方帰ってきてから見られるようにしている。
Eテレの幼児番組の内容は、長女の理解力にマッチしているのだと思う。
すごく楽しそうに見ている。歌っている。踊っている。
だから、野球中継になってしまうと、とっても困る。
楽しみを奪わないで。
私が小学生のころ、「スーパーマン」という30分のアメリカドラマがあった。新聞記者のクラーク・ケントが「公衆電話ボックス」で、スーパーマンに変身して、悪者を退治するというドラマ。
毎週木曜日の放送が楽しみで、楽しみで、見られなくなった日はそれはもう悲しくて悲しくて。
ああ、長女もそんな気持ちなのかな。
でも、なんで、タイトルが「おかあさんといっしょ」なんだろう。
「お母さんと一緒に見ましょうね」という意味なのだろうか。
番組ができた当初は、お母さんと一緒に見ることが自然な時代背景だったのかもしれない。
でも今は?
働くお母さんも多いだろうし、お父さんだけの家庭もある。
おじいさん、おばあさんと暮らしている子もいる。
おとうさんが二人の家庭もある。
養護施設で生活している子もいる。
「おとうさんといっしょ」という番組もあるが、毎日放送されているわけではない。
こんなことを考えたのには理由がある。
昨日、長女が、何気なくつぶやいた。
「おとうさんにあいたいな。」
我が家は離婚家庭である。様々な理由によって、子供たちの父親とは、交流がない。
穏やかな生活を送れるよう、家庭の平和を保つためである。
でも、長女がポツンともらした言葉に、少し悲しくなった。
離婚したてのころ、長女が寝る前に言った言葉がある。
「あたまでかんがえたんだけど、なかなおりできませんか。」
と長女は、自分の頭を指でさして、ゆっくり話した。
知的障害の長女が、必死で考えたのだ。
その時は、もう何と答えていいかわからず、心の中で、
「本当にごめんね。」と繰り返すばかりだった。
もしも、毎日放送されている、お気に入りの番組の名前が
「おとうさんといっしょ」だったら、どうだろう。
お父さんのいない長女は、どう思うだろうか。
今現在、お母さんのいない子どもは、どう思っているのだろう。
「おかあさんといっしょ」という番組名につらい思いをしてはいないだろうか。
番組の内容は、おにいさん、おねえさんと一緒に歌ったり、体操したりするものだから、「おにいさん、おねえさんといっしょ」でもいいのじゃないだろうか。
なんてことをかんがえながら、「チョコレートドーナツ」の映画、もう一度みたいなと思った。
よろしければ、サポートお願いします。老障介護の活動費、障害学の研究費に使わせていただきます。